ジェラルド・ジェンタやカール・ラガーフェルドが愛用した「ロイヤル オーク」のオークション結果を追う

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2022.06.14

オーデマ ピゲの名機ロイヤル オークは2022年で誕生から50周年を迎えた。これを記念して多くのオークションハウスがロイヤル オークに特化したテーマを展開している。

今回は2022年5月にフィリップスとサザビーズで行われたオークションに注目し、伝説のデザイナーであるカール・ラガーフェルド、そしてロイヤル オークの生みの親であるジェラルド・ジェンタ本人が愛用した、それぞれのロイヤル オークの行方を追った。

Originally published on Montres de luxe
2022年6月14日掲載記事

「ファッションの皇帝」と呼ばれたデザイナー、カール・ラガーフェルドが愛用したロイヤル オーク

 2022年5月6日に「ロイヤル オーク50周年 ジュネーブオークション」を行ったフィリップスの目玉商品は、カール・ラガーフェルドが所有したロイヤル オークとなった。ブラックPVDが施された特別なRef.5402STは、93万7500スイスフランで落札された。

「ファッションの皇帝」と呼ばれたカール・ラガーフェルドといえばシャネルやフェンディ、自分の名前を冠したカール・ラガーフェルドなど数々の高級ブランドのデザインを手掛けたドイツ出身のデザイナーである。2019年2月に85歳で他界した。

Ref.5402ST

フィリップスにおいて93万7500スイスフランで落札された、故カール・ラガーフェルドが愛用したとされるブラックPVDコーティング仕様のロイヤル オーク。Ref.5402ST。自動巻き(Cal.2121)。36石。SS(直径39mm)。1973年製。

 2011年に発刊された装飾雑誌『AD』のインタビュー(103号)で、カール・ラガーフェルドはお気に入りのアイテムのひとつにロイヤル オークを挙げている。「あなたにとってのお気に入りのアイテムは何ですか?」という質問に対して、カール・ラガーフェルドはドイツ語のアクセントを付けながら次のように答えた。「物に対する執着はない。(中略)しかし例えば1974年から30年来愛用している腕時計にオーデマ ピゲのロイヤル オークがある」。

 このロイヤル オーク(Ref.5402ST)は、ケースもブレスレットもブラックPVDが施されたものである。しかし当時のオーデマ ピゲのカタログに、カール・ラガーフェルド愛用のモデルは掲載がない。そのためこれは購入後に、おそらくイタリアで手が加えられたものだろうと考えられている。オーデマ ピゲの初めてのブラック・ロイヤル オークは、2017年以降でしか公式には発表されていない。

Ref.5402ST

ロイヤル オーク(Ref.5402ST)を着用するカール・ラガーフェルド。

 この時計の来歴については、ほとんど知られていない。カール・ラガーフェルドによると1974年から所有しているとのことだ。ロイヤル オークの誕生は1972年。当時としては非常に前衛的だったこのモデルに、カール・ラガーフェルドはいち早く魅了されていたのである。

 もうひとつ特筆したいのは、当時ブラックの時計は一般的ではなかったということである。おそらくポルシェデザインがクロノグラフをブラックで手掛けていた程度だろう。そのため、カール・ラガーフェルドは時計業界における将来のトレンドを2重に先取りしていたのである。

 多くの写真で、カール・ラガーフェルドがこのモデルを着用している姿を見ることができる。イタリアの自動車会社フィアットの創業者ジョヴァンニ・アニェッリのようにシャツの袖口に着けていることもあった。

Ref.5402ST

カール・ラガーフェルドが愛用したRef.5402STのケースバック。

 カール・ラガーフェルドは2002年にロイヤル オークについてこうも話していた。「名機ロイヤル オークを発表から間もなく購入した。それ以来手首を離れたことはない。他の時計を収集したこともあったが、愛する、長いあいだ分かたれたことのないロイヤル オークにいつも立ち戻った」。


ジェラルド・ジェンタが愛用したロイヤル オーク "ジャンボ"

 2022年5月10日に「インポータント ウォッチ」を開催したサザビーズでは、ロイヤル オークの生みの親、故ジェラルド・ジェンタの私物のロイヤル オーク "ジャンボ"が出品された。真に特別なこのモデルは、210万7000スイスフランで落札された。

Ref.5402

サザビーズにおいて210万7000スイスフランで落札された、故ジェラルド・ジェンタの私物ロイヤル オーク "ジャンボ"。Ref.5402。自動巻き(Cal.2121)。36石。SS(直径39mm)。1978年製。

 2011年8月にジェラルド・ジェンタが世を去ってから間もなく11年。2022年にロイヤル オークが50周年を迎えるにあたり、ジェラルド・ジェンタの妻イヴリンら家族は、ジェンタに関する作品を何点か出品した。そこにはジェンタの美しい水彩画なども含まれている。ジェンタに関するテーマごとのオークションはサザビーズの舵取りのもと2022年2月にジュネーブ、2022年4月には香港と続き、その後ジュネーブへと戻った。

 そして今回の(交換済みの)タペストリー文字盤、自動巻きキャリバー2121、オリジナルのブレスレットを備えた「歴史的」ロイヤル オークRef.5402の出品へと至った。ボックスと保証書は付属しない。

Ref.5402

ジェラルド・ジェンタの私物の「特別な」ロイヤル オーク "ジャンボ"のケースバック側。

 本機は1978年製のステンレススティールモデルで、イエローゴールドのベゼルが目を引く。興味深いのは、ジェンタ自身が自分の工房でこのベゼルを作らせたと推察されることである。通常ツートンのロイヤル オークは、ベゼルだけでなくリュウズやブレスレットのセンターリンクにもゴールドを使用するが、これはベゼルのみが貴金属で作られているのだ。

 イヴリン・ジェンタは次のように述べている。「ジェラルド・ジェンタのロイヤル オークは、彼の最も象徴的な腕時計のひとつであり、この時計の真の価値が分かる人の元にしか行かない特別な作品でもあります」。


【漫画】"解決"という"革新"を目指すオーデマ ピゲ

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2022年 オーデマ ピゲの新作まとめ

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オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク」50周年の革新(1972-2022)

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