オメガの2021年新作「シーマスター ダイバー300」深掘りすると5つのポイントで大変化!

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2021.04.27

こういうことを書いてしまっては身も蓋もないが、「クロノス日本版」と「webChronos」にはオメガの広告が一切入っていない(謎。入っていないが、私たちは地味にオメガを取り上げてきた。関わっている人たちが面白いし、時計も見違えるほど良くなっているからだ。とりわけ、外装での試みは他社を圧してユニークである。文字盤やムーブメントの見栄えを良くするために、防水パッキンやムーブメントホルダーの色を変えてしまうメーカーが、他にあるとは思えない。

 そんなオメガの最新作が、「シーマスター 300 マスター クロノメーター」である。ちなみにこれはクロノスで絶賛した「シーマスター ダイバー 300M」ではなくて「シーマスター 300」。名前が紛らわしいが、このふたつは別物である。前作も良かったが、2021年度版のシーマスター 300はいっそう気合いが入っている。

広田雅将(クロノス日本版):取材・文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
2021年4月27日掲載記事


レトロモダンダイバーの先駆け、ダイバー300

 2015年に発表された「シーマスター 300 マスター コーアクシャル」は、1957年の「シーマスター 300」を範に取った「モダン」なダイバーズウォッチだった。ムーブメントには、約1万6000ガウス耐磁のCal.8400を搭載。いわゆるレトロモダンを先取りした本作は、オメガが期待したほどではなかったにせよ、スマッシュヒットとなった。ちなみに筆者は、このモデルが大好きである。

見た目は2015年モデルほぼ同じ。しかし大きく変わった2021年の「シーマスター 300」。1万5000ガウス耐磁のマスター クロノメーター規格が備わるほか、ブレスレットには強いテーパーがかけられた。自動巻き(Cal.8912)。38石。2万5200振動/時。SS(直径41mm、厚さ13.85mm)。重さ約154g(ブレスレット未調整時)。300m防水。77万円(税込み)。

 プロダクトとしての完成度はさておき、シーマスター 300は立ち位置の難しいプロダクトだった。好事家向けとしては「トリロジー」のほうがより魅力的だし、実用時計として考えると日付なしは使いづらい。オメガは改良策を考えていたし、筆者もそれは聞いていたが、付加機構を加えるにもベースとなるCal.8400はいささか厚い。

 しかも、これより低い価格帯には、傑作中の傑作である「シーマスター ダイバー 300M」が存在していたのである。これはそもそも、スタイリッシュで手ごろな価格のダイバーズウォッチであった。しかし2018年の新作では、マスター クロノメーター準拠のCal.8900系を搭載。加えて、外装のクオリティを一新(SSモデルの文字盤はなんとセラミックス製)することで、それより上の価格帯とも戦える「ジャイアントキラー」に化けたのである。

 もっとも、リリース直後からオメガはシーマスター 300を早々にモデルチェンジすると予想されていた。ほとんどのモデルをマスター クロノメーター化すると宣言していたことを思えば、その予想は当然だろう。


中身をマスター クロノメーター化

 そこで生まれたのが、2021年の新しいシーマスター 300である。ムーブメントには、マスター クロノメーター準拠のCal.8912を搭載。加えて、外装も一層良質になった。さらに言うと、ケースはわずかに薄くなり、装着感も改善された。見た目は大きく変わっていないが、実用性を高めて、より好事家向けになったのが、新しいシーマスター 300と言える。

こちらはストラップモデル。文字盤は黒である。基本スペックはブレスレットモデルに同じ。自動巻き(Cal.8912)。38石。2万5200振動/時。SS(直径41mm、厚さ1.85mm)。重さ89g。300m防水。72万6000円(税込み)。

 おさらいとして、マスターコーアクシャルとマスター クロノメーターの違いを挙げたい。両者とも約1万5000ガウスという耐磁性は同じ。しかし、マスター クロノメーター規格では、主ゼンマイの残量が66%と33%時の精度も計測される。オメガは「スウォッチグループ以外のメーカーもマスター クロノメーターを受けられる」と説明するが、普通の機械式時計が採用するクラブツース脱進機(スイスレバー脱進機)では、理論上主ゼンマイのトルクが落ちると、十分な精度を出せない。

 マスター クロノメーター規格に、あえてトルクが落ちた状態での精度を加えたのは、理論上の等時性が高いコーアクシャル脱進機を持つオメガだからこそ、だろう。頑張れば取れる規格ではない、というのがミソである。

 さておき、新しいCal.8900は、前作の載せたCal.8400のマスター クロノメーター版である。ダブルバレルにもかかわらず、パワーリザーブは約60時間。理由は、重いコーアクシャル脱進機を振り回すためである。また振動数も、あえて2万5200振動/時に抑えられた。精度はおそらく、前作のCal.8400に同じだろう。この8400は以前テストしたことがあり、その際の平均日差は+3秒以内だった。自動巻きは簡素な「ウィグワグ式」(ジャガー・ルクルトのスイッチングロッカーに似ている)だが、デスクワークでも巻き上げに不満はなかった。

搭載するのは、マスター クロノメーター規格をクリアしたCal.8900。本作が搭載するのは日付なしの8912である。基本設計を2007年のCal.8500にさかのぼるこのムーブメントは、1万5000ガウス耐磁と、0秒~+5秒以内という高い静態精度を誇る。


見どころは、むしろ外装にある

 新しいシーマスター 300の見どころは、むしろ外装にある。毎年のように外装で新しい試みを続けるオメガだけあって、見た目には細かく手を入れられた。一番分かりやすいのは、通称サンドウィッチダイヤルである。ベースとなる文字盤にはスーパールミノヴァを塗布。その上に、インデックスと数字をくり抜いた文字盤を重ねている。

 また、ムーブメントやマスター クロノメーターといった表記も、文字盤から裏蓋側に移された。これは、2021年の新作から見られるモディファイだ。スペックを列記する必要がないというのは、マスター クロノメーターが当たり前になった、という自信の表れだろうか。文字盤はポリッシュ仕上げではなく、表面を荒らしたマット仕上げのペイント。下地の荒らし方とラッカーの吹き方が上手いのか、強い光源にさらしても白濁しにくい。