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ブライトリング/ナビタイマー 01(46mm)(1/1) 2015年09月号(No.60)

BREITLING Navitimer 01 (46mm)

1952年のデビュー以来、パイロットウォッチのアイコンとして
君臨してきたブライトリングのナビタイマーが、
より大きくなって新登場。
今までのモデルが小さく見えるほどの
直径46mmのケースサイズは、
いかなる説得力をもって我々に語り掛けてくるのだろうか。

イェンス・コッホ: 文 Text by Jens Koch
ニック・シェルツェル、NASA: 写真 Photographs by Nik Schölzel, NASA
市川章子: 翻訳 Translation by Akiko Ichikawa

point
・アイコン的存在を破綻なく拡張
・品質と価格のバランスが良い
・優れた設計の自社開発ムーブメントを搭載

point
・プッシュボタンが固い
・防水性がもの足りない

大いなる空のパイオニア

つて、航空業界には技術的進歩の過渡期があった。1952年、ブライトリングがナビタイマーをパイロット用の機器として発表した時、航空機は初のジェットエンジン搭載機がすでに実用化され始めていたが、まだプロペラ機が主流だった。それがジェット機の時代に入ると、飛行速度が非常に高くなり、ヨーロッパとアメリカの間は近くなっていった。1947年、アメリカの実験機だったベルX‐1が試験飛行で音速を突破。同じ研究を進めていたダグラス社は、1953年にD‐558‐Ⅱスカイロケットで、有人飛行として初めて音速の2倍の速度に達した。

 ナビタイマーに当時要求されていたのは、ナビゲーションのための航法計算尺を、腕時計に同化させるという離れ業だ。それによって、パイロットは燃料の消費や偏流角、飛行速度を空中で計算可能になる。その頃は、腕時計よりもっと大型の計算盤を携帯するのが普通であった。それが腕時計になると、いちいち手に取らなくても常に腕上にあるわけで、操縦捍のハンドリングは明らかに楽になる。AOPA(国際オーナーパイロット協会)のオフィシャルウォッチとして認定され、文字盤にそのロゴのプリントを許可されたのも、なんら不思議ではないのだ。

堂々たるサイズで登場

 とはいえ、目盛りに添えられた数字はかなり小さなサイズだったのが短所ではあった。初代ナビタイマーはケース径40㎜と、当時としては十分な大きさだったが、それでも字は小さい。それが初の自社製ムーブメントを搭載した2011年発表のナビタイマー 01では直径43㎜になり、今回テストに取り上げた2014年発表のモデルでは直径46㎜ものサイズになっている。
 43㎜でも、もはや誰も小さいとは感じていなかっただろう。しかし時代は変化するものである。より大きなものが出ると、以前は大きく思えたサイズがやけに小さく見えるものだ。その上、目盛りが大きくなって視認性を損なっていない。
 このモデルをひと目見ると、そのサイズに驚かされるが、これが腕に載せてみると、さほど巨大には見えない。編集部で着用テストを受け持った者は手首が細めなのだが、それでも突飛な印象はなかった。ちなみに、これがナビタイマーの最大サイズではない。ナビタイマーGMT、ナビタイマー1461、ナビタイマーQPは、さらに2㎜大きい。各モデルを比べると、今回のモデルのディテールが新たなサイズの中でいかに巧みに扱われているかが分かる。新型ではプッシュボタンもより大きく、ケースも厚みを増していて、ストラップも幅広くすることで、全体のプロポーションが整えられている。加えて、サイズアップした腕時計によくある問題点が見られないのだ。ムーブメントを拡大せずに製品化すると、文字盤上でサブダイアルと日付表示が中央に寄り集まってしまうものだが、新型ナビタイマー 01では調和が乱されていない。
 さて、パイロットウォッチの最重要項目といえば、やはり素早く読み取りができることだ。それに関しても、もちろんこのサイズが決め手になっている。もっとも、文字盤上には目盛りや差し色を入れた積算計がひしめいていて、使う段になると、いつでもお手軽というわけではない。銀地のサブダイアルにある銀色の針は、十分に浮かせていないため、サブダイアルに同化しがちなのだ。夜光ポイントも発光が甘い。逆に積算計はコントラストを良くするために、夜光塗料なしでやりくりすべきだろう。一方、長短針を見るとき、夜間はインデックスの端についた夜光ポイントと、12時位置のダブルドットが目印になる。しかし暗がりの中で、はっきりと分かりやすいほどの光ではない。興味深いことに、このナビタイマーより小さなサイズのコスモノートには文字盤のインデックスにアラビア数字を使用したものがあるのに対し、43㎜より大型のモデルはバーインデックスのみで構成されている。夜光塗料の塗布された大きなアラビア数字がないだけに、暗がりでは文字盤はより暗っぽく見えてしまう。

