ボーム&メルシエの「クリフトン ボーマティック」を検証する

FEATUREWatchTime
2020.07.12

ボーム&メルシエの「クリフトン ボーマティック」は、実用時計に求められるすべての要素を詰め込んだ初の自社製ムーブメントを搭載している。約120時間のロングパワーリザーブやクロノメーターを取得した精度、高い耐磁性能、そして長いメンテナンスサービス間隔に加え、手が届きやすい価格まで完備する同作を検証していきたい。

クリフトン ボーマティック

ボーム&メルシエ「クリフトン ボーマティック」
自動巻き(Cal.BM12-1975A)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。SS(直径40mm、厚さ10.3mm)。5気圧防水。33万円(税別)。
Originally published on watchtime.com
Text by Martina Richter
Edit by Tsuyoshi Hasegawa

ボーム&メルシエ「クリフトン ボーマティック」

「クリフトン ボーマティック」に搭載されている自動巻きムーブメントCal.BM12-1975Aを見てみると、最初に気付くのは振動するテンプにつながるヒゲゼンマイが、ギリシャ文字の“Φ=ファイ”のような形をしていることだ。ボーム&メルシエではギリシャ語におけるアルファベットのひとつであるこの文字を、ブランド創業の1830年から130年以上経った1964年以降、ブランドのシンボルとして使用している。ボーム&メルシエは、“ファイ”に象徴された革新的時計のメカニズムとボーマティックにて体現した入手しやすさの間に、ひとつの黄金比を見出しているのである。

 開発当初から、ボーム&メルシエが長年計画を温めてきた自社製機械式ムーブメントのデザインコンセプトは、ファイによって定義付けられていた。しかしそれには、ヴァルフルリエ(2005年創業のムーブメントマニュファクチュラー)の供給量増産と(17年に技術革新拠点マイクロシティに統合された)Richemont Research and Innovation Centerの存在が必須であり、その条件が補完されたことからボーム&メルシエにハイパフォーマンスな時計作りと競争力ある価格設定が可能たり得たのである。

 このムーブメントには、4つの品質条件が課題として設けられていた。さまざまな姿勢差での高精度、長時間稼働(ロングパワーリザーブ)、高耐磁性能、そして耐久性である。

クリフトン ボーマティック

ムーブメントのBM12-1975Aには、いくつかの革新的な部分が組み込まれている。しかし堅牢な作りによりその構造の多くをのぞくことはできない。

 ねじ込み式のケースバックを通してムーブメントを眺めると、テンプとコンパクトなブリッジがキャリバーの大部分を覆っていることが分かり、堅牢でタフな印象を得る。新規に最適化されたエスケープメントは摩擦が少なく、トルク伝達に改良が施されている。それにより、他の標準的ムーブメントより30%以上もパワーリザーブが長くなっているのである。

 もうひとつ30%のパフォーマンス向上を実現させているのがヒゲゼンマイだ。ここでは“ツインスピアー”という技術が用いられている。これはふたつの薄いシリコン製ヒゲゼンマイを45度ずらした上で重ね、二酸化ケイ素で接着するというものだ。中間のシリコンレイヤーが温度変化に対し重要な役割を果たしている。従来のヒゲゼンマイよりも30%の軽量化が図られただけでなく、腐食に強く衝撃や振動、磁場に対しての耐性も兼備する。

クリフトン ボーマティック

「クリフトン ボーマティック」の厚さはわずか10.27㎜。シャツのカフ内側に充分に収まる薄型だ。

 ボーマティックの魅力のひとつが1500ガウスという高い耐磁性能である。これによって財布やバッグの磁気留め具、携帯、タブレットケース、スピーカー、その他のデバイスがもたらす日常的な磁場から充分に耐えることができるのだ。「クリフトン」の耐磁性能は軟鉄性ケースによって得たモデルと比べて軽いため、着用性にも優れている。ボーム&メルシエが目標としたのは、日常使いにおける充分な耐磁性能であった。

