
クォ・ヴァディス?
「クォ・ヴァディス?」。ラテン語で「どこへ行くのか?」を意味するこの問いは、ムーブメントにも投げかけることができるだろう。なぜなら、テストウォッチの精度が、時計全体の高い加工品質にも、マニュファクチュールキャリバーとしてのクォリティにもふさわしくなかったからである。歩度測定機における計算上の平均日差は、マイナス0・5秒/日とごくわずかだったものの、最大姿勢差は13秒とかなりの開きがあり、着用時の平均日差はマイナス3・5秒/日だった。こうした結果が、調整ネジと緩急針によるトリオビス型緩急調整機構に起因するわけではないことは間違いない。基本的に、かなり効果的な微調整が期待できる機構だからだ。とは言え、自由振動ヒゲゼンマイとバランスウエイトを搭載したフリースプラングテンプの方が、よりエレガントな解決策だったことは確かだろう。
逆に、水平姿勢と垂直姿勢で振り落ちが非常に小さかったことは、喜ばしい結果である。これは、歯車の軸の先端にあるホゾなど、ムーブメントの可動部品が、垂直姿勢でわずかに摩擦を生じているものの、極めて高い品質で加工され、仕上げられていることを示唆している。
テストウォッチで観察された不安定な精度のほかに、大きな難点があるとすれば、それは高い価格である。伝統あるマニュファクチュールの作であり、加工が良質な上、付加機能を備えていたとしても、3万9200ユーロ(394万8000円)という価格は、腕時計としては高額である。だが、多くのタイムピースと同様、ケ・ド・リルの場合も、心を揺り動かすさまざまな要素が決定的な意味を持っている。メカ好きな愛好家にとって、ケ・ド・リル以上にパーソナルな時計を獲得する機会は少なく、ケ・ド・リルほど、モジュールコンセプトが贅沢に表現されている時計は稀な存在である。
技術仕様
ヴァシュロン・コンスタンタン / ケ・ド・リル ・デイ/デイト&パワーリザーブ・オートマティック
| 製造者: | ヴァシュロン・コンスタンタン |
| モデル: | Ref.X85I0P2A |
| 機能: | 時、分、秒(ストップセコンド仕様)、日付、曜日、パワーリザーブ表示 |
| ムーブメント: | 自社製キャリバー2475 SC/1、自動巻き、2万8800振動/時、27石、調整ネジと緩急針によるトリオビス型緩急調整機構、グリュシデュール製テンワ、耐震軸受け(キフ使用)、パワーリザーブ約40時間、直径26.2mm、厚さ5.7mm |
| ケース: | 18KPGおよびチタン、ドーム型サファイアクリスタル製風防(両面無反射コーティング)、サファイアクリスタル製トランスパレントバックを備えた18KPG製ねじ込み式裏蓋、30m防水 |
| ストラップとバックル: | 手縫いのアリゲーターストラップおよび18KPG製セーフティーフォールディングクラスプ |
| サイズ: | 縦50.5×横41mm、厚さ13.5mm、総重量130g |
| バリエーション: | 文字盤、ケース素材、ストラップの組み合わせ多数 |
| 価格: | 394万8000円 |
*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。
精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)
| 文字盤上 | -1 | |
| 文字盤下 | +5 | |
| 3時上 | -7 | |
| 3時下 | +6 | |
| 3時左 | 0 | |
| 3時右 | -6 | |
| 最大姿勢差: | 13 | |
| 平均日差: | -0.5 | |
| 平均振り角: | ||
| 水平姿勢 | 281° | |
| 垂直姿勢 | 263° |
評価
| ストラップとバックル(最大10pt.) | 10pt. |
| 操作性(5pt.) | 4pt. |
| ケース(10pt.) | 9pt. |
| デザイン(15pt.) | 13pt. |
| 視認性(5pt.) | 4pt. |
| 装着性(10pt.) | 8pt. |
| ムーブメント(20pt.) | 16pt. |
| 精度安定性(10pt.) | 6pt. |
| コストパフォーマンス(15pt.) | 10pt. |
| 合計 | 80pt. |
