自動巻きは片方向巻き上げ・両方向巻き上げどっちがいいの? メリット・デメリットを含めて解説

2023.04.14

電池を使わず、ゼンマイが持つ力を利用して動く機械式時計。そのほとんどは自動巻きだ。半円状のローターが振られることで主ゼンマイを巻き上げてくれる便利な機能だが、巻き上げ方式に違いがある。今回はその種類とそれぞれのメリット・デメリットを紹介しよう。

広田雅将

2019年10月13日公開記事
2023年4月14日更新


機械式時計の基本 手巻きと自動巻き

 ゼンマイで動く機械式時計には、大きく分けてふたつの種類が挙げられる。主ゼンマイを手で巻き上げる「手巻き」と、半円状のローター(回転垂)が振られることでゼンマイを巻き上げる「自動巻き」である。

 現在販売されている機械式時計のほとんどのモデルは自動巻きであり、手巻きは必ずリュウズを巻く必要性もあり趣味製の高いものとなっている。まず、自動巻き、手巻きのメリットとデメリットは次の通りだ。

ETA2824

多くのムーブメントの場合、手巻きムーブメントの上に自動巻き機構(ユニット)が重なるため、必然的に厚みが出てしまう。写真は汎用機のETA2824。自動巻き機構を入れる空間を設けることで薄く設計されている。

手巻きのメリット・ デメリット

○ ムーブメントを薄くすることが可能。趣味性が高く、巻き心地を味わえたり、美しい仕上げを鑑賞できる。
× 自分でゼンマイを巻かないと止まる。理論上、自動巻きに比べて正確に動作しにくい。

 時計愛好家やコレクターが好む傾向にある手巻きムーブメントは、自動巻き機構を載せなくてよいため、ムーブメント自体が薄いという特徴がある。ムーブメントを覆うローターがないため、機械が見えやすい。また重いローターがないため、ショックに強いというメリットもある。

eta6497

 その反面、ローターを持たないためリュウズを巻かないと時計が止まってしまう。またゼンマイがほどけるにつれて精度が狂いやすくなるため、理論上精度は自動巻きに劣る。

自動巻きのメリット・デメリット

○ 腕に着けている間はゼンマイが巻き上がる。手巻きに比べて精度が良い。
× 自動巻き機構が載るためムーブメントが厚くなる。ものによるが、設計の悪い自動巻きはショックに弱い。

 腕に着けている間はゼンマイが巻き上がるため、毎日着用していれば時計が止まってしまうことも少ない。またゼンマイが常に巻き上がった状態にあるため、理論上精度も高くなる。

longines

 反対に、自動巻き機構が載せられるため、時計のケースが厚くなるほか、必然的に重くなってしまう。また自動巻き機構が摩耗しやすい上、部品点数が多いため、修理代が高く付くこともある。