【91点】オメガ/シーマスター 300 マスター コーアクシャル

FEATUREスペックテスト
2015.02.03

バックルに内蔵されているエクステンションは細かい調節が可能で、ブレスレットの長さを自分の手首のサイズにぴったりと合わせることができる。

水中での安全性を十分に確保するため、ダイバーズウォッチの回転ベゼルは必ず逆回転防止式であることが求められている。潜水時にダイバーベゼルの12時位置にある丸いマーカーを分針に合わせておけば、水中での滞在時間をいつでも読み取ることができる。ダイバーベゼルは安全上の理由から、基本的に反時計回りにしか回せないようになっている。この方式だと、水中で岩塊や他の装備品に接触してベゼルが動いてしまった場合、読み取った潜水時間が実際の潜水時間よりも長くなることがある。結果として早く上がりすぎることはあっても、水中に長くいすぎることはない。したがって、減圧停止の調整に失敗し、生命にかかわるような事故が発生するのを回避することができる。シーマスター 300 マスター コーアクシャルのベゼルは扱いやすく、スムーズな動きと安全性の確保が絶妙なバランスで実現している。ベゼルを回す時に金属的なノイズが生じるが、機能にはまったく影響しない。ダイバーズウォッチの規格には指示されているが、オリジナルモデル同様、ベゼルには1分刻みのミニッツスケールが配されていない。その代わりオメガは、傷に強いセラミックス製ベゼルにリキッドメタルでバーインデックスとアラビア数字インデックスを5分刻みで交互に象嵌した。リキッドメタルは、セラミックスと金属のスムーズな接合を可能にする合金で、ステンレススティールよりも硬い特性を備えている。

1時間刻みで合わせられる時針も実用的な特徴である。扱いやすいリュウズを緩めて第1の設定ポジションまで引き出すと、分や秒の表示に影響を与えることなく時針を動かすことができる。ちょうどテストを行った時がそうだったように、夏時間から冬時間に設定を変更しなければならない場合や、別のタイムゾーンに移動する際などに有益な機能である。第2の設定ポジションでは秒針が止まり、時と分を通常と同じ方法で設定することができる。
だが、この時計ではそう頻繁に手を煩わされることはない。着用時、シーマスター 300 マスター コーアクシャルは一定してマイナス1秒/日の日差を示した。歩度測定機で行ったテストではさらに、ほかのオメガ自社製ムーブメントの優秀な精度をはるかに凌ぐ素晴らしい結果を見せてくれた。24時間後の日差が4つの姿勢で0秒/日、ふたつの姿勢でマイナス1秒/日という精度である。したがって、計算上の平均日差はマイナス0・3秒/日、最大姿勢差は1秒になった。その結果、シーマスター 300 マスター コーアクシャルは、クロノスドイツ版編集部が過去10年間でテストした時計の中で最も精度の高い時計となったのである。

視認性が極めて良好であることも非常にうれしい点である。蓄光塗料を塗布したシルバーカラーの針はマットブラックの文字盤とのコントラストが抜群で、3本の針はすべて長さも十分あり、それぞれを明確に区別することができる。明瞭なミニッツインデックスは優れた視認性を提供し、蓄光塗料が盛られたクサビ型インデックスは暗所でも読み取りやすい。ここに日付が搭載されていれば、完璧な時計なのだが。
とはいえ、オメガが1957年のオリジナルモデルのデザインを忠実に順守したことは、我々にとって喜ばしい事実である。日付表示を廃することさえ、文字盤を完璧な左右対称に構成するのに不可欠な要素なのだから。ベージュカラーのクサビ型インデックスは文字盤の表面よりもやや深くなっており、内側にスティールリング、外側に細かい刻みを備えた回転ベゼルと同様、文字盤の数字や針も調和の取れた印象に仕上がっている。また、やや湾曲したケースも当時のモデルを彷彿とさせる。ただ、今回のモデルでは、ケース側面やブレスレットの外側のコマがヘアライン仕上げになってはいるものの、ポリッシュ仕上げの面が多すぎると感じる愛好家もいるだろう。ヘアライン仕上げが施された大きなバックルは、見栄えは良いが、いとも簡単に傷を付けてしまいそうだ。そのため、バックルの美しく均一な表面仕上げが維持されるのはそう長くはないだろう。だが、加工品質については、ブレスレット、ケース、文字盤に至るまで、非常に好印象である。

ここで、価格を検証してみよう。オメガがシーマスター 300 マスター コーアクシャルに設定した63万円というのは、フェアな価格ではないだろうか。同機種のムーブメントを載せ、日付表示はあるが超耐磁性を持たない名品、シーマスター プラネットオーシャン(57万円)との差額はわずかなのだから。そもそも、オメガが達成した極めて高い耐磁性とトランスパレントバックを同時に備える時計は、ほかのブランドではまず見当たらない。シーマスター アクアテラ マスター コーアクシャルなら、テストウォッチよりもやや安価の58万円で同スペックにエントリーできる。ロレックスやIWC、パネライ、ジャガー・ルクルト、ブランパンがリリースしている自社製ムーブメントを搭載したダイバーズウォッチは、こうしたオメガのモデルよりも高額でありながら、超耐磁性は備えていない。つまり、コストパフォーマンスに関して、オメガは連戦連勝、まさに向かうところ敵なしなのである。
最新の素材と技術を駆使し、破格のレベルでありながら日常使いでも力を発揮する超耐磁性を実現したオメガに並び立つことのできるブランドは、今のところない。比類なきコーアクシャル脱進機を搭載した秀逸な自社製ムーブメントの並外れた精度を考慮すれば、オメガのポイントはさらに加算される。また、傷に強いセラミックス製ベゼルだけでなく、ケースにおいてもステンレススティール製以外にセドナゴールド製ケースをラインナップするシーマスター 300 マスター コーアクシャルは、最先端の技術を体現しており、弱点はほぼ見つからない。クロノスドイツ版編集部がこれまでにテストを行った数ある時計の中で、オメガのシーマスター 300 マスター コーアクシャルが最も優秀なモデルのひとつに挙げられるのは、評価で獲得した点数に限られた話ではないのだ。