 ムーブメントは、フリースプラングテンプに付けられたマスロットによって調整される。採用される技術と調整により、キャリバーはクロノメーターレベルの精度を発揮するという。それぞれの姿勢差でも、約5日間の継続的状況においても安定性が確認されている。振り角は徐々に落ちてはいくものの、いずれの時間、姿勢で200度以下になることはない。姿勢差誤差でも5秒以上の差は見られず、平均的レートは5日目でも素晴らしい内容であった。時計が完全に停止したのは実に約120時間後のことである。

 信頼感あるロングパワーリザーブにより、「ボーマティック」は長い週末のあいだ未着用でも、再調整や巻き上げを必要としない。そして手首に戻せば巻き上げローターが、主ゼンマイを巻き上げてくれる。

クリフトン ボーマティック

「クリフトン オートマティック」におけるポーセリン風仕上げの文字盤は、ファセットを効かせた多くの要素のなかでも特に高い視認性をもたらしている。

 約5日間のパワーリザーブはひとつの香箱にて供給されており、スケルトン加工を施したタングステンのローターを擁した自動巻きシステム、またはスムースな巻き上げのリュウズから動力を得る。香箱サイズは開発段階で最適化され、コイルの数を増やさずに済んでいるのだ。主ゼンマイの材質として用いられているのは古典的なニヴァフレックス。ボーム&メルシエが、「クリフトン ボーマティック」のメンテナンス間隔を長期化できた理由の一部として、リシュモンが採用している3種類の合成オイルと航空業界から取り入れた潤滑油の存在が挙げられる。ボーム&メルシエのラボによると、10年以上もの摩耗性に関するシミュレーションテストが行われたということである。

 高品質なフランス製アリゲーターストラップは10年もたないとしても、クイックリリースシステムにより、ストラップの交換は実に容易だ。小さなピンでラグの間を渡すバネ棒を外し、新しいブレスレットに付け替えるだけでOKだ。それぞれの厚みやピンに対応できるよう、下に向かってカーブを描き着用性の良さを担保するラグには2種類の穴が設けられている。ストラップ先端には「クリフトン ボーマティック」の控えめな外観とよくマッチしたバックルが付けられ、全体を引き締めている。

 総合的に上品な印象であるのは、ケース表面のポリッシュ仕上げとヘアライン仕上げの組み合わせにある。反射防止加工を施したドーム型サファイアクリスタルを通した時刻視認性も十分なレベルだ。そこには一連のファセットを効かせたアワーマーカーやランセット状の針があるにも関わらず良好ではあるのだが、それは日中の採光が条件となっている。艶やかなホワイトの陶器にも似た文字盤上には、夜光塗料が塗施されていないのだ。3時位置のデイト表示は、やや大きめデザインゆえに読み取りやすい。「クリフトン ボーマティック」のクロノメーター取得モデルは、文字盤上の繊細なクロスヘア仕上げを特徴としており、タイムピースの誇る高い精度を予感させる仕上がりだ。いくつかあるバリエーションには、クロノメーターを取得したものとそうでないものが存在する。

クリフトン ボーマティック

ギリシャ文字の“Φ=ファイ”は黄金比とブランドのシンボルである。ここでは特に薄いケースの厚みに着目してほしい。

 程よいプライスとモダンなムーブメントが「クリフトン ボーマティック」を、未来を見据える若い顧客層に訴求するパッケージとなっている。ここでは機能性が重要視され、伝統も十分に尊重されている。明らかにギリシャ文字のファイは、古いものを象徴するだけのアイコンではなくなっているのだ。

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。


精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

クロノグラフ停止時 クロノグラフ作動時
文字盤上 +3.4 +3.7
文字盤下 +5.6 +5.5
3時上 +3.3 +2.6
3時下 +0.9 +0.7
3時左 +1.5 +1.1
最大姿勢差: 4.7 4.8
平均日差: +2.9 +2.7
平均振り角:
水平姿勢 316° 309°
垂直姿勢 291° 291°

Contact info: ボーム&メルシエ Tel.03-4461-8030


ボーム&メルシエの2020年の新作「クリフトン ボーマティック」って一体どうなのよ?

https://www.webchronos.net/features/45652/
2020年 ボーム&メルシエの新作時計 一覧

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