カシオ「G-SHOCK」カーボンで武装した新世代フロッグマンの真価

FEATUREその他
2021.07.21
PR:CASIO

G-SHOCKの核となる耐衝撃性能に加え、陸・海・空における過酷な自然環境での使用に耐えるよう設計された「MASTER OF G(マスターオブG)」。なかでも、同コレクションにラインナップされるダイバーズモデル「フロッグマン」は誕生以来、高い性能と独特な左右非対称のフォルムが多くのG-SHOCKファンを魅了するとともに、海を拠点に活動するプロフェッショナルからの信頼も得ている。その新モデルは外装にカーボンをまとい、シリーズ初となるコンポジットバンドを採用。フロッグマンに新鮮なルックスを与えるとともに、実用性も向上させている。

三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura
竹石祐三:取材・文 Text by Yuzo Takeishi


フロッグマン初採用のコンポジットバンドが高めたユーティリティー

 1993年に登場したG-SHOCK初のダイバーズモデル「フロッグマン DW-6300」は、ISOに準拠した200mの潜水用防水性能を備えるのみならず、海中でのアクティビティーでも手首の動きを妨げない左右非対称フォルムを採用し、以後、30年近くにわたってダイバーのニーズに応える時計を展開し続けてきた。

 この間、フロッグマンに対してはユーザーから多くの意見が寄せられ、それを基に製品のアップデートを行ってきたが、なかでも当初から目立っていたのが「尾錠を用いた一般的なバンドでは、ダイビングで着脱する際に時計を落としてしまう」というコメント。海から上がった際にバンドを緩めようとすると、濡れた手から時計が滑り落ちてしまう事例が数多くあるのだという。

GWF-A1000XC

(上)GWF-A1000XC
「プリクレグ」と呼ばれるカーボン繊維シートを丸めて立体化させたパーツを中ゴマに使用。表面には綾目の見えるカーボンシートを巻くことで、アクセントを持たせている。
(下)GWF-A1000C
「GWF-A1000C」の中ゴマに用いられているのはファインレジン。こちらも軽量かつ耐久性に優れている素材で、パーツ表面にはピラミッド型の凹凸を施した。

 これを改善すべく、緩めても手首から時計が落下しにくくなるブレスレットタイプのバンドを採用する構想は以前から挙がっていた。しかし当時は樹脂の種類が少なかったため、金属を使う以外に選択の余地はなく、とはいえ本体サイズの大きいフロッグマンに金属製のバンドを装着すると重量バランスが悪くなることから、結果としてこの構想は不採用になったという。そのためフロッグマンでは長らく、一般的な樹脂バンドで対応してきたが、やがて数々の強化樹脂が登場して素材の選択肢が増え、さらに樹脂の技術革新も進んだことから、「ダイバーが時計を落とさないための構成」を着眼点とした企画が始動。ついに2021年、フロッグマンで初めてコンポジットバンドを装備した「GWF-A1000XC」と「GWF-A1000C」の2モデルが完成した。

小島一泰

カシオ計算機入社後に初代モデルの「DW-6300」に携わり、その後はG-SHOCK、BABY-G、プロトレック、SHEENのデザインを担当した小島一泰氏。「1990年代当時にダイバーの意見を耳にしていたこともあり、今回のコンポジットバンドの実現は感慨深い」と言う。

 新たに製作されたコンポジットバンドの特徴は、外側のHゴマにステンレススティールの芯材を封入したウレタンを使用し、中ゴマにはカーボン強化樹脂またはファインレジンを用いたハイブリッド仕様。特筆すべきは、中ゴマの構造だ。特に「GWF-A1000XC」で採用したのは、カーボン繊維にあらかじめ樹脂を含浸させた「プリクレグ」(CFUD)と呼ばれる素材で、一方向の強度に優れるシート状になっている。これをラップフィルムやアルミホイールのように巻き上げて立体化させたものを中ゴマに使用することで、縦方向の強度に加え、耐圧や折り曲げ、引っ張り強度も確保。さらに素材特有の模様がないプリクレグのウィークポイントを解消するべく、中ゴマの外周に平織りのカーボンシートを巻くことで見栄えにも配慮した。

新開発されたコンポジットバンドの構造。グリーンで表示されている外側のHゴマはウレタン製となっており、内部には耐久性を確保するためのステンレススティール製インサートパーツが用いられる。

 一方「GWF-A1000C」の中ゴマに使用されているファインレジンだが、こちらの素材は医療用人工歯などにも利用されている事実が示すように、生体親和性が高いことから時計で使用するのに適しているという。ただし、成型するうえでは、一般的な樹脂とは収縮率が異なるので専用の金型が必要になり、さらに成形機のチューニングも行わなくてはいけないなど、製造工程においてはさまざまな試行錯誤があったという。企画を担当した小島一泰氏は次のように説明する。「一般的な工業製品用の素材とは異なり、医療用樹脂はやはり特殊。カシオで使っている樹脂はかなり特殊なものが多く、こうした機能性樹脂を扱えば扱うほど、金型の技術も含めて細かな見直しが必要になってくる」。

「GWF-A1000XC」の中ゴマ。断面を見ると、カーボン繊維シートが丸められていることが分かる。一方でパーツ単体では見栄えしないため、加飾性が必要だったことも理解できる。

 また、ウエットスーツの上に装着したいといったダイバーの声を受けて、このモデルではバックルの仕様も変更している。バンドの長さを簡単に調整できるダブルアジャストバックルはこれまでにも採用されてきたが、中ゴマの開閉によって13mm分の伸縮が行えるエクステンション機構には新たにボールプランジャーを取り入れ、開閉を繰り返しても劣化しないように改善。さらにバックルの内側にはギアによって18mmの伸縮ができるフリーアジャスト機構を装備しているが、ここに使用されているプレート材には突起を設けてねじれに対する強度を高めるなど、耐久性の向上を図っている。

ファインレジンを使用した「GWF-A1000C」の中ゴマ。こちらも、パーツの外側にはピラミッド型の意匠を施したシートを貼り合わせ、加飾性を持たせている。

「GWF-A1000XC」の中ゴマ内部層には、一定方向の強度に優れるプリクレグを円筒状に巻き、立体プレス成型したパーツを使用。外観層には綾目のカーボンシートを採用しているが、これも巻くだけではなく、樹脂を含浸させて再び磨く、手間の掛かる工程によって作られている。

 こうして完成したコンポジットバンドは、緩めた際に時計を落としてしまう不安を解消していることはもちろんのこと、圧倒的な軽さと滑らかに動くコマを採用したことで快適な装着感を実現。しかもバンド本体に加え、バックル部分の耐久性も向上させてダイビング時にも安心して着用できるクォリティを確保している。「MASTER OF G」に求められる機能性と装着感を両立させた、革新的なバンドと言えよう。

開くことによって13mm分伸張する中ゴマのエクステンション機構。写真中央に見える白い球体部分が新しく採用されたボールプランジャーで、この金属球が内部のバネによって稼働することで、使っていくうちにバックルが開いてしまったり、凸部が削れてしまったりするような劣化を防ぐ。

18mmの伸縮を行うことができるフリーアジャスト機構を装備したバックルの内側。従来、プレート部分はスライドさせるために穴を開けていたが強度が低かったため、新たに突起(ビード)を設けて耐久性を向上させた。