ファーストモデルから引き継がれるデザイン ジラール・ペルゴ「ロレアート 42mm」

FEATURE本誌記事
2021.12.11

ファーストモデルは1975年と、ラグジュアリースポーツウォッチの中でも長い歴史を持つロレアート。その最大の強みは、薄いケースをより薄く見せつつも、立体感も損なわない優れたデザインにある。

ジラール・ペルゴ「ロレアート 42mm」

ジラール・ペルゴ「ロレアート 42mm」
1975年に発表されたファーストモデルのデザインを色濃く残す現行モデル。今回インプレッションに着用したロレアートはケース径42mmのモデルで、ほかに45mm、38mm、34mm径がラインナップされる。自動巻き(Cal.GP01800)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約54時間。SS(直径42mm)。100m防水。141万9000円(税込み)。
吉江正倫:写真 Photographs by Masanori Yoshie
細田雄人(本誌):文 Text by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2021年11月号掲載記事]


ラグジュアリースポーツウォッチのお手本とも言えるデザイン

ジラール・ペルゴ「ロレアート 42mm」

ロレアートのアイコンとなった八角形のベゼル。イタリア・フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の天蓋がモチーフとされる。この特徴的な意匠はイタリア人建築家によってデザインされた。

 近年、各社がこぞって参入しているラグジュアリースポーツウォッチというジャンル。そんな盛り上がりの中で、静かに再評価の兆しを見せているのがジラール・ペルゴの「ロレアート」だ。第4世代にあたる現行品が限定モデルとして復活した2016年、およびレギュラー化された17年時点では「知る人ぞ知る」といった印象が拭えなかったが、それも今は過去の話。今回は時計愛好家の中で支持を得つつある「ロレアート42㎜」を実際に着用し、クロノス日本版のラグジュアリースポーツウォッチに求める条件に沿って評価していきたい。

 まずは「ポリッシュとサテンによる異なる仕上げのコンビネーション」という項目から見ていこう。もともと薄いミドルケースの面にサテン仕上げを施しながら、その稜線にポリッシュのラインを入れることでより薄さを強調するロレアートの〝魅せ方〞は、まさにラグジュアリースポーツウォッチのお手本だ。そんなケースの上に八角形ベゼルを載せているため、適度な立体感も持つ。はっきり言ってデザインは一級だ。また、ケースは薄型化のためスクリューバックではなくネジ留めだが、しっかりと「100m防水」をクリアしている。

ジラール・ペルゴ「ロレアート 42mm」

こちらもファーストモデルから引き継がれるクル・ド・パリ。手動彫りではなくプレス加工によって成形されるが、写真まで拡大してもしっかりと面が立っていることが分かる。

 次に見たいのが「優れた装着感」という評価軸だ。ケース自体は薄く、一体型ブレスレットもほどよくしなるため、基本的には良好である。ただしヘッドが少し重く、ベゼルによって重心も高くなるため、若干振られる傾向がある点も否めない。同価格帯のコンペティターと決定的な差を付けたいのならば、ブレスレットにもう少し剛性感を持たせる必要があるだろう。なお、ブレスレットのコマ調整は「ネジ留め式」が採用されている。価格を考えれば当然かもしれないが、ちゃんと評価したいポイントだ。

ジラール・ペルゴ「ロレアート 42mm」

一体型のブレスレットはコマの面にサテン仕上げを与えつつ、ケースと同様、稜線にはポリッシュを与えることで、よりシャープなデザインに見せている。また各リンクはポリッシュ仕上げだ。なお、ロレアートのケースおよびベゼルとブレスレットに使用されるステンレススティールは、クロノグラフでは904Lだが、3針モデルは316Lだ。

「十分な蓄光塗料」に関しては文句なしだ。時分針、インデックス共にしっかりと塗布されており、暗所での視認性も問題ない。ただ、強い光源下ではポリッシュでしっかりと磨かれた3針やインデックスが強く光を反射するため、若干チラつく傾向にある。

 最後は「フリースプラングテンプの採用」に関して。こちらはエタクロン風の緩急針が使用されており、今回ロレアートを着用して唯一残念だった点だ。ケースが薄型のため、スポーティーを謳うのであれば耐衝撃性能を考慮してフリースプラングを採用して欲しい、というのが正直なところだ。

Cal.GP01800

ロレアート 42mmに搭載されるムーブメントは長年にわたって熟成されたCal.GP01800。フリースプラングテンプこそ採用していないが、高級機らしい仕上げを持つ。見応え十分だ。

 今回は各項目に則して評価したため、要項を満たさない部分に対しては辛口だったが、時計において最も重要なのはパッケージングである。テンプがフリースプラングではなくても、薄くて装着感が良好で、ラグジュアリースポーツウォッチとして完成されたデザインを持っていれば、時計としては魅力的だ。そのうえロレアートは、初登場から40年以上にわたって守り続けてきた八角形ベゼルという強力なアイコンまである。手にしたときの満足感が高く、ラグジュアリースポーツウォッチとしてのデザインコードをしっかりと押さえているロレアートが、入手困難モデルばかりが目立つこのジャンルの市場において、支持を集めるのは当然だ。



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