 ケース径43mmの先行モデル(右)と並べると、まるで双子のようにも見えるほど、サイズの拡張ぶりには破綻がない。ケース径46mmといえど、腕に載せると意外や悪目立ちはしないのが妙味。(航空機)1954年、エドワーズ空軍基地に揃ったダグラス社の航空機。音速突破試験飛行機のほか、ジェット戦闘機のプロトタイプの姿も見える。

ムーブメントの観賞も可能

 今回のモデルを、同じナビタイマー01でも43㎜のものと比べると、サイズ以外にも違いがあるのに気づくだろう。46㎜のモデルはケースバックがトランスパレント仕様になっているので、自社製の自動巻きキャリバー01をじっくり観賞することができるのだ。今までのナビタイマー 01では、限定バージョン以外はステンレスの裏蓋でがっちり遮られ、メカニズムは見られなかった。その裏蓋には温度の摂氏から華氏への換算用の目盛りが刻まれていたのだが、それが必要となることはめったにないし、いちいち腕から外して見るのも使い勝手が良いとは言えない。むしろムーブメントを眺められるほうがよいだろう。このようにトランスパレントバックの利点ははっきりしているが、中で駆動するのは43㎜モデルと同じくキャリバー01だ。
 このふたつのモデルをそれぞれ腕にはめてみると、どちらもよく整えられていて、年の近い兄弟のように見える。そして、すぐにさまざまな違いが目につくはずだ。もっとも、これはあからさまな違いというより、いささか通好みによるところの違いかもしれない。
 手の掛かり具合のクォリティから言うと、どちらも同じく水準は高い。ケースの磨きは良好で、あまり目につかないような箇所までしっかり磨かれている。文字盤にプリントされた目盛りはきっちりと精密。プッシュボタン、リュウズ、ベゼルのそれぞれにがたつきはなし。裏蓋のサファイアクリスタルは実にぴっちりはめ込まれている。膨らみを持たせて磨き込んだ針とバーインデックスには手抜かりが全く見当たらない。
 ところが回転ベゼルに備えられたパッキンはひとつで、防水性は3気圧。これはナビタイマー最大の弱点と言っていいだろう。つまり水泳やシャワー時には、腕から外さないといけない。もっとも、レザーストラップ付きの時計をはめて、どうしても水に飛び込みたいというユーザーもいないだろう。

 さらなる弱点もなきにしもあらず。クロノグラフにスタート、ストップを掛けるとき、プッシュボタンの最初のひと押しに相当な力が要るのだ。これはスタート時のコラムホイールの動きを経由して、リセットハンマーがハートカムから離れるようにするために、ハンマーに加わる力の割合が並々ならぬものであるためだ。コラムホイール制御によるクロノグラフの場合、ここまでの力が掛かるのはよくあることとは言えず、トラディショナルな制御法であるコラムホイール式では、もっとすんなりと滑らかな押し心地になるものだ。それでもこのモデルは、ストップ時とリセット時はスタート時よりかなり指への負担が少ない。
 そのほかの操作性について言うと、回転ベゼルの動きはスムーズ、リュウズはつまみやすく、引き出し感も良好、ストップセコンドと日付のクイックコレクト機能が備わっているため、針合わせも日付合わせも楽に行える。唯一、リュウズを巻き上げることに関しては、リュウズがケースにかなり密着しているためにやりづらい。まあ、自動巻きなので、巻き上げる機会はさほどなかろう。それに、ナビタイマー 01はパワーリザーブが長めなのだ 。完全に巻き上がった状態だと、約70時間の持続力がある。つまり、金曜日の夜に外して机の上に置きっぱなしにしていても、月曜日の朝、そのまま使えるというわけだ。

