ヴァシュロン・コンスタンタン、天文学や神話から着想を得たユニークピースを製作

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2022.02.11

ヴァシュロン・コンスタンタンは、新たなユニークピース「レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション・バッカス」を発表した。葡萄をモチーフとした装飾を施したケースが目を引く本作は、表裏に文字盤を持ち、16種類もの複雑機構を搭載するコンプリケーションウォッチだ。

レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション・バッカス


芸術性を極めた職人技の結晶

 ヴァシュロン・コンスタンタンは、1点のみ製作する「レ・キャビノティエ」より、新たな作品「レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション・バッカス」を披露した。複雑時計を得意とするヴァシュロン・コンスタンタンの技術と、装飾や芸術的要素を担うメティエ・ダールの熟達した職人技を組み合わせた、唯一無二の芸術作品である。

レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション・バッカス

 本作のテーマは、ローマ神話にワインと葡萄の神として登場する「バッカス」。天文学に関わる機能も数多く搭載し、ドイツの天文学者 ヨハネス ケプラーからも想を得ていることから、神話と天文学の両方にまつわる1本となっている。神話に由来する装飾に加え、トゥールビヨンやミニット・リピーターなどを搭載する複雑なムーブメントを搭載しており、ひとつの時計に組み込むことが可能な、天文とカレンダーに関するほぼすべての複雑機能をダブルフェイスで表示。天体学と神話の世界、バッカスとヨハネス ケプラーとの結びつきにより、この時計は2重の意味で注目に値するのだ。


16種類もの複雑機構を搭載

 本作の製作にあたり、レ・キャビノティエのウォッチメーカーたちはこの複雑な時計のムーブメントを開発するため、2005年に発表したモデル「トゥール・ド・リル」を参考にしたという。同様のコンセプトで作られた今回の新作は、16種類の複雑機構を装備し、ブランドがこれまで手掛けた腕時計の中で最も複雑なモデルのひとつに数えられる。

 839個ものパーツで構成された手巻きのキャリバー2755 GC16は、地球の重力がおよぼす影響を補正する役割を持つトゥールビヨンを搭載。ブランドを象徴するマルタ十字を象ったトゥールビヨンのキャリッジは1分間で1回転し、スモールセコンドによる秒表示を兼ねている。

 任意の操作で時刻を時、15分、1分単位の音に変換して告げるのミニット・リピーター機能も備える。このチャイムから不要なノイズを取り除き、パーツ同士の損耗を防ぐために、ゴングのストライク機構に独自の「求心フライング・ストライク・ガバナー」を採用している。

レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション・バッカス

ヴァシュロン・コンスタンタン「レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション・バッカス」
手巻き(Cal.2755 GC16)。42石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約58時間。18KPG(直径47mm、厚さ19.1mm)。ユニークピース。

 本作の特徴は、ケースの表裏に文字盤を持つダブルフェイスの腕時計であること。各ダイヤルで主要な役を演じるのは、カレンダーと天文機能。6時位置の窓でトゥールビヨンの動きを鑑賞できる表側の文字盤では、3つのサブダイヤルでパーペチュアルカレンダーを表示する。ダイヤル上半分を占めるインダイアルは日付、曜日、月を示す。

 不規則なグレゴリオ暦を西暦2100年まで調整不要で正しく表示する、この複雑時計の機能をさらに強調するのが閏年周期の表示である。この閏年表示は、1時と2時の間に置かれたミニット・リピーターのトルク表示針の横に設けられた窓で示される。この針と対を成すのは、曜日表示の針と同軸にセットされ、サーペント型の針で読み取る主ゼンマイのパワーリザーブ表示だ。

 またレ・キャビノティエの時計技師は、コペルニクスの太陽を中心とした地動説に賛同し、惑星の運動法則を発見して近代天文学の開祖となったヨハネス ケプラーを称え、天文学的な表示も取り入れた。ひとつは、10時と11時の間に置かれた均時差表示。太陽を周回する地球の軌道が円ではなく楕円で、さらに軌道面に対して地球の軸が24度傾斜しているため、太陽が天頂を通過する時間は年間を通じて変動する。

レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション・バッカス

 真太陽時と常用時と用いている平均太陽時は、年間でマイナス16分からプラス14分の間を変動し、このふたつが一致するのは1年でわずか4回のみ。天文学の分野で均時差と呼ばれるこの時間差は指針で示され、ダイヤルの下方には設定した都市に調整した日の出と日の入りの時刻を表示する。


裏側に示された“スカイチャート”

 これらに加えてケースバック側のダイアルからは、恒星時を読み取ることが可能だ。天空を描く回転ディスクの部分には、北半球から見える星座が描かれている。天空において基準点となる恒星を定めた場合、これに対して地球が360度完全に1回転するのに要する時間、つまり恒星時は23時間56分04秒となる。地球は自転しながら太陽の周りを公転するため、設定した恒星に対して地球が出発点に戻る時間は約4分短くなる。

スカイチャート

 本作では、恒星時に合わせてスカイチャートのディスクが完全に1回転し、その外側で恒星時の時刻が示され、回転ディスクのさらに外周部には日付の目盛りが配されている。恒星時における日付は、5日間隔の数字を配した外周の固定フランジに沿って移動する、長いセンター針で示される。この針は黄道12宮、四季、分点(春分・秋分)、至点(夏至・冬至)に対応する、4つの日付表示も兼ねている。そして短い方の針は月齢、すなわち新月から経過した日数を表示する。


目を見張るべきはケースに施された装飾

 本作に採用された直径47mm、厚さ19.1mmの18Kピンクゴールド製ケースは、ルビーによる葡萄の実をふんだんにあしらった装飾が施されている。この写実的なモチーフに精彩を与える場面で彫金師の作業を補完するのは、ケースの外側にルビーをセットするジェムセッターの仕事だ。

 このケース装飾に取り組んだふたりの職人は交互に作業を進めたという。ジェムセッターは、まず彫金師ケースを受け取って石をセッティングし、次に彫金師のもとに戻し、彫金師が最終仕上げを行う。このような“デュエットスタイル”の作業は、300時間を超える両者の器用な手仕事が求められた。

ジェムセッティング

 ケースの装飾は、ベゼルや手作業で葡萄の葉を描いたケースバックへと続いた。このインタリオ技法を用いた彫金の難しさは、境界線や輪郭線をもたないこと。ベゼルの幅いっぱいに彫り込まれたガーランド模様(花飾り模様)は、モチーフの規則的なリズムのおかげで存在感を発揮している。葡萄の葉のモチーフはまた、ストラップに付属するフォールディングバックルとピンバックルにも用いられ、その作業には約1週間を要した。

 ヴァシュロン・コンスタンタンは本作を通じ、複雑機構と贅沢な装飾を併せ持つ懐中時計の偉大な伝統を永続させたのだ。


Contact info: ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755


ヴァシュロン・コンスタンタン、レ・キャビノティエの技術を結集させたポケットウォッチを披露

https://www.webchronos.net/news/70342/
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https://www.webchronos.net/news/27266/
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https://www.webchronos.net/news/56996/