カシオ G-SHOCK 初代モデルを継承するMR-Gの第2弾「MRG-B5000BA」が魅せる静謐な力強さ

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2022.06.14

フルメタルORIGINの最高峰を支える日本発の先進素材

 ORIGINを極めるために、もう一方でカシオが追求したのが外装素材だ。従来のフルメタルORIGINは、ステンレススティールまたはチタンで構成されていたが、MRG-B5000では優れた耐傷性を持つ素材を厳選。最高峰シリーズにふさわしい美観を実現するのみならず、その上質な外装をいつまでも楽しめるように仕上げている。

MRG-B5000では、それぞれの素材が持つ特性や加工性を見極め、最も適したパーツに振り分けている。上段左のトップベゼルには最も耐傷性の高いコバリオン、上段中のセンターケースや右のケースバック、下段右のバックルには64チタン合金、そして下段左のブレスレットのコマには加工性に優れたDAT55Gがそれぞれ使われている。

 MRG-B5000のベースとなっている素材は、G-SHOCKの他モデルでも頻繁に使われている64チタン合金。これに加え、トップベゼルにはコバリオン、ブレスレットのコマにはDAT55Gをそれぞれ採用している。そのコバリオンとDAT55Gに共通するのは、いずれも日本で開発された先進素材である点。MR-Gではこれまでにも、武具・甲冑にインスパイアされたモデルを展開してきたが、MRG-B5000もまた、素材によって“日本発”であることを強くアピールしているのだ。

 そのひとつであるコバリオンは、東北大学の千葉晶彦教授が医療用途に開発した素材。アレルギーフリーで人体に優しく、硬度は純チタンの約4倍。しかも、表面を研磨するとプレシャスメタルのような輝きを放つ特性を持つ。そのため、当初は主に人工関節を製作する目的で開発されたが、現在ではアクセサリーなどにも用途を拡大。時計の外装素材としても実に魅力的だが、半面、その重さはステンレススティールとほぼ同等であるため、装着感も高めたいカシオとしては、すべての外装パーツをコバリオンで製作することはできない。結果、ディスプレイを保護しつつ、それでいて美観の要ともなるトップベゼルにのみコバリオンを採用することとなった。

純チタンの約4倍の硬度を持ち、さらには研磨することでプラチナと同様の輝きを放つコバリオン。トップベゼルに用いることで、ディスプレイを保護するのみならず、艶やかな外観を強調する役割も担っている。

 一方のDAT55Gは、日本の特殊鋼メーカーである大同特殊鋼が生み出したチタン合金。もとはゴルフクラブのヘッド用として、より遠く、より真っ直ぐにボールを飛ばしたいという世の中のニーズに応えるべく開発され、2001年には製品化も果たした素材だ。数年後にゴルフクラブの仕様に規制がかかったことで、DAT55Gの需要はトーンダウンしていくが、そのタイミングでカシオが注目し、G-SHOCKに採用されることになる。

ブレスレットのコマに使用しているのは、大同特殊鋼が開発したチタン合金DAT55G。熱処理を加える前段階では比較的軟らかいため、コマをつなぐためのピン穴を開けるなど、細かな加工を施しやすかったという。

 DAT55G最大の特徴は他のチタン合金にはないユニークな特性。ベースの素材は比較的軟らかく、複雑な形状にも加工しやすいが、加工後に熱処理を行うと純チタンの約3倍もの硬さになるのだという。MRG-B5000の設計段階において、カシオはブレスレットにも64チタン合金を使う予定だったが、この素材ではコマ同士をつなぐための微細なピン穴を開けることができない。また、熱処理によって硬質になるものの、一定以上の温度を加えると組成が変わり、硬さが維持できなくなるデメリットも。こうした特性を総合し、加工性に優れながらも硬さを持たせられるDAT55Gをブレスレットのコマに、加工性は劣るが熱に強い64チタン合金をセンターケースやカバーパーツに用いる素材構成となった。適材適所の素材配置によって、MRG-B5000はORIGINの造形を踏襲しながらも、より強靭な外装を手に入れたのである。


