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広田雅将編集長のSIHH2019雑感①(1/1)

カルティエ「サントス デュモン」のスペックはこちら

Text by Masayuki Hirota(Chronos-Japan)

意外な伏兵、カルティエ「サントス デュモン」

 筆者はフツーの実用時計がかなり好きだ。「ヒロタさんの嗜好は分からない」としばしば言われるが、もともとサラリーマンなのだ。実用時計を好むのは仕方ないだろう。もちろん傑出した複雑時計も好きだが、自分にとって一層リアリティがあるのは、やはり実用時計なのである。2019年のSIHHでは、そんな筆者好みの時計をいくつも見ることができた。中でも惹かれたのは、カルティエの新作「サントス デュモン」である。

 かつてカルティエは、手の届く価格帯のクォーツ時計で一世を風靡した。「タンク フランセーズ」なんて、今もって優れた時計だと思っている。コストがかかっているわけではないが、時計としてのバランスが取れているし-時計とブレスレットのマッチングは秀逸だ-、何よりカッコいい。その路線を踏襲したのが、新しい「サントス デュモン」と言える。搭載するのは機械式ではなくてクォーツ式ムーブメント。しかし、バッテリーの寿命は約6年に延び、ケースは薄くなった。しかも、ケースの出来は今のカルティエらしく大変に良い。

 この時計で見るべきは、パッケージングのうまさだ。ベゼルを立体的に改め、ミドルケースを絞ることで、薄型にもかかわらず、時計全体に立体感が生まれた。仮に機械式のムーブメントを載せていたら、こんな薄型ケースは採用できなかっただろう。

 スポーティーにもフォーマルにも取れるデザインも、やはり巧妙である。ラグを伸ばし、インデックスを絞った結果、この時計はフォーマルウォッチに見える。しかしストラップはほぼストレートで、まるでスポーツウォッチのようだ。加えてアリゲーターの処理を、グロスからマットに変えたことで、カジュアルにも使える。時計に比してストラップの幅は狭いが(今のカルティエならば、もう少し太いストラップを与えただろう)、これはオリジナルへのオマージュともいえるし、男性用としても女性用としても使える、という新しい提案でもある。

 シチュエーションを問わず使えるデザインと、現在のカルティエらしい良質な外装、男女問わず使えるパッケージングに、しかもカルティエのロゴまで付いているサントス デュモン。しかも価格は、SSのLMサイズで39万7500円なのだ。正直、筆者はタンク ソロのような時計を想像していたが(読者の皆様なら言いたいことはお分かりいただけるハズだ)、実物は思った以上だった。良質な実用時計探しに疲れた愛好家の皆さんはもちろん、普通に使える上質な時計を探している人にもお勧めしたい。1本買って、ペアで使い回すのは大いにアリだと思う。



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