【94点】ロレックス/ オイスター パーペチュアル GMTマスターⅡ

FEATUREスペックテスト
2018.11.05

今回、プロフェッショナルモデルとしては初めてGMTマスターⅡのステンレススティールモデルにジュビリーブレスレットが装備される。

 ロレックスはかつて、GMTのベゼルを赤と黒のバージョンで作ったことがあるものの、原点である1955年に発表された初代GMTマスターは赤と青のベゼルを備えていた。このカラーコンビネーションが選ばれたのは、24時間表示を装備するためだった。だからこそ、新作の赤と青ベゼルのGMTマスターⅡは、最もオリジナルに忠実な復刻版と言えるのだ。

 初代GMTマスターが発売された当時、赤と青という色使いは、デイ/ナイト表示とセカンドタイムゾーンを明確に区別できるように選択された。こうした条件は、GMTマスターが誕生するきっかけとなった、パイロットたちからの要望によるものである。ジェット旅客機の導入により、大陸間の飛行時間が大幅に短縮され、大陸間運航そのものが広く世に知られることとなった。そして、大陸間運航の便数が増えるとともに、セカンドタイムゾーンを搭載した腕時計への需要も高まった。パイロットウォッチというオーラをまといながら一目でGMT機能が搭載されていることが分かる色使いも、当時、GMTマスターの名を高めるのに貢献した。

 2005年まで、ロレックスは極めて慎重ながらも赤と青ベゼルモデルのデザインに少しずつ手を加えていった。だが、GMTマスターⅡのステンレススティールモデルでセラミックス製ベゼルが導入されたのを機に、赤と青ベゼルモデルは製造終了になってしまう。これはツートンカラーのセラミックス製ベゼルを製造することは当時、技術的に非常に困難とされていたからだ。さらに、ハイテク素材であるセラミックスを満足いく品質で赤く発色させることも難しかった。ロレックスが前者の問題を解決したのは2013年のことである。初めて登場したツートンカラーのセラミックス製ベゼルは、青と黒のカラーコンビネーションで大人気を博した。2014年、ロレックスは後者の問題をも解決し、赤と青のベゼルが再び導入されることとなった。だが、このベゼルが搭載されたのはホワイトゴールド製モデルだけだった。GMTマスターⅡの18Kホワイトゴールド製モデルは価格が300万円以上で、ロレックスのステンレススティール製プロフェッショナルウォッチを愛する多くのユーザーにとっては高額すぎた。そしてロレックス ファンの要望に応じるかのように、ロレックスは2018年、赤青ベゼルモデルを再びステンレススティールでリリースした。

 ステンレススティール製の赤青ベゼルモデルと高額の18Kホワイトゴールド製モデルがすぐ見分けられるように、ステンレススティール製モデルにはGMTマスターⅡで初めてステンレススティール製の5列リンクのジュビリーブレスレットが採用された。この5列リンクのジュビリーブレスレットの方が3列リンクのオイスターブレスレットよりも上品な印象を与える。

 ロレックスは1945年にデイトジャストのためにジュビリーブレスレットを開発した。GMTマスターⅡのオイスターブレスレットはこれまで通り、内側のリンクにはポリッシュ仕上げが、外側のリンクにはサテン仕上げが施されている。

 ジュビリーブレスレットは着用感が極めて心地よい。ひとつひとつのリンクが小さく、丸みを持たせてあることから手首の形状によくなじむ。ブレスレットとケースの素材はこれまで通り、耐食性に優れる904Lステンレススティールである。ロレックスは2018年より、この合金を「オイスタースチール」と呼んでいる。 

秀逸なクラスプとリュウズの操作性

 デイトジャストとは異なり、GMTマスターⅡのジュビリーブレスレットにはオイスタークラスプではなく、プロフェッショナルモデルで通常装備されているオイスターロッククラスプが採用されている。このクラスプはセーフティーキャッチを備えている点以外、オイスタークラスプと外観がとてもよく似ている。ブレスレットを約5㎜延長できるイージーリンクシステムは非常に実用的で、気温が高い時やスポーツをする際に手首が若干むくんだ場合などに、クラスプからエクステンションリンクを半分取り出すだけで外観をまったく変えることなくブレスレットを長くできるので便利である。

 ジュビリーブレスレットのクラスプは、加工の点でも操作性においても非常に優れている。セーフティーキャッチを閉じておけばクラスプが不用意に開いたりすることはない。ロレックスの王冠が配されたセーフティーキャッチを開けると、その下にレバーが現れる。このレバーを持ち上げれば、ブレスレットを簡単に開くことができる。

 巻き上げ用のリュウズも操作が簡単だ。時計を巻き上げるにはロックを解除する必要がある。そして、1段引き出したポジションでは、別のタイムゾーンの時刻に合わせるため、時針を1時間刻みで前後に動かすことができる。この時、日付も連動して両方向にジャンプする。2段引き出したポジションでは、分針(および分針と連動している24時間針と通常の時針)を修正することができる。この時計では、時針でローカルタイムを表示し、24時間針はホームタイムか、パイロットにとって重要なGMTの表示に使用するのが有用だろう。

 ロレックスのGMTマスターⅡはこのように、トラベルウォッチとして実際に使える機能を搭載した腕時計である。市場には、セカンドタイムゾーンを搭載していても、旅行時にはあまり実用的ではない24時間針のクイックコレクト機能しか搭載されていない時計もある。

GMTマスターⅡでは、1時間刻みでしっかりと噛み合うベゼルを使用して別のタイムゾーンを一次的に設定することもできる。この機能は、例えば、ドイツにいてアメリカの会社と仕事をする場合など、現地の時刻を素早く知ることができて便利である。

 GMT針が知りたいタイムゾーンの時刻を表示するようにベゼルを回すと、ビジネスパートナーに連絡が取れるかどうか、いつでも確認することができる。GMTマスターⅡのタイムゾーン機能はこのように、極めて実用的なのである。