【82点】ジン/EZM10.TESTAF

FEATUREスペックテスト
2014.06.03

簡素な尾錠は美しいインテグレーションカウレザーストラップとやや不釣り合いである。

隠れた品質

だが、装着感が簡素な作りのバックルに阻害されることはなく、クッション性のあるインテグレーションカウレザーストラップと丸みを帯びたラグの恩恵により、EZM10・TESTAFは心地よく手首に収まる。唯一、ケースから少し突き出たリュウズが、ポジションによっては手首を圧迫することがあるかもしれない。EZM10・TESTAFは、コックピットでの使用にふさわしい外観を備えているばかりではない。ジンが独自に改良を加えたETA7750を搭載することで、このパイロットウォッチは強く、信頼性の高いエンジンを獲得することとなった。その上、ムーブメントはいくつかの模様彫りと青焼きのネジで飾られている。定評のあるクロノグラフムーブメント、ETA7750において、ジンはクロノグラフ分針をセンター配置に変更し、ディアパル・テクノロジーによって開発したオイルフリーの脱進機構を追加した。

精度はどうだろうか。クロノグラフ停止時の平均日差はプラス5・2秒/日、最大姿勢差は8秒と、残念ながら精度の点では平均的なレベルだった。クロノグラフを作動させた時のほうが、良好な結果を見せてくれた。
このムーブメントはテギメント加工を施したチタン製ケースをまとうことで、さらなる真価を発揮する。決して派手な特徴ではないが、TeStaFの審査がヘリコプターや飛行機のコックピット内で発生しうるさまざまな負荷を考慮した構成になっているため、EZM10・TESTAFには周辺圧力、温度変化、衝撃、航空機用燃料等の液体に対する耐性テストが行われている。飛行機の操縦桿を握る必要のない一般ユーザーにとっては、こうした性能よりも防水性や耐磁性、振動や加速への耐性のほうに関心があるだろう。日常生活では時計が航空機のコックピット内のように強い負荷にさらされることはないが、テニスをしても、コンピュータを使用しても、電動ドリルで作業しても、時計に問題が生じないことを知っているのは悪いことではない。
パイロットウォッチのファンやメカ好きの愛好家にとっては、82万円は決して高額すぎる価格ではないだろう。この価格を支払えば、ジンのテクノロジーが満載されたクロノグラフと、その機能的なデザインを堪能することができるのだ。また、飛行機のコックピット内で予備計器として使用できることを証明するTeStaF認定書が付与されているのも、さらなる安心材料となる。旧EZM10との価格差は約2万円である。EZM10のスタンダードモデルはもう供給されていないので、購入希望者はより高額な新型モデルを買うしかない。だが、子供の頃から空を飛ぶ夢を見続けてきて、それなりの出費もいとわないユーザーなら、ジンのEZM10・TESTAFを手首に着けることで、雲に一歩近づいた気分を味わえるかもしれない。