ゼニス/デファイ コレクション 技術だけではない新生ゼニスのフラッグシップ

2018.10.03

(左)ローター側に配された高速振動専用のテンワ。ハック機構を応用したストップメカニズムだけで制御される。
(右)ダイアル側から見たCal.9004。既存のエル・プリメロをベースとしながらも、通常輪列の一部がこちらに移されている。


デファイ コレクション最多のラインナップを誇る “1/100秒計測エル・プリメロ”

 2017年に登場した“エル・プリメロ21”、すなわち「Cal.エル・プリメロ 9004」は、新生ゼニスの画期となったムーブメントである。かつてタグ・ホイヤーで複雑機構開発の陣頭に立ったギィ・セモンのゼニス参加と同時に開発が進められ、初めてエル・プリメロの名を冠するムーブメントが、1/100秒計測の快挙を成し遂げることになった。1969年に発表されて、世界初を競い合った自動巻きクロノグラフの一翼を担ったエル・プリメロは、同時に1/10秒計測を可能とした超ハイビートクロノグラフとしても勇名を馳せた。新時代を担う“エル・プリメロ21”は、ベースとなる基礎輪列を10振動/秒のエル・プリメロと共有しながら、100振動/秒の高速振動専用輪列を独立配置している。基本構成は、ギィ・セモンがタグ・ホイヤー時代に基礎開発を進めてきたプランを革新させ、エル・プリメロ21では高速振動側のパワーリザーブが約50分にまで延長され、十分な実用性も確保している。実際の製品化に際しては、一部のマテリアルが見直された程度で、ほぼプロトタイプそのままの設計で市場投入されている。日本市場には、昨年10月からデリバリーが開始されており、現在ではほぼ安定供給と言える状況にまで、熟成改良が進んでいるようだ。

 Cal.9004を初搭載した「デファイ エル・プリメロ21」は、ケースデザインにおいても新生ゼニスに転換点をもたらした。従来のフラッグシップである「クロノマスター コレクション」が、クラシカルな趣きに重きを置いていたとすれば、デファイの造形センスは群を抜いている。幅広のフラットプッシャーを備えるケースの造作は、力強さの中に、ほんの少しだけクラシカルな繊細さを残しており、その絶妙な案配が素晴らしいのだ。ダイアル上の表示を整理しておくと、センターが1/100秒積算計、6時位置が通常の秒積算計、3時位置が30分積算計となり、9時位置は永久秒針となる。ダイアル側から見た場合、7〜8時位置に通常のテンプ(10振動/秒)が確認できるため、輪列設計を既存モデルから転用しつつも、その配置が全く異なっていることが見て取れる。

 一方、ローター側から覗く小さなテンプが、高速運針用の専用輪列である。通常輪列側とは異なり、この輪列はセンター針の駆動のみに用いられるため、クラッチ機構を持たず、ストップ/リセットの機能だけが与えられている。通常輪列側の積算機構をスタートさせると同時に、テンワの動きを規制していたハックレバーが外れ、超高速積算がスタート。ストップ時は再びテンワをハックするのみだ。もっとも、センターの超高速積算針と、1秒以上の計測を担う通常の積算輪列とは連動していないため、スタート/ストップの動作をいかに同調させるかが、計測精度を決めるカギとなる。プロトタイプ発表からデリバリー開始までに行われた熟成改良の成果は、この連動に現れているようだ。