A.ランゲ&ゾーネ/ダトグラフ

FEATUREアイコニックピースの肖像
2020.01.18

DATOGRAPH
ダブルスプリットの改良点を盛り込んで実用性を向上

ダトグラフ

ダトグラフ
2007〜08年頃から生産された“第3世代”。写真は2011年に販売された個体。作動レバー押さえバネが強化された反面、瞬間的に分積算計の表示を送るプレシジョン・ジャンピング・ミニッツ・カウンターからは、分積算車に噛み合う押さえバネが省略されている。いずれも、ダブルスプリットに準じた、実用性を高めるための改良である。L.951.1としては、この第3世代が最終型である。手巻き(Cal.L951.1)。40石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約36時間。Pt(直径39mm)。30m防水。個人蔵。

 ダトグラフの最終型が、2007〜08年頃から生産された「第3世代」である。市販最初期型(第2世代)との違いは主にムーブメント。04年発表のダブルスプリットに準じた小改良が施されている。変更点はわずかだが、実用性を考えると、作動ツメ押さえバネが強化され、プレシジョン・ジャンピング・ミニッツ・カウンターが改善された第3世代はお勧めだ。

 従来、それ以外の変更点はないと考えられてきたが、実は第2世代と第3世代では、わずかに仕上げや造形も異なっている。最も分かりやすい箇所はスモールセコンドだろう。全体的に印字の太かった第2世代に対して、第3世代のそれはわずかに細くなっている。また白い印字も、第3世代のほうがわずかに濃い。表面を荒らしたダイアルの仕上げも、第2世代と第3世代では異なっている。第2世代のマット仕上げ(おそらくスターン製)は、表面のざらつきがやや不均等であり、そのニュアンスはIWCの「パイロット・ウォッチ」に酷似している。対して第3世代以降のダイアルは主にヴォーシェ製である。表面のざらつきは細かく、しかも均一になった。また第3世代からは、文字盤外周のタキメーター表記が「METER」から「METERS」に改められている。わずかな違いだが、こういった点に注目すると、第2世代と第3世代は容易に見分けられるだろう。

 もっとも、インダイアルの印字が細いのにMETER表記のダイアル(しかも第3世代のムーブメントを載せている)や、METERS表記なのに印字が太い個体(これは第2世代のムーブメントを載せていた)も希にある。特に18KRGケースのモデルには、これらが混在しているものが多い。プラチナほど数を作らなかったためだろうか。そのためここで挙げた基準は、あくまでも目安のひとつと考えていただきたい。

(左上)ヴォーシェ(カドラン・エ・ファブリアージュ)製に変更されたダイアル。第2世代のものとは、ブラックのマット仕上げ、印字の濃さ、秒ダイアルの印字の太さ、METERS表記、そして6時位置のアプライドインデックスと、「30」の数字の間隔などが異なる。もっともこれはPtモデルに当てはまる区分で、18KPGモデルでは例外も多い。(右上)ダイアルの12時側。わずかな違いだが、ローマ数字のアプライドインデックスも、わずかに立体感を増しているのが分かる。(中)ケースサイド。旧モデルとの違いはない。ただし18KPGケースのモデルは、酸化しても金錆が出にくいように、側面はポリッシュ仕上げとされていた。(左下)いくつかの部品が変更されたL951.1。リュウズのそばに見える湾曲したバネが、第2世代と第3世代の大きな違いだ。加えて面取りを深くすることで、立体感も強調している。(右下)特徴的なラグ。A.ランゲ&ゾーネの復興に際して、ギュンター・ブリュームラインはとにかくラグの造形にこだわったという。当時、同社復興のプロジェクトに携わったハネス・パントリ(元IWC役員)曰く、「ブリュームラインは“こういう形が理想的だ”と言って、完成したプロトタイプのラグを自らヤスリで削り直した」とのこと。以降のA.ランゲ&ゾーネが、ボクシーなラグを決して改めない理由のひとつだ。