カルティエ「タンク」コレクションの尽きぬ魅力。主要モデルや特徴を紹介

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2021.05.25

カルティエを代表する時計である「タンク」は、1919年の発売から100年に及ぶ歴史を持つ。普遍的なデザインでありながら今なお進化を続け、男女を問わず人気が高い。「タンク」とはどのような時計であるのか、主要コレクションや特徴を探っていこう。

カルティエ タンク

Laziz Hamani © Cartier


カルティエとは

現代的な腕時計の祖ともいわれる「タンク」は、宝飾メゾンのカルティエが生み出した。

カルティエは「王の宝石商、宝石商の王」ともいわれ、唯一無二の宝飾品を創出してきた一方で、腕時計においても大いなる軌跡を残してきた。「タンク」の魅力を知るために、まずはカルティエの歴史を見ていこう。

カルティエの歴史

アルフレッド・カルティエと息子たち

Cartier Archives, Paris © Cartier
ルイ=フランソワ・カルティエの息子アルフレッド(右から2人目)、そしてアルフレッドの3人の息子、ルイ(左から2人目)、ピエール(左端)、そしてジャック(右端)は、いまなお続くカルティエの歴史の基礎を築いた。

1847年に創業したカルティエは、170年以上もの歴史を有する老舗メゾンである。創業者のルイ=フランソワ・カルティエは、王侯貴族を主な顧客として宝石商を商い、カルティエはパリを代表するメゾンへと成長していく。

ハイジュエリーと並行して時計部門を設け、時計の製作販売も手掛けていた3代目のルイ・カルティエは、1904年、友人の飛行家アルベルト・サントス=デュモンのために、レザーストラップを取り付けた時計「サントス」をデザインする。

その後も時計製造を続けたカルティエは、06年に樽型ケースの「トノー」、19年に長方形ケースの「タンク」をリリースした。

1900年代初頭に世界で初めてプラチナを採用。またダイヤモンド、プラチナを使用した4爪セッティングのリングなど、ジュエリーにおいても新しい扉を開いている。


カルティエの主なコレクション

カルティエの時計ラインは、20世紀初頭から絶えることなく続く複数のコレクションで構成されている。これらのうち、「タンク」「パシャ」「サントス」、そして21世紀に生まれた「バロン ブルー」について見ていこう。

タンク

タンク

Vincent Wulveryck, Collection Cartier © Cartier
1920年の「タンク」。ケースにはポリッシュ仕上げとサテン仕上げが施されている。

1917年にデザインが生まれ、19年に一般販売された「タンク」は、長方形(レクタンギュラー)のケースで、ベゼルを持たない時計である。

ケースサイドとラグが一体化しており、風防とストラップの幅がほとんど同じになるように調整された。

このネーミングと様式は、第一次世界大戦を終戦に導いた「平和の象徴」であるルノーFT-17軽戦車がモチーフだ。

車体がダイアル、キャタピラがケースサイドにあたり、「轍」(わだち)を表現するためにストラップは幅広である必要があった。

当時は、市販や軍用の腕時計はストラップが細く、真に実用的な時計が求められていた時代である。タンクはこの問題を解決させ、大衆の間に腕時計が普及するきっかけをつくった。

パシャ ドゥ カルティエ

パシャ ドゥ カルティエ

© Cartier
サークルの中にスクエアを描き、大きな4つのアラビア数字をインデックスに配するという、大胆でグラフィカルなシグネチャーを取り入れた「パシャ ドゥ カルティエ」。2020年にモデルチェンジを果たし、よりデザイン性を高め、人間工学を駆使した快適さを実現している。自動巻き(Cal.1847 MC)。SS(直径41mm、厚さ9.55mm)。100m防水。78万1000円(税込み)。

「パシャ ドゥ カルティエ」の原型となったのは、1940年代にマラケシュ(モロッコ)の太守(パシャ)であったエル・ジャヴィ公から防水性能が高い時計のオーダーを受けて製作された時計である。このモデルが現在の「パシャ」の名前の由来となった。

「パシャ」の原型となるラウンドケースの防水ウォッチが登場したのは1943年。そして現代的なアレンジを加えて新しい「パシャ」が誕生したのが85年のことである。

特徴的なのがケースの6時と12時の中央にあるラグ。そのラグを挟むように装備されるビス、そしてリュウズカバーは「パシャ」の個性を構成する大きな要素だ。

またローマンインデックスがベースデザインのカルティエにあって、アラビア数字を用いている点も「パシャ」に独創性を加えている。

サントス ドゥ カルティエ

サントス

Nick Welsh, Cartier Collection © Cartier
1915年製造の「サントス」。1907年からカルティエはジャガーとコラボレーションを組み、優れた時計を数多くリリースしており、このモデルの製作も一時期カルティエに所属していたエドモンド・ジャガーが担った。手巻き。18KYG×PG(縦34.9×横24.7mm)。カルティエ パリ製。

1904年にプロトタイプが完成した「サントス」は、前述のとおり3代目当主ルイ・カルティエと交友のあったアルベルト・サントス=デュモンからのオーダーによる。

デュモンはブラジルでは発明王とも飛行機王とも呼ばれた人物だ。彼が飛行機を操縦中に時間を確認できる時計として「サントス」が考案された。

アルベルト・サントス=デュモン

Archives Cartier © Cartier
自製の15型飛行機飛行試験に臨むアルベルト・サントス=デュモン。撮影は1907年3月。手袋をはめているため見えないが、伝承に従うなら、彼はこの時も腕に「サントス」リストウォッチを巻いていたはずである。

スクエアケースで無駄がないデザインの「サントス」は、ドレスウォッチとしてもスポーツウォッチとしても使えるマルチパーパスウォッチの先駆的存在となった。一般販売が始まったのは1911年である。

なお文献によると、デュモンは生国ブラジルの内戦鎮圧に飛行機を使用しないよう、大統領に懇願していた。しかしこれは黙殺される。デュモンはこれに絶望し、1932年に自ら命を絶った。

その後、カルティエは第1次世界大戦の終結を祝うかのように「タンク」をデザインした。「サントス」から「タンク」が生まれたこととは無縁ではないだろう。

バロン ブルー ドゥ カルティエ

バロン ブルー ドゥ カルティエ

© Cartier
「バロン ブルー ドゥ カルティエ」。自動巻き。SS(直径36mm、厚さ12.1mm)。日常生活防水。70万4000円(税込み)。

バロン ブルーとは、日本語で「青い風船」を意味する。2007年に発売された「バロン ブルー ドゥ カルティエ」は、風船のような膨らみのあるフォルムが特徴だ。

ラウンドケースの内部に埋め込まれるようにして配置するリュウズには、青いカボションを添えている。ケースバックも風防同様にドーム状の丸みを帯びており、ローマンインデックスと剣型針との対比が美しい。サイドビューも独特だ。

ダイアルにギヨシェ彫りが施されていることも、独特なエレガンスを醸し出すことに寄与している。一見するとフェミニンな印象を受けるが、男性が身につけても映えるユニセックスなデザインだ。