片方向巻き上げと両方向巻き上げ、メリット・デメリットを比較/ ぜんまい知恵袋〜時計の疑問に答えます〜

FEATUREぜんまい知恵袋
2019.10.13

Q:片方向巻き上げと両方向巻き上げどちらが効率いいの?

A :自動巻き時計には必ず付いているローター。この部品が左右に回転することで、ムーブメントに収まった主ゼンマイを巻き上げます。現在、自動巻きには大きくふたつの種類があります。ローターの一方向の回転だけでゼンマイを巻き上げる片方向巻き上げと、両方向の巻き上げでゼンマイを巻き上げる両方向巻き上げの2種類です。

片方向巻き上げのメリット

1.自動巻き機構をシンプルにできるため、故障が起きにくい
2.ローターの空転による反動を使ってゼンマイを巻き上げるため、デスクワークのように腕を動かさない場合の巻き上げ効率が高い

片方向巻き上げのデメリット

ローターが空回りする際のショックが大きいこと


両方向巻き上げのメリット

1.ローターが空回りしないため腕に伝わるショックが小さい
2.腕を大きく振った際に主ゼンマイがよく巻き上がる

両方向巻き上げのデメリット

1.自動巻き機構が摩耗しやすい
2.上手く設計しないと主ゼンマイが巻き上がりにくい

現在、ほとんどの自動巻きは両方向巻き上げですが、腕の動きが小さくても巻き上がりやすいので、デスクワークを意識した自動巻きや、男性と比べて運動量が少ないとされる女性に向けた機械式時計には片方向巻き上げの採用例が増えています。

ノーチラス Ref.5712/1A

パテック フィリップの240系はセンターローターと比べ巻き上げ効率の劣るマイクロローターを採用するが、巻き上げ効率のいい片巻き上げ式とすることでそのウィークポイントを補っている。また、マイクロローターはフルローターほど慣性がかからないため、片巻き上げ式にしても空回り時のショックが小さい点も見逃せない。写真ノーチラス Ref.5712/1Aが搭載するCal.240 PS IRM C LU。Photograh by Masanori Yoshie