ブルーのアクセントカラーが表現する“静かなる強さ”

 耐傷性に優れた先進素材の採用とケースカバーを細分化する構造を考案したことで、カシオでは当初からMRG-B5000のバリエーション展開が可能になると考えていたという。カラー展開にも意味やストーリー性を持たせてきたMR-Gであるだけに当然、MRG-B5000にもこうした要素が求められたが、新色を追加するうえで再考したのは「最高峰のORIGINに適したカラーとは何か?」という、ごくシンプルな内容だった。

 そもそも初代G-SHOCKのデザインを継承したORIGINは、アナログ式の時刻表示を取り入れたMR-Gに比べるとシンプルな外装デザインだ。一例を挙げると、2021年に発売された「MRG-B2000B」、通称“勝色(かちいろ)”は、マッシブなプロポーションや複雑な造形のベゼルを採用した、まさに甲冑を想起させる佇まいであり、ORIGINにはない猛々しさが感じられる。つまり、G-SHOCKは“タフさ”や“強さ”といった共通のテーマを携えながら、その“強さ”を表現するデザインは、モデルやシリーズによって少しずつ異なっているというわけだ。

ORIGINとは方向性が異なる、猛々しさを押し出したモデルのひとつが、2021年発売の「MRG-B2000B-1AJR」(右)。日本の伝統色のひとつである“勝色”を用い、その勇猛なプロポーションと相まって、まさに戦国時代の甲冑を思わせるルックスに。ケースやバンドには深層効果処理とDLC処理を組み合わせたチタンを使い、耐傷性も確保している。タフソーラー。フル充電時約26カ月(パワーセーブ時)。Ti(縦54.7×横49.8mm)。20気圧防水。33万円(税込み)。

 では、方向性の違う強さの表現とは何か──この自問に対してカシオがたどり着いた答えが、“禅”のイメージだ。余分なエレメントを削ぎ落とし、G-SHOCKの本質である耐衝撃性能をシンプルに突き詰めるORIGINは、自分自身と静かに向き合いながら精神的な強さを鍛錬する禅に通じるものがある。このイメージをORIGINで表現すべく取り入れたのが、前述した“青墨”であり、心を癒す力があると言われるこのカラーを用いたことで、猛々しさを前面に押し出したMR-Gとは違う、“静かなる強さ”を表現したのである。

 しかも、従来のフルメタルORIGINであれば、ベゼルやブレスレット(またはコマのひとつひとつ)にカラーIPを施したり、レーザーでパターンを刻んだりするデザインだったが、MRG-B5000はパーツを細分化したことで、ポイントでの配色が可能に。実際、「MRG-B5000BA」では文字板の外周には蒸着、ケース四隅の凹部とブレスレットに打ち込まれたビスにはIP加工を用いながらブルーに着色。DLC加工を施したブラックケース&ブレスレットと、控えめに輝くブルーとのコンビネーションは、たしかに静謐な雰囲気のなかにも強さを感じさせる色使いで、これまでのG-SHOCKには見られなかった表情を生み出している。

文字盤の外周は蒸着によってブルーを配色。一方、ベゼル四隅の板バネを配したパーツとブレスレットに施されたビスにはブルーIP加工が用いられている。ブラックを基調としながらブルーを差し色にすることで、ジャケットスタイルでも着用しやすい、落ち着いた雰囲気になっている。

 日本が生み出した先進素材の採用に加え、“青墨”のテーマを設けたことで、カラーバリエーションのひとつに収まらない、明確なコンセプトをも発信するモデルとなった「MRG-B5000BA」。それは、最高峰のフルメタルORIGINを作り上げようと、新構造の採用や素材選びに注力したからこそ完成したモデルであり、新たなカラー表現は、今後のMR-Gにおけるデザインの広がりをも予感させるものである。



Contact info: カシオ計算機お客様相談室 Tel.03-5334-4869

【ブランド公式サイトでMRG-B5000BAを見る】
https://www.casio.com/jp/watches/gshock/product.MRG-B5000BA-1/


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