着用レビューで実感した、A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス」の驚くべき完成度

FEATUREWatchTime
2020.09.22

ブランド初となるステンレススティール製モデルの投入によって、A.ランゲ&ゾーネはラグジュアリースポーツウォッチの世界に足を踏み入れることになった。ギリシャ神話の伝説的英雄の名前でもある「オデュッセウス」は、果たして今回の着用テストでどのような結果を残したのか。

オデュッセウス

A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス」
自動巻き(Cal.L155.1)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS(直径40.5mm、厚さ11.1mm)。12気圧防水。
Originally published on watchtime.com
Text by Jens Koch
Edit by Yuzo Takeishi
(2020年9月22日掲載記事)

 人生における多くの物事と同様、スポーツには好みと才能が関わってくる。アイアンマンレースに参加しようと考える人もいれば、チェスをスポーツと捉える人もいる。もちろん後者も間違いではない。国際オリンピック委員会もその意見に同意しているからだ。

 A.ランゲ&ゾーネはその両方の視点を支持しており、新作「オデュッセウス」を「アクティブな人々のための、スポーティでエレガントな腕時計」として宣伝している。エリートマニュファクチュールであるA.ランゲ&ゾーネは、このモデルに多くの機能を付与して堅牢性を高め、活躍の場を広げている。

 そもそも、ケース素材にステンレススティールを採用している時点で、通常A.ランゲ&ゾーネが使用しているゴールドやプラチナといったプレシャスメタルよりも傷つきにくく、日常使いに便利であることが分かる。しかも、このモデルはステンレススティール製ブレスレットを採用。湖でも問題なく使用でき、汗をかくようなアクティビティで着用しても、高品質レザーストラップのように交換が必要になるわけでもない。


洗練されたクラスプを備えた、しなやかなステンレススティール製ブレスレット

 気温が高かったり、激しい運動をしたりすることで手首はわずかにむくんでしまうことがあるが、オデュッセウスはクラスプに洗練された調整機構を備えているので、こうした問題にも難なく対応できる。バックルに設けられた丸いロゴを押し下げるとブレスレットの長さを細かく調整でき、最長7mmまで伸ばすことが可能だ。逆に、短くしたいときはブレスレットをバックルに押し戻せばいい。この機構は非常に実用的で、当初考えていたよりも頻繁に利用する場面が多かった。

オデュッセウス

中央にテクスチャー感のある仕上げ、その周囲にアジュラージュを配した立体的なダイアル。ファセット加工のインデックスと赤い文字で記された60の目盛りなど、スケールが整然と配置されている。

 ケースとブレスレットにステンレススティールを採用したことに加え、防水性を高めることで、このモデルは幅広いアクティビティで着用できるようになった。オデュッセウスはブランドで初めて、水深120mの水圧に相当する12気圧の防水性を備えたモデル。厳密に言えば、A.ランゲ&ゾーネの標準仕様である30m防水でさえも、シャワーやプールでの使用には適していなかったのだ。

 しかし、ねじ込み式リュウズを採用したことで、オデュッセウスはヨットのデッキから飛び込んでも問題なく耐えられるようになった。そしてスポーティーモデルには、明るい場所でも暗い場所でも視認性の高いことが求められるが、オデュッセウスは時分針と大きなインデックスに蓄光塗料を塗布することでこの要件をクリア。暗所で確認できないのは秒針だけである。

 こうした新しい特徴を備えたオデュッセウスだが、A.ランゲ&ゾーネのタイムピースとして認識できるだろうか? もちろん、マニュファクチュールは重要なポイントを踏襲しているので心配には及ばない。

 それは、槍型の針とスケルトンのカウンターウェイトが付いた秒針、スケールに用いられたフォント、さらにはラグの形状やポリッシュ仕上げのベゼルといったディテールに見て取れるだろう。もっとも、ラグ側のブレスレット幅やスモールセコンドの繊細な針は見慣れるまでに少々時間を要するが、A.ランゲ&ゾーネは新旧のデザイン要素を巧みに融合していることが分かる。