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ショパール / クラシック マニュファクチュール(1/1) 2013年01月号(No.44)

CHOPARD CLASSIC MANUFACTURE

このところ、ぐいぐいと歩を進めているショパール。すでに大成功を収めているL.U.Cは、美麗なだけに高嶺の花との嘆息も聞こえる。それに対応すべく、量産自社ムーブメントによって価格を抑えた新たなジャンルが打ち出された。

イェンス・コッホ:文 Text by Jens Koch
ニック・シェルツェル:写真 Photographs by Nik Schölzel
市川章子:翻訳 Translation by Akiko Ichikawa


point
・心地よい装着感
・すっきりと整えられた丁寧な仕上げ
・上質な自社ムーブメントを搭載

point
・ややバランスに欠けるデザイン構成
・歩度にばらつきがある

新たな花壇に咲く一輪

1996年からショパールは再び自社開発ムーブメントを製作するようになった。その名もL.U.C。これはブランド創始者のルイ‐ユリス・ショパールにちなんで名付けられたものだ。独自のムーブメント開発が進むうちに、シンプルなロングパワーリザーブやハイビートだけにとどまらず、永久カレンダーやトゥールビヨンなどの複雑機構を搭載したモデルまで、あらゆる種類が登場してきた。それらはおしなべて質が高く、かつ価格も高い。とりわけ、自社オリジナルのクロノグラフムーブメント開発については、多くの称賛を浴びている。クロノグラフは輪列が複雑なため、大手のマニュファクチュールとて、自社開発は避けたいところなのだ。ショパールでは、各種合わせると、現在、年に合計約4500個の自社ムーブメントを製造しているが、L.U.Cムーブメントの全品が、高精度の証として切り離せない存在である検査機関のC.O.S.C.(スイス公式クロノメーター検定所)から認定を受けているのだ。そして、一部のムーブメントにはジュネーブ・シールの刻印があり、さらに多くのものはカリテ・フルリエ規格を満たしている。これらの手間ひまかかった仕様が、自ずと価格に表れているというわけだ。

一方、同社の中でリーズナブルなモデルに対しては、基本的にETAムーブメントを使用するのがショパールの従来のやり方であった。しかし、さらなる一歩を踏み出すべく、2008年に独自のエボーシュ生産拠点とする新会社フルリエ エボーシュが設立された。ショパール グループの傘下であるこの会社は、設計開発および産業規模での生産化までの過程を担い、供給に値するムーブメントを製造することを目的としている。ショパールでは、スポーティーラインのミッレ ミリアなども含め、ETAのムーブメントを搭載していた大半のモデルをフルリエ エボーシュ製のものに順次置き換えていく予定だ。そのためのムーブメントは、目下年産1万5000個だという。ショパールのカール︲フレドリッヒ・ショイフレ共同社長は、これらの量産ムーブメントに比べて、複雑系のムーブメントはごくわずかしか作られないと、差違を強調している。今回のテストウォッチに搭載されるパワーリザーブ約60時間の自動巻きムーブメントは、パワーリザーブインジケーター付きのものやクロノグラフへの展開も計画中だ。その実現に際し、何が何でも歯車ひとつから新たに一から作り出す必要性は感じていないという。しかし、今後ショパールがこれら独自の新型ムーブメント製造に意欲的である限り、L.U.Cの技術が応用されるのは間違いないだろう。

このショパールのL.U.Cのロゴが入らない初の自社ムーブメントであるフルリエ エボーシュ製ムーブメントの第1作は、キャリバー01・04︲Cと名付けられた。これを内蔵するモデルが、今回検証する「クラシック マニュファクチュール」だ(発表時の呼称は「クラシック マニュファクトゥム」)。 このムーブメントは、2010年にL.U.C仕様のキャリバーL.U.C 01・01︲Lとして記念モデル「L.U.C 1937」に搭載され、細やかな仕上がりでお披露目された。2011年には「インペリアーレ」コレクションにも採用されている。

自社開発による新型ムーブメントは、L.U.Cムーブメントとは外観上の違いも多い。それは装飾研磨の入れ方に顕著に表れている。

あえて“はずして”の登壇

クラシック マニュファクチュールは、ゴールドケースのみが作られているエレガントなモデルだ。ケース直径38mmというサイズは、今日ではすでに主流から外れている。前へ前へと主張しすぎず、一歩退いて登場した格好だ。幅の狭いベゼルと、真っ直ぐ伸びるほっそりしたラグは、1940年代から50年代の腕時計の姿を彷彿とさせる。それでいて、白い文字盤の外周に置かれたローマ数字や、細かな目盛り入りのスモールセコンド、金色のリーフ針は、懐中時計を想わせる佇まいだ。しかし、一部のローマンインデックスの数字の欠け具合と、スモールセコンドの内側に設けられたインナートラックの余白の取り方は、外観のバランス上、目に重たすぎるようにも感じられる。日付表示も、あっさりと縁取りの枠も付けず控えめに3時位置に寄せられているにもかかわらず、今ひとつしっくり来ない。リュウズにはロゴが入れられていないが、これに関してはバランスがどうと言うよりも、好き好きの問題だろう。

斑が綺麗に入った、縁が裁ち切りの手縫いのアリゲーターストラップは、ケース同様にすっきり爽やかな仕上がりだ。作業の丁寧さは、レリーフの入った尾錠にも見て取れる。ツク棒も、凝った形状ではないがフライスは完璧だ。ストラップを尾錠に取り付ける横棒を留めるネジは、両サイドにはみ出さない構造になっている。しかし、難を言うならば、このストラップは若干長すぎだろう。手首回りがかなり豊かな者でなければ、一番内側の穴で留めても緩いはずだ。これでは腕上の据わりが安定せずに動いてしまい、ふと見るとリュウズの位置がずれているということになるだろう。

