オーデマ ピゲ、銀座の中心にそびえるメンテナンスの牙城

FEATURE本誌記事
2022.06.04

オーデマ ピゲ ジャパンの設立と同時に発足したカスタマーサービス部門。東京近郊ではイーストエリアが一大集積地として著名だが、オーデマ ピゲの場合は、銀座ブティックにテクニカルエリアが併設されている。日本での市場規模が拡大するにつれ、年間の受注本数も増加傾向にあり、ウォッチメーカーのトレーニングや、ホスピタリティの充実にも力を割いている。
理想の修理の現場とは何か? その最適解のひとつがここだ。

オーデマ ピゲ カスタマーサービス

Photographs by Yu Mitamura
Edited & Text by Hiroyuki Suzuki
[クロノス日本版 2022年7月号掲載記事]

 東京近郊での腕時計産業は、隅田川周辺のイーストエリアを中心に発展を遂げてきた。現在でもこの地域は、都内におけるサービスセンターやサプライヤーの一大集積地となっている。そうした中で異彩を放つのがオーデマ ピゲだ。同社現地法人であるオーデマ ピゲジャパンのカスタマーサービス(以下CS)が設けられているのは、銀座ブティックと同じ建物内。ビルの2階はCS部門への専用エントランスとなっており、ストラップ専用サロンが併設されている。ロイヤル オーク、ロイヤル オーク オフショア、そしてCODE11・59バイオーデマ ピゲの交換用ストラップが常時用意され、落ち着いた雰囲気の中でフィッティングを愉しむことができる。

銀座ブティックの2階、カスタマーサービスのエントランスに併設されたストラップサロン。ロイヤル オーク、ロイヤル オーク オフショア、CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲの各種ストラップが揃うほか、オーダーも可能。

 ブティック併設のカスタマーサービスと言えば多くは窓口機能のみで、CS部門の本体は別に設けられることが多い。しかし同社のウォッチメーカーたちは、銀座のど真ん中でその腕を振るっている。ワークベンチが14台、在籍するウォッチメーカーは15名前後で、7日間のシフト制を設けている。決して大きな規模ではないが、日本市場へのデリバリー分の入荷時検品や、年間3500〜4000本に達するという修理品への対応をこなしている。日本での市場規模が大きくなるにつれ、オーバーホールなどの受注数も増加傾向にあるようで、実際は猫の手も借りたいというのが実情だろう。しかし、CSに勤務するウォッチメーカーに話を聞くと、職場環境は思いのほか良いようだ。

15名前後のウォッチメーカーが在籍するオーデマ ピゲ ジャパンのCS部門。テクニカルアドバイザーからウォッチメーカーに転向した中林涼さん(左)は、同社内でも比較的若いスタッフのひとり。ビギナーとしてシンガポールでのロングタームトレーニングに参加し、今年4月に帰国した。入社8年目の熊倉翼さん(右)は、3人目の出産時に、男性では珍しい育休を取得。2021年からはフレックスタイム制も導入された。

 ヒコ・みづのを卒業後、オーデマ ピゲジャパンに入社した中林涼さんは、テクニカルアドバイザーを4年間務めた後、本格的な修理の道を志したという。その際に彼は、2021年2月から1年以上にわたってアジアのトレーニングセンター(シンガポール)で研修を受けた。オーデマ ピゲのトレーニングセンターはヨーロッパ(スイス)、アメリカ、アジアの3拠点があり、ウォッチメーカーは扱えるキャリバーの数によるライセンス制度でランク分けがされているが、彼はビギナーであるにもかかわらず、日本人として初めてロングタームトレーニングを受講したウォッチメーカーとなった。

(左)オーバーホールや修理上がり時の検品内容は、目視チェックの他、撮影記録された資料として保管される。静止画に加えて、ターンテーブルを用いた動画も撮影される。
(右)銀座ブティックと同じ建物内に併設されたCS部門。ワークベンチ14台が備えられ、7日間のシフト制でフル稼働中だ。外装のポリッシングなどを行う工作室や、防水検査器、洗浄機などの設備も備えられている。

 入社8年目の熊倉翼さんは、男性としては珍しく、育休制度が適用されたウォッチメーカーだ。3カ月ほど修理の現場を離れ、復帰後は腕がなまっているだろうからと、ひとつひとつチェックを重ねながら、腕を磨いているという。21年から導入されたフレックスタイム制を利用して、朝早くに出勤して、15時30分頃に帰るというのが熊倉さんのローテーション。10時〜14時はコアタイムだが、7時から20時頃までの間で勤務時間も自由になるという。なおオーデマ ピゲ ジャパンでは、経験豊富なウォッチメーカーを募集しているので、興味のある方は採用担当まで。

(左)CSの2階エントランスに併設された、ストラップサロンの展示。修理内容の相談も落ち着いた雰囲気の中で行える。21年11月には、LINEの公式アカウントによるリモートサービスも導入された。
(右)修理後のQCや、入荷時の検品では、針位置を基準とした精度チェックが併用される。C.O.S.C.やジュネーブシールの検査時と同様の手法だ。

 現在CSに持ち込まれる時計の6割は外部受注だが、銀座に直接相談に訪れる顧客や、21年11月から導入されたLINE公式アカウントの利用も増えている。持ち込みが難しい場合でも、リモートで直接CSスタッフとコミュニケーションが取れるのも嬉しい。ピックアップサービスを用いて発送する際には専用のパッキングも用意されている。

時計と付き合うために欠かせないCSの充実。その理想のひとつがここにある。


カスタマーサービス専用 LINE公式アカウント

友だち追加用URL https://lin.ee/mctXlQf
営業時間 11:30~19:30

AP LINE公式アカウント

Contact info: オーデマ ピゲ カスタマーサービス TEL.03-6830-0789
[人事・採用担当] APJP.HR@audemarspiguet.com


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