70歳を迎えたパルミジャーニ・フルリエ創業者ミシェル・パルミジャーニ、創業時の思いを語る

FEATUREWatchTime
2021.03.02

パルミジャーニ・フルリエの創業者であり、時計師・修復師であるミシェル・パルミジャーニは2020年12月2日に70歳となった。1976年に修復専門のアトリエを開いたことから始まる同名のブランドは、この節目の誕生日を記念して、彼がデザインした最初の腕時計をモチーフにした限定モデル「トリック ヘリテージ」を発表した。今回ミシェル・パルミジャーニ本人へインタビューする機会を得て、先駆的な独立系ブランドとしてのキャリア、時計デザインにおける自然との調和を大切にする方向性、そして伝統的な時計作りを守っていく重要性について語ってもらった。

Originally published on watchtime.com
Text by Mark Bernardo
2021年3月2日掲載記事

ミシェル・パルミジャーニ

ミシェル・パルミジャーニ

WatchTime:建築に対する関心が時計のデザインに生きていらっしゃると思います。建築と時計のデザインにおける共通点とは何でしょうか?

ミシェル・パルミジャーニ:建築は、自然界に見られるのと同じ側面、特にプロポーションの調和の探求を見出すことができるので、創造性を発揮するための素晴らしい基礎となります。この探求は、私の時計制作に常に影響を与えてきました。そして芸術の黄金比や科学のフィボナッチ数列の原理を踏襲し、時計のデザインに実践してきました。

WatchTime:パルミジャーニ・フルリエは、1970年代のいわゆる"クォーツ危機"の真っ只中に設立されたブランドで、時計修復事業からスタートしました。当時、機械式時計製造が永続すると確信していた理由は何だったのでしょうか?

ミシェル・パルミジャーニ:機械式時計は時代を超越していると信じてきました。私たちは常に時計を修理や手入れをする必要性を感じています。時には小さな部品をひとつ変えるだけでも、機械式時計をよみがえらせることができるのです。機械式時計に対する技術は、それを守っていくことが重要です。時計の修復は、最初に機械式時計を作り出した人たちが持っていた技術の粋を守り、数世代にもわたってそのノウハウが受け継がれていくことにつながるのです。

ミシェル・パルミジャーニ

時計修復をする1967年の頃のミシェル・パルミジャーニ。

WatchTime:1976年に自身の工房を立ち上げた時、時計業界の未来はどのように見えましたか? また周囲の反応はどのようなものでしたでしょうか?

ミシェル・パルミジャーニ:私がブランドを立ち上げようと決めた時、周りの人たちはみんな、この業界に入るのではなく、保険業のようにもっと安定した業界に入るように説得しようとしてくれました。当時、時計業界は決して大きな業界ではなく、ビジネスとして参入するには良い時代ではありませんでした。時計製造が主な産業であったスイスの各都市は、銀行が時計事業から資金を遠ざけようとしていたため、人々に他の産業への転職を勧めようとしていました。多くの人は、私がどうかしていると、本当に自分が何をしているのか分かっていないのかと疑っていました。しかし、私はこの機械式時計製造のノウハウを後世に永続させるという夢のために戦い続けました。

トリック コレクション

トリック コレクションはギリシャ建築の影響を受けている。

WatchTime:パルミジャーニ・フルリエは、当時の時計産業に欠けていたかもしれないものをどのようにもたらしたのでしょうか?

ミシェル・パルミジャーニ:時計産業のある側面は、工業化によって失われつつあったと思います。私は仕上げ、品質、複雑性の面で貴重な時計を作りたいと思っていました。また、エナメルや文字盤のエングレービングなどの伝統的な技術を守り、そしてそのような技術の訓練を受けた職人たちにスポットライトを当てたいと願っていました。これらは、工業化された時計製造とは相容れない目標だったでしょう。

WatchTime:ブランドが成長した後、ケースから文字盤、ムーブメントに至るまで、これらの製造を全てひとつの会社の下で行うことが重要だったのはなぜでしょうか?

ミシェル・パルミジャーニ:ゴールは常に、自分が作りたいものを実現することでした。特定の技術を持つ会社を見付け、それらを同じ部屋に集めることができれば、より容易にそれが叶えられます。もちろん時間も資金もかかりましたが、私たちのように特別な時計を作りたいと願うブランドを実現するには、そのノウハウをすべて内包することが必要でした。例えば、私が特別な時計の為に特別なムーブメントをヴォーシェに依頼したいと思えば、ヴォーシェはパルミジャーニのファミリーの一員なので、非常にシンプルに物事は進みます。

トリック ヘリテージ

パルミジャーニ・フルリエ「トリック ヘリテージ」。自動巻き(Cal.PF441)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。C.O.S.C.認定クロノメーター。SSケース(直径42.8mm、厚さ10mm)。30m防水。エルメス社製アビスブルーアリゲーターストラップ。世界限定70本。204万円(税別)。

WatchTime:70歳の誕生日を記念した限定モデル「トリック ヘリテージ」のベースに「トリック」を選んだ理由と、そのコレクションが特別な理由は何ですか?

ミシェル・パルミジャーニ:この時計は私自身にとっても驚きの1本でした! アイデアは製品部門と、長年私と一緒に仕事をしてきた人たちから出てきたもので、誕生日の記念モデルを作りたいと提案されました。彼らがトリックを選んだのは、私がブランドを立ち上げた時に最初に作ったモデルであり、私を象徴するモデルだからです。また「トリック」は、文字盤に有機的な模様が施された自然から最もインスピレーションを受けたコレクションであり、同時にギリシャの円柱を思わせるゴドロンにつながる要素を持っているコレクションであることも特別な理由です。

WatchTime:現在の時計業界の状況は、1997年当時と全く違ったものになっていると思えます。なにか業界についてのお考えがあれば、またこれまでの業界の変遷の中であなたを驚かせたようなものがあれば、お聞かせ願えますか?

ミシェル・パルミジャーニ:工房を立ち上げた頃の同業者の反応を見ていると、多くの時計ブランドが一歩引いて、時代を超越した作品を作り、高級時計製造の歴史的な芸術を維持しようと決意したことに、納得のいく形で驚かされました。当初は誰も私のことを信じてくれませんでしたが、フランスで言うところの「pari gagnant」、勝ちをかけた勝負を成功させることができて本当に良かったと思っています。

スイスにあるパルミジャーニ・フルリエの本社。


パルミジャーニ・フルリエ 初めてのデイリーユースウォッチ「トンダ GT」「トンダグラフ GT」

https://www.webchronos.net/news/49891/
パルミジャーニ・フルリエが新開発の一体型クロノグラフ「トンダグラフ GT」を発表

https://www.webchronos.net/news/53082/
高級時計が製造されるまで〜パルミジャーニ・フルリエを支える工房〜(外装編)

https://www.webchronos.net/features/37950/