MB&Fの創業者マキシミリアン・ブッサーが過去に〝共演〟した時計師や今後について語る

FEATUREWatchTime
2020.07.05

今回、MB&Fの創業者として知られるマキシミリアン・ブッサーにじっくり話を聞く機会を得た。ジャガー・ルクルトやハリー・ウィンストンでの時計製作を経て、“とにかく普通でない時間計測機械”を自ら立ち上げた会社にて(多くの友人の協力を得ながら)多彩に創り出してきた人物である。

マキシミリアン・ブッサー

マキシミリアン・ブッサー
MB&F創業者。ハリー・ウインストン在籍時代に「オーパス」シリーズを主導したことでも知られる。いわく「独立系時計メーカーは大きなブランドほど、深いポケットを持っているわけではない。ただ本当の意味での知識豊かな顧客データベースを持ち、深い気持ちのつながりで動くファンを抱えている」。
Originally published on watchtime.com

「フレンズ」に込められたブッサーの思い

Watch Time(以下WT):友達(MB&Fの「F」はFriendsの頭文字)を持つということは、どれくらい大切なことですか? また誰がMBの友達なのでしょう?

マキシミリアン・ブッサー(以下MB):10代のころ、僕は変わり者だったこともあり、友達が少ないことに悩んでいたんだ。そのことが友情の大切さを理解する切っ掛けになったと思う。友達は必要なときに側にいてくれる人達なんだということもね。「フレンズ」という言葉をブランド名に使ったのは、“マキシミリアン・ブッサーと同じ価値・熱心さ・情熱を分かち合う素晴らしい職人、エンジニア、時計師”…なんてネーミングではちょっと長すぎると思ったからさ(笑)

WT:遊び心があって、創造性に富み、語れるストーリーを持っているのがMB&Fの時計だと思います。あなたにとってイマジネーションとはどのようなものですか?
MB:アインシュタインは“創造性は、楽しみを持った知性である”と言っている。この言葉において「創造性」が「イマジネーション」に置き換えられると僕は思っている。違う世界や異なった枠組み、様々な状況を想像できることは、それ自体が素晴らしい贈り物と考えているんだ。そうすることで、ありきたりの経験も、一大イベントにもなり得るだろうから。自分の部屋に何千時間も閉じこもって、僕はその才能を子供のころから磨いてきたんだ。イマジネーションこそが僕の正気を保ってくれたというわけさ。僕がまともだって思う人たちにとっての“正気”ではあるんだけどね!(笑)

偉大な独立時計師たちとの共演

WT:特に注目すべきコラボレーションの機会などありましたか?
MB:僕のほとんどの人生において、後ろを振り返ったことがないんだよ。アドレナリンが常に、次のコラボレーションへと僕を駆り立てるから(笑)。実際、一緒に仕事をした人たちはというと、フランソワ-ポール・ジュルヌ、ヴィアネイ・ハルター、フェリックス・ボームガートナー、カリ・ヴティライネン、エリック・クードレイなど、皆とてつもない才能を持った人たちだった。もし、ひとりだけ挙げるならばステファン・マクドネルかな。周知のとおり「レガシー・マシン パーペチュアル」を開発した人物だ。ステファンはその道を究めた達人だと僕は思っている。

レガシー・マシーン パーペチュアル

MB&F「レガシー・マシン パーペチュアル」
手巻き。41石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KYG(直径44mm、厚さ17.5mm)。3気圧防水。
18KYGケースをまとってMB&F「レガシー・マシン パーペチュアル」が限定復活

https://www.webchronos.net/features/44404/


WT:どのようにしてヴティライネンと一緒に仕事をすることになったのですか?
MB:「レガシーマシーン N°1」はカリを念頭において創られたものなんだ。彼にプロジェクトを伝えにモティエへ向かって車を走らせたことは、忘れられない良い思い出さ。当初は仕事が忙しすぎてコラボレーションは難しいと言われてしまった。でも、その時点では僕のアイデアをまだ見せていなかったんだよね。そのあと図面を見せて、3分後には200%賛成してくれたよ(笑)。カリは自分が関わった「レガシーマシーン N°1」を気に入って、今でも着けてくれているんだ。そして僕は「ヴァントゥイット」を腕に着けるのが誇りであり、眺めるたびにカリの工房での邂逅を思い出しているよ。

WT:ここ数年、驚くほどに自社生産のキャパシティを上げていますね。将来的にMB&Fは、どれくらいの規模になるのでしょうか?
MB:過去7年の間に、多くのリソースを自社内に組み込むようにしてきたんだ。最初は一部パーツの試作品を作製し、そして次にサプライヤーから納品されたパーツの不良品の修理し(これにより2カ月から4カ月のやり取りを短縮)、それからサプライヤーが製作できないパーツの内製など。そしてムーブメントパーツの30%を自社内で製作することを経て、いくつかのケースも内製するようにしてきたんだ。現在ではなんとケースの70%を自社製にしているんだよ! これから数カ月の間にいくつかの機械を新規に導入する予定ではあるけれど、100%自社製を目指したプランまでは現在のところ考えていないね。

MB&F「レガシーマシーン N°1」
手巻き。23石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KRG(直径44mm、厚さ16mm)。