オメガ「レイルマスター」は今なお、働く人々を満足させる存在であり続けているのか?

FEATUREWatchTime
2020.01.19

月面に着陸したことも、007の手首で時を刻んだこともないが、オメガ「レイルマスター」は実用的で、仕事で着用するのにふさわしい時計だ。ここでは2017年に発表された「レイルマスター マスター クロノメーター」を徹底的に検証する。

Originally published on watchtime.com
Text by Martina Richter
Edit by Yuzo Takeishi

「レイルマスター マスター クロノメーター」の直径は40mmを下回り、オリジナルモデルとほぼ同じサイズとなっている。
レイルマスター マスター クロノメーター
自動巻き(Cal.OMEGA 8806)。35石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約55時間。SS(直径40mm)。15気圧防水。52万円(税別)。

 そもそも「レイルマスター」のオリジナルモデルは、電気関係の仕事をする人に向けてデザインされたものだ。そして、現代的なアレンジが施された現行の「レイルマスター マスター クロノメーター」は、スイス連邦計量・認定局(METAS)より認定を受けたマスター クロノメーターを搭載した、スタイル重視のタイムピースである。

 インデックスとバトン状の時分針にはスーパールミノバを塗布。日中は経年変化を演出する色合いが楽しめるが、夜の帳が下りるとこれらは青く美しい光を放って浮かび上がり、さらに明るいドットがアワーマーカーの間を軽快に滑っていく様子が伺える。この「ロリポップ」状の秒針はスイス鉄道の駅に掲げられた時計を彷彿とさせ、「レイルマスター」と鉄道とのつながりを意識させる。

 1957年の発表当時、「レイルマスター」はオメガと鉄道との長きにわたる結びつきを表現したモデルだった。オメガが初めて鉄道会社に懐中時計を納入したのは1895年のこと。それから約60年の時を経て完成した「レイルマスター」は、鉄道会社職員をはじめ、科学者や電気技師、そのほかにも強い電磁場が発生する場所で作業する人々に向けて設計された。1000ガウス以上にも及ぶ磁場の影響からムーブメントを守るべく、特別な二重構造のケースを採用していたのだ。

文字盤にはレトロモダンな雰囲気のディテールを備え、高い視認性も確保している。

 このクラシカルなモデルに変更が加えられたのは2003年のことだが、すでに1990年代後半には現代のコーアクシャル・ムーブメントが搭載されていた。もっとも、このバージョンはすぐに生産終了。そして「レイルマスター」は、2017年に発表された限定のアニバーサリーコレクション「オメガ 1957 トリロジー」で復刻を果たした。1957年当時のオリジナルデザインを忠実に再現する一方、ムーブメントには自社製の自動巻きキャリバー8806を搭載。つまり、ヴィンテージのルックスに現代のマスター クロノメーターの技術を取り入れた格好となっており、ムーブメントは1万5000ガウス以上もの高耐磁性能を誇っている。これにより「レイルマスター」は120年以上前に始まった歴史を、現在も紡いでいるのである。

 オリジナルモデルやアニバーサリーモデルとは異なり、今回の検証に使用した「レイルマスター マスター クロノメーター」の文字盤は、垂直方向のヘアラインが施されており、時計にモダンな表情を付与している。また3時、6時、9時、12時に配されたインデックスには、オリジナルとは異なるフォントを採用。その一方で、「レイルウェイ・スタイル」と呼ばれるミニッツスケールからはノスタルジックな雰囲気も感じさせ、文字盤に絶妙なコントラストを与えている。

キャリバー8806は、ナイアード・ロックシステムによって密閉されたケースバックの中に格納されている。

 文字盤の中央にあしらわれたクロスラインは、現在の「レイルマスター」が、マスター クロノメーター・キャリバー8806によって高精度を実現したことを示すものだ。C.O.S.C.の証明書では、このムーブメントがクロノメーターの基準に準拠していることが明示され、またMETAS(スイス連邦計量・認定局)の証明書では、「レイルマスター」がC.O.S.C.の定める品質レベルを超え、テスト済みのマスター クロノメーターとして1万5000ガウス以上の磁場に耐えうることが示されている。そして、この現行「レイルマスター」には4年間の保証が適用されることも付記しておこう。

 オメガが製造する現行の他ムーブメントと同様、キャリバー8806は現在の制度基準としては最も高い精度と耐磁性を誇っている。過去に検証したマスター クロノメーター(「シーマスター プラネットオーシャン」のキャリバー8900)ほどの完璧な動作とは言い難いが、十分に高い精度で時を刻んでくれる。測定器では一部のポジションで偏差が見られたが、このモデルは測定器での数値よりも着用テストの方が良い結果を示している。

テキスタイルストラップやピンバックル、スティールバック、ねじ込み式の円錐形リュウズといったディテールは、仕事の場面にも適している。

 キャリバー8806は、2017年以降、オメガが展開するマスター クロノメーターの三針ムーブメントにおける定番となった。基本的な構造は2016年に発表されたキャリバー8800と同じだが、キャリバー8806にはデイト表示機能がない。そして、アラベスク調ジュネーブウェーブが美しいこのムーブメントは、シーホースがエンボスされたスティールバックの中に隠されている。また、ケースバックに描かれたシーホースと文字は、特許取得済みの新たなナイアード・ロックシステムによって正体で収まる仕組み。このナイアード・ロックシステムとは、ケースバックのバヨネットシステムのようなもので、オメガは以降の新作において従来のスクリューバックからのシフトを進めている。

 ケースの直径は40mmで防水性は150m(15気圧)。ナイアード・ロックシステムの採用によって、ケースバックは常に所定の位置に収まり、ルックス面での訴求にもつながっている。また、ストラップの裏面に施されたレザーは着用感を高めており、ファブリックのヘリンボーンパターンと小穴に設けられた金属製のはと目は、高品質なワークウェアを想起させる仕上がりだ。

「レイルマスター」は暗闇での視認性にも優れている。

 「レイルマスター マスター クロノメーター」は、間違いなく信頼できる相棒である。洗練や革新性を強く感じさせるデザインではないものの、時間計測の検証は好評価。さりげなくエレガントで使い勝手のいい時計として、仕事はもちろん、アフターワークでも付き合える存在であることを証明してくれた。