ジン/103 Part.3

FEATUREアイコニックピースの肖像
2020.09.18

今や、世界的な知名度を誇るようになったジン特殊時計会社。しかし、そんな同社が腕時計クロノグラフの製造を始めたのは1960年代も後半になってからのことだった。ミリタリーユースを意識した防水ケース入りの「103」は、80年代後半以降、ジンを代表するモデルへと変貌を遂げる。

星武志:写真 Photographs by Takeshi Hoshi (estrellas)
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Special thanks to Michele Tripi (vintage-sinn-collector.de)
[クロノス日本版 2020年7月号初出]


103.B.SA.AUTO
細かな改良点を盛り込んだ現行モデル

103.B.SA.AUTO

103.B.SA.AUTO
1990年代半ば以降に完成した、新しいスタイルを持つ103の最新版。見た目はそれ以前と変わらないが、2018年6月10日以降は、Arドライテクノロジーが標準装備となった。自動巻き(ETA7750)。25石。2万8800振動/時。SS(直径41mm、厚さ17mm)。20気圧防水。41万円。

 1986年にリリースされた第3世代の103は、年々外装の完成度を高めてきた。その狙いは防水性能と実用性の強化である。SUG製ケースの採用も、103に限って言えば、質感向上よりも、性能向上のためという意味合いが強い。

 現在の103のベースとなったのは、96年に発表されたダイバーズクロノグラフ「203」である。リュウズガードを設け、プッシャーをねじ込み式に改めたこのモデルは、200mという驚異的な防水性能を誇っていた。103の定番モデルである「103B SA AUTO」は事実上、このモデルの兄弟機と言ってよいだろう。同じケースを使っているわけではないが、外観と仕様はほぼ同じである。明らかな違いはベゼルのみだ。

 もっとも、技術の進歩を受けて時計自体の完成度は大きく高まった。文字盤の印字は明瞭になり、リュウズのガタも抑えられたのである。103に質感を求める人は少ないだろうが、ケースの磨きも、SUG以前のモデルに比べて改善された。加えて言うと、トランスパレントバックからのぞくローターには、なんとジュネーブ仕上げも施されている。実用時計でありながらも、きちんとアップデートされたのが、現代のジンなのである。

 とはいえ、103のキャラクターは本質的なところで、なにひとつ変わっていない。ベゼルは交換しやすいアルミ製のままだし、針やインデックスは、視認性を重視した「タイプ20」スタイルのままだ。あえて角を立てないケースも、良い意味で103の個性である。

 現在、これよりも作りの良いクロノグラフを探すのは難しくない。同じジンの中でも、それは容易だろう。しかし、往年のクロノグラフのパッケージと思想を明確に踏襲したという点で、103に比肩するクロノグラフは多くないだろう。これこそ、世代を超えて語り継がれるアイコニックピースではないか。

103.B.SA.AUTO

(右)現在の103は、デイデイトが標準装備となっている。曜日表示はドイツ語が標準仕様だが、英語表記のモデルを本国オーダーすることも可能。時計メーカーとしての成熟を示すかのように、印字の質は非常に高い。(左)外ネジ式のリュウズと、ねじ込み式のプッシュボタンを持つケース。ジンの子会社であるSUG製である。SS+陽極酸化アルミ製の回転ベゼルは、スティール製のベゼルバネで固定されている。構造はシンプルだが、加工精度の高さを示すように、操作感はスムーズだ。

103.B.SA.AUTO

(中)ケースサイド。今やSUGは非常に質感の高いケースを作れるが、プロユース向けの103は、あえて「実用的」な仕上げになっている。ただし、写真が示す通り、鏡面仕上げの歪みは小さい。

103.B.SA.AUTO

(右)ラグの7時半位置には、湿気を吸収するドライカプセルが埋め込まれる。併せて、防水性の高いEDRパッキンと、プロテクトガスを充墳することで、時計を湿気から保護している。2018年6月10日以降は「Arドライテクノロジー」が標準装備となったが、ダイアル上にはあえて「Ar」の文字を印字していない。(左)103の一部モデルは、裏蓋がトランスパレントに改められた。衝撃が加わった際のダメージを減らすため、サファイアクリスタル製のカバーを、少し内側に固定している。



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