CASIO ウォッチメイキングの神髄 Vol.2 マテリアル(MATERIAL)

FEATUREその他
2020.12.22

「壊れない腕時計」G-SHOCKを筆頭に、常にどこにもない革新的な腕時計を世に送り出すカシオ。その進化、挑戦と革新を語る上で最も重要なキーワードが「CMF」、つまり「C」=「カラー」、「M」=「マテリアル」、「F」=「フィニッシュ」である。そこには、腕時計の感性価値を決めるこの3つの要素に対する開発者たちの並外れた情熱と絶え間ない技術革新への探求心が込められている。本特集では全3回にわたって、カシオの最新モデルを具体例として、この3つの要素にひとつずつフォーカスし、カシオのウォッチメイキングの核心に迫る。

CASIO ウォッチメイキングの神髄 Vol.1 COLOR から読む
https://www.webchronos.net/features/57409/

三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura
渋谷康人:取材・文 Text by Yasuhito Shibuya

MATERIAL(マテリアル)にフォーカス

「マテリアル」=「素材」は製品の機能や外観、触感を大きく左右する「CMF」の中でも最も重要で本質的な要素である。カシオはこの分野でも独自のアプローチを続けている。第2回は、この「マテリアル」にフォーカスしてカシオの最新の挑戦と革新をご紹介しよう。


時計では異例の天然素材「阿波藍」染めの「オシアナス」

 Vol.2の「マテリアル」の回でも、まず注目するのはVol.1の「カラー」の回でも取り上げた、ビジネスマンのための腕時計「オシアナス」の最新モデルだ。

 カシオは当初から、素材を追求することで時計作りを行ってきた。例えば、G-SHOCKは樹脂素材の特性、魅力を活用した腕時計である。そして、オシアナスにおいても、2004年のファーストモデルからこの最新モデルまで、マテリアルに並々ならぬ情熱をもって臨んでいる。

オシアナス

(左)OCEANUS Manta/オシアナス マンタ
Japan Indigo 〜藍〜 Ref.OCW-S5000APL-2AJF
沈殿法で抽出した阿波藍を混ぜた塗料で着色した白蝶貝を使用した文字盤と、阿波の国、徳島県にて“天然灰汁発酵建て”という自然界の原料だけで作られる藍の染液によって染め上げられたクロコダイルレザーストラップを備えたモデル。Bluetooth搭載・世界6局対応電波ソーラー腕時計。パワーリザーブ約5カ月。チタンケース(縦48.8×横42.3mm、厚さ9.5mm)。10気圧防水。世界限定500本。21万円(税別)。

(右)OCEANUS Classic Line/オシアナス クラシックライン
Japan Indigo 〜藍〜 Ref.OCW-T2600ALB-2AJR
牛の一種、カウハイド素材を、OCW-S5000APL-2AJFと同じく藍染めで染色。”絞り染め”のムラを斜めに模様として活用した、藍染めの風合いが強く感じられるレザーストラップを装備。世界6局対応電波ソーラー腕時計。パワーリザーブ約5カ月。チタンケース(縦48.2×横42.8mm、厚さ10.7mm)。10気圧防水。世界限定700本。12万円(税別)。

素材を追求する「オシアナス」

 電波ソーラーだが、ケースはフルメタル。しかも、ステンレススティールだけでなく、それよりも約4割も軽量でかつ金属アレルギーを起こしにくいチタンもケース素材に採用。また文字盤を覆う風防にも、ダイヤモンドの次に硬度が高く傷が付きにくいサファイアクリスタルを一貫して採用している。

 このサファイアクリスタルという素材にも、オシアナスには一家言ある。風防だけでなく、ベゼルにもいち早く採用。しかも江戸切子職人、三代秀石・堀口徹氏がハンドメイドで加工したモデルも開発、発売してきた。

日本伝統の素材と技法で作るストラップと文字盤

(左)絞り染めした大きな革に、その革から作られたストラップを装備したオシアナスRef.OCW-T2600ALA-2AJRとRef.OCW-T2600ALB-2AJR。贅沢な革の切り取り方が見て取れる。
(右)「沈殿法」で抽出された濃厚な藍染料の粉末。

 2020年秋から発売中のオシアナスの限定モデル「Japan Indigo(ジャパン・インディゴ)〜藍〜」シリーズも、「阿波藍」という日本伝統の素材、天然染料に注目し、徳島の老舗呉服店「絹や」とのコラボレーションに妥協なく取り組むことで開発された腕時計だ。

 藍染めと藍染めを使ったアイテムは、ジーンズやバッグなどの小物を通して私たちにはおなじみのものであるが、そのほとんどが化学的に製造された合成インディゴを使ったもので、天然の植物(阿波藍では蓼という植物)を原料にしたものはごくわずかで、とても稀少なものである。

 オシアナスの開発陣は、徳島で江戸時代から作られてきた「阿波藍」と呼ばれるこの天然の藍染料に着目。「阿波藍」で染色したレザーストラップや白蝶貝を採用した限定モデルの開発に至った。

 徳島で100年以上の歴史を持つ呉服屋「絹や」の協力を得て開発したカウハイド(牛革)素材のストラップは、「絹や」自慢の”絞り染め”という染めムラが模様になるように染め上げられた逸品を、斜めになるように革を贅沢に切り抜いたものだ。

オシアナス 文字盤

薄い藍色から濃い藍色へ。“ぼかし染め”をイメージしたグラデーションと白蝶貝の虹色の輝きが見事に融合している。天然素材だけに、同じものがふたつとないことも魅力だ。

 また、クロコダイルのストラップも「絹や」では初めての挑戦である。藍染めのクロコダイルストラップは世界でも珍しいものだ。

 さらに白蝶貝文字盤は、藍の生成法のひとつ「沈殿法」によって抽出された濃厚な藍で染色している。その濃さは、指先でほんの少し触っただけで濃く染まり、しばらくは藍色が消えないほどだ。抽出作業は、レザーストラップの藍染めと同様に、自然界の原料だけで手間と時間をかけて藍染料を作る“天然灰汁発酵建て(てんねんあくはっこうだて)”によって行われたものを使用している。

 レザーストラップと白蝶貝文字盤。このキーパーツからも、オシアナスの最新限定モデルの「マテリアル」=素材への妥協なき追求がいかに徹底したものであるかが分かる。

藍を混ぜた塗料で裏側から着色した文字盤は光をあまり通さない。そのため、蒸着処理で輝度があるブルーに加飾されたインダイアル部分に当たる光だけで発電する「インダイアルソーラー」方式が採用されている。

クロコダイルレザーストラップを装備したオシアナス マンタRef.OCW-S5000APL-2AJF。こちらも、高価で稀少なクロコダイルレザーの整った斑の部分を使用し、贅沢な使い方をしていることが分かる。