オリスとドイツ版クロノスのコラボモデル「ダイバーズ 65 キャリバー400 クロノス リミテッドエディション」着用レビュー

FEATUREWatchTime
2022.08.02

オリスとドイツ版クロノスのコラボレーションモデル「ダイバーズ 65 キャリバー400 クロノス リミテッドエディション」が2022年に発表された。デイト表示を省き、すっきりとしたデザインのアイスブルーダイアルが特徴で、生産数は世界でわずか200本のみである。このモデルの着用レビューをお届けする。

Originally published on watchtime.com
Text by Roger Ruegger
2022年8月2日掲載記事

ダイバーズ 65 キャリバー400 クロノス リミテッドエディション

「ダイバーズ 65 キャリバー400 クロノス リミテッドエディション」。自動巻き(cal.Oris 400)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。SS(直径38mm)。10気圧防水。45万1000円(税込み)。世界限定200本。

サイズ、重量配分、コンパクトなプロポーションによるバランスがもたらす優れた装着感

 2015年の発表以来、「ダイバーズ 65」はオリスのダイバーズウォッチの中でも独立したコレクションとして進化を遂げてきた。現在では4種類の異なるケースサイズ(38mm、40mm、42mm、43mm)、ブロンズとステンレススティールのケースとブレスレット、クロノグラフ仕様、そして4種類のムーブメント(SW200-1/510、Oris 400/401)を含む40の選択肢が用意されている。ダイバーズ 65はすぐに成功を見たが、本格的にブレイクしたのは1年後に限定2000本で発表されたブロンズ製のカール・ブラシア エディションがきっかけだった。すぐに完売となったこのモデルはコレクターたちの認知度を高めただけでなく、通常モデルにはアルミニウムインサートによるダイビングスケールが配されているのに対し、レリーフのダイビングスケールが導入された初めてのモデルであった。

 その後、カール・ブラシア財団とのパートナーシップは、2017、2018年のダイバーズ 65のクロノグラフモデルへの道を切り開くと共に、直径40mmのブロンズケースと6時位置のスモールセコンドを備えた3本目のカール・ブラシア リミテッドエディションで、キャリバー401導入へとつながったのだった。またオリスは2020年のヘルシュタイン エディションで、重厚なブロンズ製ブレスレットをいち早く導入した時計ブランドともなっている。従来レリーフのベゼルはブロンズ製のカール・ブラシア エディションにのみ用いられてきた。しかしダイバーズ 65として初めてステンレススティールモデルに導入されたのが、今回紹介する2022年発表の「ダイバーズ 65 キャリバー400 クロノス リミテッドエディション」である。

Oris 400

トランスパレントバックから鑑賞可能なキャリバー400。

 さらに重要なのは、このモデルが自社製キャリバー400を搭載した3本目のダイバーズ 65であるということだ。限定数は世界でわずか200本のみである。

スーパールミノバ(BG W9)を塗布したインデックスと針。

 これまでダイバーズ 65には基本的にマット仕上げの文字盤が採用されてきたのに対し、「ダイバーズ 65 キャリバー400 クロノス リミテッドエディション」には、デイト表示を省き、サンバースト仕上げとグラデーションカラーを施したアイスブルーの文字盤が採用されている。レリーフベゼルやアプライドのアワーマーカーを備えたことにより、これまでのコレクションの中で最もエレガントなモデルに仕上がっている。

ダイバーズ 65 キャリバー400 クロノス リミテッドエディション

直径38mmのケースサイズにすっきりとしたデザインを組み合わせている。

 搭載されるキャリバー400は2020年に「アクイス」コレクションで導入された、オリスが独自に開発したもの(ただし生産は外部)である。開発の目的は「機械式自動巻きムーブメントの新基準」を打ち立てることであり、ダブルバレルや、シリコン製レバーとテンプを採用して約5日間(約120時間)のパワーリザーブと高い耐磁性を実現している。また10年のオーバーホール推奨期間、「MyOris登録」による10年の保証期間も充実する。ローターシステムも安定性向上がはかられ、ボールベアリングを取り除いて、低摩擦のスライドベアリングシステムに置き換えられている。これは金属製スタッドが潤滑スリーブ内で動く、シンプルで効率的かつ堅牢なシステムにより故障しにくいものだ。

 オリスは個々のムーブメントの精度において日差マイナス3秒からプラス5秒を目標としており、また30以上の非鉄金属製の耐磁性のあるパーツを採用している。この結果として、オリスの自社テストでは、2250ガウスの磁場にさらした後でもムーブメントの日差は10秒以内に抑えられた。なお最新のISO 764による耐磁性の基準は、200ガウスの磁場にさらされた後でも日差30秒以内の精度を保つことである。キャリバー400はその11倍の強さの磁場にさらされた後でも要求される日差の3分の1を実現したということだ。仕上げは工芸美に優れ、優美さよりも堅牢性と機能性に重きを置くブランドの思想を強調している。

ダイバーズ 65 キャリバー400 クロノス リミテッドエディション

大ぶりでつかみやすいリュウズを採用。

 キャリバー400はその設計上、時刻合わせの後などにリュウズを押し込むと、分針が針飛びを起こしやすい。オリスはこの状況を次のように説明している。「構造および歯の設計の精度により遊びが少ないため、その影響は他のキャリバーよりも顕著だ。ねじ込み式リュウズは、通常のリュウズよりもテンションがかかるため、現象をより強くすることがある。この現象を軽減するために、リュウズを前後に少し回してから引き出したり、押し込んだりすることを推奨する」。

ダイバーズ 65 キャリバー400 クロノス リミテッドエディション

ケースは100mの防水性能を備える。

「ダイバーズ」と名前に付くことから、より高い防水性能が想起されるかもしれないが、「ダイバーズ 65 キャリバー400 クロノス リミテッドエディション」の防水性能は100mだ。これは「ダイバーズ 65」の歴史や、ブランドのアクイスやアクイス プロなど他のコレクションとの差別化として解釈されるだろう。浅瀬での水泳やシュノーケリング程度であれば全く問題がない。ねじ込み式の大ぶりなリュウズの操作性は滑らかで、感触は完璧である。サファイアクリスタルの縁が高さのあるドーム型の曲面は、美しいと感じる人もいれば、文字盤のマークが歪んで見えて視認性を損ねると感じる人もおり、人それぞれの好みに分かれるだろう。

ダイバーズ 65 キャリバー400 クロノス リミテッドエディション

ブレスレットには微調整機能とクイックチェンジシステムを搭載。

 針のプロポーションは完璧に近く、デイト表示がないこともすっきりとしたデザインとして好感が持てる。そのサイズ、重量配分、コンパクトなプロポーションによるバランスは高い装着性をもたらすものだ。またヴィンテージ調の魅力を保ちつつ、よりエレガントな外観に仕上がっている。最新の自社製ムーブメントを搭載し、その結果定価が高くなっていることを考えると、微調整機能とクイックチェンジシステムを備えたリベット留めのブレスレットも最適な組み合わせだろうと思われる。「ダイバーズ 65 キャリバー400 クロノス リミテッドエディション」は、コレクションの未来を垣間見せてくれるものでもある。


【動画】オリス待望の自社製自動巻きムーブメントを映像で紹介!!

https://www.webchronos.net/features/59901/
オリスの歴史においてカギとなる25の出来事について

https://www.webchronos.net/features/26426/
2022年 オリスの新作まとめ

https://www.webchronos.net/features/78891/