ブライトリング/エアロスペース

FEATUREアイコニックピースの肖像
2021.03.29

AEROSPACE EVO [Ref. 79363]
クロノメーター+バックライトを搭載する〝最新のエヴォ〟

エアロスペース エヴォ[Ref.E79363]
2013年初出。ケース径を拡大し、ベゼルの固定方法などを一新したモデル。ライダータブとベゼルの形状を見直した結果、シャツの袖にもひっかからない。ただしそのデザインは、好みが分かれるか。クォーツ(Cal.79)。7石。Ti(直径43mm)。100m防水。50万円

 2013年に発表されたエアロスペースの最新版が「エアロスペース エヴォ」。具体的には、05年発表の「エアロスペース アヴァンタージュ」から直径を拡大し、外装を改めたもの。100分の1秒〜最大48時間まで計測できるクロノグラフ、カウントダウンタイマー、第2時間帯表示、ミニッツリピーター、ナイトビジョンに対応するバックライト、アラームといった機能は同じである。なお外装の手直しは、現在のブライトリングの手法に準じたものだ。前作のアヴァンタージュと同様、ライダータブは回転ベゼルに統合。装着感を改善するため、ラグもいっそう曲げられている。また全面サテン仕上げにもかかわらず、ケースのエッジも残されている。〝独創的な形状〟のインデックスもブライトリングらしいものだ。

 強いて言えば、回転ベゼルの固定方法が変わったことが、アヴァンタージュ以前との違いか。1985年の第1作から、エアロスペースの回転ベゼルは、ケースのチムニー(煙突)に固定されていた。しかしエヴォ以降、回転ベゼルはチムニーに固定されるものの、覆い被さるような形状に改められた。理由は不明だが、おそらくチムニーが頑強になったためだろう。些細な変化だが、防塵性は大きく改善される。またケースの仕上げも、もう一段良くなった。サテン仕上げはより密になり、部品同士のチリ合わせも大変精密だ。

 今やプロ向けの機能性に加えて、高級時計らしい質感をも備えるエアロスペース。しかし改めて強調したい。ハイテククォーツで武装した最新機にもかかわらず、エアロスペースの基本設計は30年前からほぼ変わっていない。多機能デジアナというジャンルをスイスにも普及させたアーネスト・シュナイダー。電子工学の優れた専門家であり、アイデアマンでもあった彼は、プロダクトマネージャーとしても極めつきに優秀だったのである。

(左上)前モデルの「エアロスペース アヴァンタージュ」(後にエアロスペースに名称変更)に共通する、太いインデックス。エンボスではなくアプライドに変更された。当世流行のアプリック(=シール)ではなく、厚みのある金属製インデックスである。(右上)回転ベゼルと統合されたライダータブ。角が立っていないためシャツの袖を傷める心配はなさそうだ。しかし今までのタブより高さはあるため、指かかりは悪くない。実用性と操作性を考えた上手いモディファイだ。(中)一層エルゴノミックになったケース。裏ブタが厚くなった結果、時計の厚みはわずかに増した。しかしラグをさらに曲げることで、装着感を改善している。もっともラグを延ばして曲げた結果、時計の全長は伸びてしまった。(左下)MRPの技術力を示す、ケースバックの精密な刻印。加工しやすいチタン合金(通称64チタン、グレード5)ではなく、純チタンをここまで精密に加工できるサプライヤーはスイスでも珍しい。(右下)現行品らしい精密なブレスレット。時計の重量増加に伴い、ブレスレットやバックルも厚くなった。しかしまだデスクワークを邪魔しない程度に抑えられている。“机仕事でも使えるブライトリング”という現代的な美点は、このモデルでも不変だ。