【90点】オメガ/シーマスター プロプロフ 1200 M

FEATUREスペックテスト
2010.05.29

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マニュファクチュールキャリバー。キャリバー8500は、堅牢性と高精度を重視して設計された。

DAS MONSTER AUS DER TIEFE
深海からの怪物

 "プロプロフ"の愛称で親しまれた、奇抜なデザインのシーマスター プロフェッショナル 600mをオメガが市場に送り込んだ1970年は、フォルムやカラーの華やいだ時代だった。プロプロフは、職業ダイバーのために設計された時計である。"プロプロフ"というネーミングからも、プロ仕様であることをうかがい知ることができる。フランスの潜水会社、コメックス社との共同開発で生まれたことから、この愛称で呼ばれるようになった。愛称の元となったフランス語の"Plongeurs Professionhels"とは、プロフェッショナルダイバー、つまり職業ダイバーを意味している。本来、重視されたコンセプトはあくまでも機能性なのだが、型破りなフォルムの特大ケース、ダイバーベゼルを解除するための赤いセーフティボタン、またオレンジカラーのストラップに同色の分針など、プロプロフはすべてのディテールにおいて、70年代という時代に完璧にマッチするモデルだった。
プロプロフは、センセーショナルな潜水ミッションに数多く参加したことでも有名になった。中でも、プロプロフの名を世に知らしめたのは、なんと言ってもヤヌス計画だろう。石油コンツェルン、エルフのために、コメックス社と合同で飽和潜水のテストを行った潜水ミッションである。3人のダイバーが、アジャクシオ湾(訳注:イタリア語読みではアヤッチョ)の水深200メートルの海中に設けた減圧タンクの中で8日間過ごし、日中は最長で6時間、水深250メートルの海底で作業した。ダイバーたちはこのヤヌス計画で、新しい潜水記録を打ち立てることになる。当時、ヘリウムエスケープバルブはロレックスがすでに実験を行っており、1971年にはシードゥエラーに初めて搭載された。一方、オメガはプロプロフで別の路線を行くことになる。飽和潜水を行っている間、そもそもヘリウムの原子がまったく浸入しないようにケースを設計、密閉することで、減圧時に時計が破裂するのを回避しようとしたのである。テストを行うため、オメガの開発ラボには時計業界で唯一の質量分析装置が設けられた。

だが、プロプロフがカルト的存在となった理由は、独特な風貌や水中探検におけるパイオニア的役割、また600メートル防水という、当時としては驚くほど高度な防水性能だけではない。高額であることも、人気の一因を担っていた。当時、プロプロフはロレックスのサブマリーナーの倍の価格だったのだ。 2009年にリリースされた新生プロプロフは、40年先輩の初代モデルと瓜二つである。だが、よく見てみると、いくつかの相違点を発見できる。初代プロプロフでは、高圧にさらされる風防がネジ留め式のリングでワンピース構造のケースに固定されていた。今日の新生プロプロフは耐圧性能の高い裏蓋も備え、ネジ留め式のリングでケースに圧着されている。 ケースバックには、初代モデルのように波模様だけではなく、シーマスター・コレクションのシンボルであるシーホースもエングレーブされている。 時計の表側では、厚さ約0.5cmのサファイアクリスタルが高い圧縮強度を発揮している。

 プロプロフはこれで、水深1200メートルの水圧にさらされてもびくともしない。裏蓋を取り外し可能にしたケースの新しい構造は、新生プロプロフに結果として次の利点をもたらした。プロダイバーが飽和潜水を行えるように、全自動式のヘリウムエスケープバルブを搭載することができたのである。ヘリウムエスケープバルブはケース右側のセーフティボタンの下側に配されている。クリアラッカーのコーティングの下に見える"He"の文字が目印だ。ケースは非常にクリーンな作り込みで、面取りとポリッシュ仕上げを施したエッジと、ヘアライン仕上げを施した面とのコントラストが美しい。 文字盤にも、わずかながら変更が加えられている。日付は、初代の3時位置から4時と5時の間に移動し、テリトリーをめぐって夜光インデックスと争うことはない。その結果、文字盤はシンメトリックにまとまっている。夜光インデックスはアプライドで、上からポリッシュがかけられ、文字盤にペイントしただけのインデックスよりもはるかに高級感がある。回転式ダイバーベゼルを解除するセーフティボタンにも、同じことが当てはまる。ステンレススティール製のプッシュボタンには、初代のカラープラスチックに代わってアルマイト処理を施したオレンジカラーのアルミ製リングが採用された。美観が向上したばかりか、硬度も大幅に増した。