リュウズは1段引きで日付修正を素早く行える。2段引きで針合わせができるのだが、ストップセコンド仕様になっているので、時報や電波時計を利用すると、秒単位まで正確な時間に合わせられる。
厳密な時間合わせを可能にしているのは、このモデルがまさに精密に動いているからこそだ。我々の着用テストでは、毎日の進みは1秒のみだった。歩度測定機での平均日差はプラス1・3秒/日。これは全姿勢において、水準に大きな開きは見られなかった。もっとも、姿勢差はかなり強く現れた。最大8秒もの開きが出たことが、今回の採点上のネックになっている。それに対して、振り角は安定していたことも報告しておこう。
どうも、このムーブメントは、L.U.Cムーブメントに比べて、最終調整が甘いことが大きな違いではないかと思われる。というのは、このキャリバー01・04︲Cにも寒暖の温度と等時性を考慮した5姿勢調整済みの刻印は入っているのだ。公式クロノメーターの認証を得るために整備されていないのも、そう考えると納得がいく。テンワもL.U.Cムーブメントではより軽量な3本アームのものを使用しているが、このムーブメントでは4本アームのものが使われている。

2006年、ショパールが自社開発した同社初の一体型クロノグラフムーブメントCal.L.U.C 10CF。その設計を転用し、クロノグラフ機構を取り除いて2010年に発表したCal.FE151から数えて3代目にあたるのが、このCal.01.04-Cである。ショパールの基幹キャリバーとして、今後の展開が期待される。

構築に優れたムーブメント

さて、その構造だが、L.U.Cの特徴であるマイクロローターとツインバレルは装備していない。そのためパワーリザーブは70時間に届かないが、平均約60時間は保持している。センターローターは、同社のマイクロローターのものと似た切り替え車を採用した両方向巻き上げ式。緩急針には、L.U.C同様にトリオビスが使われている(一部のL.U.Cムーブメントにはスワンネック緩急針も使用)。
だが、L.U.Cの96系キャリバーよりも改善されている部分もある。それにはストップセコンド仕様になっている点や、ローターに磨耗を抑えるセラミックベアリングが採用されている点などが挙げられる。
また、サファイアクリスタルを使用したトランスパレントバックを通して、キャリバー01・04︲Cが目を愉しませてくれるのもうれしい。ネジの頭が鏡面に磨き上げられている様も見目麗しい。ブリッジのエッジは鏡面研磨仕上げにまではなっていないが、面取りは施されている。肉抜きされたローターや、ブリッジに入れられたサンバースト研磨は穏やかな輝きを見せる。ただし、ローターとブリッジは、存在感をもっと前面に押し出すくらいのほうが、より美しく映えるだろう。

総合すると、このムーブメントはETA製のものよりもL.U.Cムーブメント寄りの品質に出来上がっている。それでもなお惜しいのは、このムーブメントが、むしろ明らかにエコノミークラスであることに徹しきれていないところにある。例えば、L.U.CシリーズのモデルのひとつであるXPSなどは、日付表示はないものの、今回のテストウォッチ同様に自動巻きムーブメントをローズゴールドケースに収めているが、価格は154万3500円とそれほど極端な差はない。だが、XPSはC.O.S.C.認定クロノメーターだ。クラシック マニュファクチュールはコストパフォーマンスでハンデがあると言わざるを得ない。
とはいえ、上質な外装と心地よい装着感を備えた、奥ゆかしい気品が薫る1本であることには違いない。それは新キャリバーの構築と化粧仕上げの良さからもうなずける。それでも、少量生産のL.U.Cモデルに対して、ある程度の数が作られる、ややリーズナブルなムーブメントによる新カテゴリーというコンセプト自体には、全面的には納得しかねるものがある。ひょっとすると、今後スティールモデルにはっきりと路線変更していくということも、考えられるのではないだろうか。
ショパールという庭園に設けられた新たな花壇に咲く花は、毎シーズン同じ色であるとは限らないのだ。

輝きも艶やかなローズゴールド製の尾錠は、ツク棒のフライスの仕上がりやレリーフなど、随所に丁寧な仕事ぶりがうかがえる。ビスがはみ出さないように沈ませているところにも細やかさが感じられる。

技術仕様
ショパール/クラシック マニュファクチュール

製造者: ショパール
Ref.: 161289-5001
機能: 時、分、スモールセコンド(ストップセコンド仕様)、日付表示
ムーブメント: 自社製キャリバー01.04-C、自動巻き、2万8800振動/時、27石、トリオビス緩急針、耐震軸受け(キフ使用)、グリュシデュール製テンワ、パワーリザーブ約60時間、直径28.8mm、厚さ4.95mm
ケース: ローズゴールド製、サファイアクリスタル風防、トランスパレントバック(サファイアクリスタル使用、6カ所ビス留め)、3気圧防水
ストラップとバックル: アリゲーターストラップ、ローズゴールド製尾錠
サイズ: 直径38mm、厚さ10.06mm、重量69g
価格: 135万4500円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

平常時    
文字盤上 -3
文字盤下 -1
3時上 +2
3時下 +3
3時左 +2
3時右 +5
最大姿勢差: 8
平均日差: +1.3
平均振り角:
水平姿勢 299°
垂直姿勢 272°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 9pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 8pt.
デザイン(15pt.) 12pt.
視認性(5pt.) 4pt.
装着性(10pt.) 10pt.
ムーブメント(20pt.) 15pt.
精度安定性(10pt.) 7pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 12pt.
合計 82pt.

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