搭載されているのは、自社開発のマニュファクチュールムーブメントCal.01。従来の43mmケースと同じものだが、姿が裏蓋から見えるようになったのがうれしい。

細やかな技術が映えるムーブメント

 裏蓋のサファイアクリスタル越しにムーブメントを観察すると、いくつか気づくことがある。幸いなことにブライトリングは、一部のメーカーの好ましからぬ習慣のごとく、ムーブメントを大きなブリッジで覆い隠してしまわず、クロノグラフ機構も存在が確認できるような、麗しい構築を見せてくれている。
 装飾についても、けちることなく出し惜しみはしていない。中心部に透かし彫りが施されたローターに入ったサンレイ仕上げ、自動巻き機構のブリッジに入ったコート・ド・ジュネーブ、他のブリッジのサンレイ仕上げのほか、鏡面に磨かれたネジ頭、金色に彫り込まれたエングレービングなど、見どころは多い。一方、テンワの下の地板には装飾研磨は入らず、レバー類やバネ類も打ち抜かれた後にあまり手を加えていないように感じる。汎用機のETA7750より素っ気なく見えないでもないが、これは製造コスト面も考慮してのことだろう。それはさておき、コラムホイールまで見られるのは、やはりうれしいものだ。もうひとつ特別なことがある。回転数の高いガンギ車には、軸の油を保つための装置が取り付けられているのだ。なお、緩急調整は、ペンチ状の緩急針と偏心スクリューによって行われる。
 それでは見えない箇所はどんな様子だろうか。このキャリバーは、クロノグラフのスタート時に、クロノグラフ秒針が針飛びするのを防ぐ、モダンな垂直クラッチ方式を採用。日付表示は瞬時に切り替わり、その上、日付修正は24時間いつでも機械の損傷を心配せずに行える。
 ブライトリングは、2000年からムーブメントの全品が、スイスの公式クロノメーター認定機関のC.O.S.C.の認定を受けている。これは、歩度測定機でも良い結果が出るだけの十分な条件が揃っているということになろう。ナビタイマー 01は、各姿勢での日差がプラス1秒からプラス5秒と、かなり揃った数値で高精度を証明してくれた。平均日差はわずかプラス2・8秒。クロノグラフ作動時も、数値はごくわずかしか変わらず、最大姿勢差は5秒、平均日差はプラス2・7秒だった。同様に、振り角落ちも満足できる範囲に収まっている。これらのことから、このモデルはクロノメーターとしての基準を満たしているだけではなく、全姿勢において、我々編集部のさらに包括的なテストでも好成績を上げたと言えるだろう。
 ところで価格についてはどうだろうか? このナビタイマー 01(ケース直径46㎜)は96万円。これはフェアな価格であろう。汎用機を使った他ブランドで、この価格に並ぶものもあるだろうが、マニュファクチュールムーブメント搭載の同水準のクロノグラフで比較すると、他ブランドでは明らかにもっと高額だ。
 さらに、同じナビタイマー 01のサイズ違いでも価格を比べてみると、43㎜との差は10万円。これは大型化したケースだけではなく、ケースバックをトランスパレント仕様にしたことも理由のひとつなのだろう。
 結局このモデルは、称賛に値すべきかどうかと問われれば、もちろん! と答えたい。ブランドアイコンたる計算され尽くしたデザイン、美麗で頑健、かつ持久力のあるマニュファクチュールムーブメント、どこを取っても高品質さが伝わる仕上がり、価格とのバランスの良さ。全てがクラシック感あふれる製品の価値を盛り立てている。これらを踏まえると、プッシュボタンの押し心地の固さと、最低限の防水性というウィークポイントも、ほとんど気にはならないだろう。46㎜というサイズは目立つことは目立つが、見かけ倒しな点はない。視認性は若干向上、中のメカニズムを裏蓋から見られるのも朗報と言えよう。着け心地には最初は戸惑うかもしれないが、今までの同サイズのものとは違う快適さがあるのに驚くはずだ。なんといっても、悪目立ちはせず迫力のある存在感、十分に整備された佇まいには、飛行のパイオニアたる気分を思う存分満喫できるだろう。

幅広のストラップに、コントラストの効いたステッチ、そして留め具は尾錠。このスタイルが、パイロットウォッチを装着する気分を一層盛り上げてくれる。(航空機)1953年、NACA(NASAの前身)では試験飛行用に、X-3、X-1Aのほか、多くの航空機を開発、所有していた。

技術仕様
ブライトリング/ナビタイマー 01(46mm)

製造者: ブライトリング
Ref.: Ref.AB012721/BD09
機能: 時、分、秒(スモールセコンド)、30分積算計、12時間積算計、日付表示
ムーブメント: Cal.01、自動巻き、C.O.S.C.認定クロノメーター、2万8800振動/時、47石、ストップセコンド、クイックコレクトデイト、耐震軸受け(キフ使用)、グリュシデュール製テンワ、調整用偏心ネジ付き緩急針、パワーリザーブ約70時間、直径30.0mm、厚さ7.2mm
ケース: ステンレススティール製ケース、ドーム型サファイアクリスタル風防(両面無反射加工)、ねじ込み式裏蓋、3気圧防水
ストラップとバックル: カーフストラップ、ステンレススティール製尾錠
サイズ: 直径46.0mm、厚さ14.5mm、重量103.95g(ストラップを除く)
バリエーション: ステンレススティール製ブレスレットタイプ110万円、18Kローズゴールド製ケース328万円(200本限定)
価格: 96万円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

  平常時 クロノグラフ作動時
文字盤上 +3 +2
文字盤下 +5 +4
3時上 +2 0
3時下 +4 +4
3時左 +4 +5
3時右 +1 +1
最大姿勢差: 4 5
平均日差: +2.8 +2.7
平均振り角:    
水平姿勢 291° 264°
垂直姿勢 259° 222°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 9pt.
操作性(5pt.) 4pt.
ケース(10pt.) 9pt.
デザイン(15pt.) 15pt.
視認性(5pt.) 3pt.
装着性(10pt.) 8pt.
ムーブメント(20pt.) 18pt.
精度安定性(10pt.) 9pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 14pt.
合計 89pt.

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