世界を股に掛けるIWCの「パイロット・ウォッチ・タイムゾーナー・クロノグラフ」(前編)

FEATUREWatchTime
2020.03.29

旅の最高の相棒として開発されたIWCの「パイロット・ウォッチ・タイムゾーナー・クロノグラフ」。ベゼルを回転するだけで新しいタイムゾーンを表示し、内蔵されたフライバック・クロノグラフが、このリーズナブルな価格のタイムピースを特別なモデルへと押し上げている。

Originally published on watchtime.com
Text by Martina Richter
Photo by Olaf Koster
Edit by Tsuyoshi Hasegawa

パイロット・ウォッチ・タイムゾーナー・クロノグラフ

たとえば極東への旅。シティリングにある北京を選び、ベゼルを回転させることで中国の標準時間を簡単にセットできる。

 IWCのパイロットウォッチが1936年に遡る歴史を持つという事実を抜きにしても、「パイロット・ウォッチ・タイムゾーナー・クロノグラフ」を伴い複数のタイムゾーンを移動することは、非常に安心感ある旅の時間となる。それは一度時刻をセットしてしまえば、完璧に動作するからだ。

 調整のプロセスはケースとムーブメントの、特別なつながりにある。このワールドタイマーを正確に調整するには、まず回転ベゼルを約46ミリ径のステンレススティール製ケースに押し付けることから始まる。次に押し込んだままのベゼルを、ホームタイムの都市が12時位置にある三角表示の真上に来るよう回転させる。もしサマータイムが実施されている都市であれば、さらに少し回転させてS(Summerの意)の文字が12時位置に来るようにセットする。ベゼルの設定が終わったら、押し込んでいたベゼルをきちんと元の位置に戻し、設定が終了しているかを確認する。元のポジションに戻ったかどうかの確認は、音と感触で確かめられるため難しいことではない。カチッと音がしたら、調整のプロセスがうまく完了したとことであり、これで回転式リングが誤動作することもない。

タイムゾーナーの回転式ベゼルの動きは、2番車と24時間表示針、デイト表示の歯車と連動している。ディファレンシャルギアの輪列が、時計を進める際のスイッチングと時針への動力供給に関わっている。


ベゼルがリュウズの役割を果たす

調整プロセスにおける次の“登場人物”はリュウズである。まず左方向に回転してロックを解除する。リュウズを引き出すことにより、針を調整できる状態になる。他の時計と異なるのは、リュウズにデイトを早送りするための中間ポジションが存在せず、その役割を回転ベゼルが担っていること。この機能は30日しかない小の月に特に便利である。ベゼルを時計回りに回すと時間が進み、時針と24時間表示針が真夜中を過ぎるたびにデイト表示が変わる。そのままベゼルを回転させ、ローカルタイムゾーンを表示するまで回転させる。ここで留意しておきたいのは、24時間表示針も、正確なローカルタイムを表示させることである。先端をレッドに染めた24時間表示針が、文字盤中央にある24時間表示サークルにおいて正しい時刻を表示しているかを確認する必要がある。

 これで調整プロセスは終了。ここからは、時刻を調整したいときに時間を進め、新しいタイムゾーンを表示させるためにベゼルを回転させるだけだ。東へ向かって旅をする場合は、ベゼルを時計回りに回転させる。通常、太陽が進む方向=東に行くに連れ時間は進むことからも、理に適っていると言えよう。西へ向かっている場合は、ベゼルを反時計回りに回転させる。時間を今より早い時間に“後戻り”させているからだ。デイト表示は時針と連動し、進むか後戻りする構造となっている。

 国外滞在中にホームタイムが知りたいとき。または自宅にいて他の国の時間が知りたいときは、ベゼルを押し付けて回転させ、表示させたい都市を12時位置に移動させるだけでいい。きっと楽しい暇つぶしになること請け合いだ。

パイロット・ウォッチ・タイムゾーナー・クロノグラフ

ワールドタイム機能:パリは中欧の標準時間を示す。赤い先端の針が24時間表示を担っており、写真ではそのタイムゾーンでの時刻である午前7時20分を示している。

 2014年、IWCはこの便利な特許を、2002年創業のVogard社から買い取っている。これにより10年前に世に出ていた技術がIWCのものとなったのだ。それまで、このようなワールドタイムのコンプリケーションは存在しなかった。Vogard社のオーナーはベゼルを回転するだけで世界のタイムゾーンが設定可能となり、なおかつ針を時間単位で進める技術を開発していたのである。この会社の売却について触れておくと、Vogard社のオーナーであったMichael Vogtによると、時計工房でありニッチなサプライヤーであった同社は、自身の技術革新の可能性を最大限に引き出す財務及び構造的背景を、持ち合わせなかったと説明している。

(後編へ続く)