大幅アップグレードの実力は? 刷新されたオメガの「デ・ヴィル プレステージ」をレビュー

FEATUREインプレッション
2022.12.20

2022年10月に刷新されたばかりの「デ・ヴィル プレステージ」コレクション。今回インプレッションを行ったのは、日付とスモールセコンド、そしてパワーリザーブを備えた「デ・ヴィル プレステージ コーアクシャル マスター クロノメーター パワーリザーブ 41mm」だ。シャンパンゴールドのダイアルとコンビケースが華やぐ、普段使いもできるバランスの良いドレスウォッチであった。

デ・ヴィル プレステージ コーアクシャル マスター クロノメーター パワーリザーブ 41mm

菅原茂:文
Text by Shigeru Sugawara
2022年12月20日掲載記事

まったく新しい、デ・ヴィル プレステージの完成度

「どうぞ、お好きに試着した感想を」との編集部からのオファーに、「よっしゃ!」と気軽に引き受けた今回インプレッション。お題はというと、オメガが10月に発表した「デ・ヴィル プレステージ」である。

 メディア向け内覧会の際に、大幅にアップグレードを果たした新しい第3世代モデルをベタほめしたことも記憶に新しいが、そのとき一番気に入ったのが「デ・ヴィル プレステージ パワーリザーブ スモールセコンド 41mm」というモデル。こちらからリクエストしたわけでもないのに、偶然お目当てのモデルが来た! これも何かのご縁だろう、さっそく数日間親しく付き合うことにした。

デ・ヴィル プレステージ コーアクシャル マスター クロノメーター パワーリザーブ 41mm

オメガ「デ・ヴィル プレステージ パワーリザーブ スモールセコンド 41mm」
自動巻き(Cal.8810)。35石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約55時間。SS×18Kセドナ™ゴールドケース(直径41mm、厚さ10.8mm)。30m防水。105万6000円(税込み)。

 この時計、名称の由来が面白い。「デ・ヴィル(De Ville)」という名称は、綴りと発音が悪魔の“devil”にそっくりだが、もちろんまったく関係ない。その意味は「都会の」というフランス語だ。なぜ「の」が付くのかというと、その起源となる時計のフルネームが「Seamaster de Ville」、つまり最初はドレッシーなデザインをまとい、都会的な雰囲気が漂う「都会のシーマスター」なのだった。

 このモデルはやがて、スポーツウォッチとしての個性を強化していく「シーマスター」から独立し、1967年から「デ・ヴィル」というコレクションになった。余談だが“De”のカタカナ書きについては原音に近い「ドゥ」も検討されたらしいが、ベタなローマ字式、つまり和製英語的で発音しやすい「デ」にしたと、ずいぶん前にかつての輸入代理店から聞いたことがあった。

 さて、本題。オメガを代表する都会派エレガンスウォッチとして有名な「デ・ヴィル」も、1994年の初代「デ・ヴィル プレステージ」から数えて第3世代に突入。デザインの一新と同時に、機能、素材、ダイアル、サイズなどの138種類の豊富なバリエーションも話題の的だが、機械式モデルがすべてマスタークロノメーターの認定を受け、性能面で大幅なアップグレードを図ったところが時計愛好家にとっては見逃せないポイントである。


キャリバー8810の精度には不満ナシ

 試着モデルの仕様を調べると、搭載ムーブメントのキャリバー8810は、コーアクシャル脱進機搭載の自動巻きムーブメントで、METAS認定のマスター クロノメーター、1万5000ガウス以上の耐磁性能、シリコン素材を用いたフリースプラングテンプとある。最先端にして、オメガ機械式モデルのもはや標準仕様だ。

ケースバック

ケースバックはトランスパレント仕様で、搭載するキャリバー8810を鑑賞できる。1万5000ガウス以上の磁気に耐える、普段使いにも頼もしい機械だ。

 METAS(スイス連邦計量・認定局)認定マスタークロノメーターの精度といえば、日差が0~+5秒という機械式では最高レベル。試着時に手巻きで完全巻き上げにし、いつものように卓上電波時計で時刻を合わせ、その後3日間着けたり外したりしながら観察してみたが、目視の限りでは目立った誤差は確認できなかった。もっともこのモデルの場合、スモールセコンドに秒目盛りはないので最初から無理なのだが……。

 新しいデ・ヴィル プレステージの機械式モデルの秒表示については、スモールセコンドとセンターセコンドの各タイプがあるが、好みとしては断然スモールセコンド。高精度を極めながらも、秒表示が目立たないようにスモールセコンドをデザインしているのは、意図してのことだろう。スイス最高の高性能と語るほど自信があるからこその演出だと思う。

  さらに、通常ならスモールセコンドを置くべき6時位置にオープンワークの意匠を凝らしたパワーリザーブを配置したことにも、秀逸なセンスを感じた。