今回は、ベル&ロスが2025年11月に発表した「BR-03 GMT コンパス」をインプレッションする。本作は、航空機の計器から着想を得たベル&ロスらしいスクエアシェイプのケースに、24時間針によるGMT表示と、太陽の位置を利用したコンパス機能を盛り込んだモデルだ。今回のインプレッションでは、評価の高いベル&ロスの優れた外装仕上げと、大柄ながら良好な着用感についてレビューしつつ、特徴となるGMT表示とコンパス機能の詳細について解説する。

自動巻き(Cal.BR-CAL.303)。パワーリザーブ約54時間。SSケース(縦42×横42mm、厚さ12.3mm)。100m防水。世界限定500本。67万1000円(税込み)。
Text & Photographs by Shin-ichi Sato
[2026年5月12日公開記事]
GMT表示やコンパスとして使用可能な多機能性が魅力。「BR-03 GMT コンパス」
今回インプレッションするベル&ロス「BR-03 GMT コンパス」は、2025年11月に発表された世界限定500本のモデルである。全体のデザインは、ベル&ロスが航空機の計器としてパネルに組み込まれた時計から着想を得て、現在では同社のシグネチャーとなっている、スクエアシェイプのケースとラウンド文字盤の組み合わせを継承したものだ。そして、24時間針と24時間表示の回転ベゼル、方位スケールを持たせ、GMT表示(第2、第3時間帯表示)あるいはコンパスとしての機能を実現していることが特徴だ。
インプレッションでは、ベル&ロスの優れた外装の仕上げと、縦横42mmという大柄なケースを持つ本作の着用感について評価しつつ、各機能について詳しく解説する。
ベル&ロスの評価の高さが分かるケースの仕上げとデザイン
近年のベル&ロスは、外装仕上げの品質の高さに定評がある。BR-03 GMT コンパスにおいても、その評価に違わぬ仕上がりを見せていた。本作のケースは、ミドルケースをケーストップとケースバックで挟む構造である。ケーストップは浅く繊細なサーキュラーのヘアライン仕上げで、面取り部はポリッシュとなる。ケースの各パーツを締結するマイナスネジはポリッシュ仕上げで、“マイナス”の直線が時計中心を向くようにそろえられている。

ベゼルの側面には細かな刻みが施され、リュウズはローレット仕上げでエッジが効いており、ツールウォッチらしいストイックな印象を生み出している。ミドルケースの側面は縦方向のヘアライン仕上げで、ケーストップおよびケースバックのエッジ部に施されたポリッシュとのコントラストが楽しめる。フラットな仕立ては薄く見え、引き締まっていて見栄えが良い。このように、さまざまな角度から見ても楽しむことができ、本作の満足度は高かった。

カラーリングについては、ブルーとブラックのツートンの回転ベゼルやホワイトの時針、ホワイトとレッドの24時間針などビビッドな色遣いだ。以上から、スクエアシェイプのケース、良好な仕上げとツールウォッチらしいディテール、計器を思わせるくっきりとしたカラーリングなどからベル&ロスらしさが感じられ、魅力的であった。
驚きの着用感の良さで高評価
手首に巻いてみると、優れた着用感に驚かされる。“サイズの割に良い”のではなく、絶対評価として着用感に優れている。ケースは縦横42mmの正方形で、厚さは12.3mmであり、ケースバックの飛び出しがないシルエットだ。

手首周長約18cmの筆者ではラグ部の浮きがなく、フィットしている。ラグのストラップ可動部間が筆者実測で47mmと、ラグを短く切っていることが効いているのだろう。また、非常に幅広なストラップはグリップ力があって時計を安定させるため、これも着用感の良さにつながっている。大柄であるがゆえに“どんなユーザーでもフィットする”とは言い難いが、筆者よりも手首の細い方でも良好な着用感が得られる可能性があるため、店頭で手に取ってみることをお勧めしたい。

日付のクイックチェンジが可能な利便性の高いムーブメント
搭載される自動巻きムーブメントのCal.BR-CAL.303は、時分秒に加え、日付表示と24時間表示機能を備える。リュウズを2段引いた状態で秒針が停止し、時分針の修正が行える。1段引いた状態で、リュウズを12時方向に向かって回転させると24時間針の単独修正となって1時間進む。1段引いた状態でリュウズを6時方向に向かって回転させると、日付のクイックチェンジとなって1日進む。
この操作系から、Cal.BR-CAL.303は、24時間針の逆回転ができない代わりに日付のクイックチェンジが可能なムーブメントと言える。比較対象として、24時間針の逆転機能を備えるムーブメントに目を向けると、タイムゾーンを行き来する場合には利便性が高いものの、何日分も日付を修正するためには24時間針をぐるぐると回転させる必要があるものが多く、設計思想の違いが表れる。どちらを好むかはユーザー次第だが、筆者は本作の操作系の方が好ましいと感じた。なお、日付は時分針と連動していることには留意いただきたい。
Cal.BR-CAL.303のパワーリザーブは約54時間と、必要十分で安心感がある。厳密なテストはできなかったが、インプレッション中に不足を感じることはなかった。
BR-03 GMT コンパスをGMT表示モデルとして活用する

本作をGMT表示モデルとして活用してみよう。この場合、時分針をローカルタイム、日本に居る場合は日本時間に設定する。そして、回転ベゼルの0時位置と12時方向を合わせた状態で、24時間針のうち蓄光塗料が施されたホワイト側をGMT(あるいはUTC)にセットする。すると、ローカルタイムとGMTが同時に表示されることとなる。なお、日付表示はローカルタイムに連動しているので注意が必要だ。
ここから、3番目のタイムゾーン、例えばサマータイム中のニューヨーク(GMT-4)の時間を表示したい場合、回転ベゼルを時計回りに4ノッチ進める。この状態で、24時間針とベゼル上の表示によって、3番目のタイムゾーンを表示することができる。
BR-03 GMT コンパスをソーラーコンパスとして活用する

では次にコンパス機能の使い方を説明する。このコンパスは、「ソーラーコンパス」と呼ばれる太陽の位置を利用した方位表示機能であり、24時間針を活用する。
ソーラーコンパスとして使用するための事前準備として、24表示針のホワイト側をローカルタイム(日本なら日本時間)にセットしておく。また、回転ベゼルの0時位置と12時方向を合わせておく。ここから、写真に示した実例に沿って説明しよう。
写真は午前7時の状態であり、24時間針は回転ベゼルの7時位置を指している。この状態で、24時間針のホワイト側が太陽の方向(ギターのピックの先端が太陽の方向であるとする)に向くように、時計を回転、あるいは自分が回転する。向きを調整出来たら、方位スケールの“N”が北を指した状態となる。なお、この時の24時間針のレッド側は、ソーラーコンパスの機能には影響しない。
さて、ソーラーコンパスを正確に作動させるためには、厳密には24時間針を“視太陽時”に合わせる必要がある。一方、本作は時分針と連動し、単独では1時間刻みでしか調整できない。日本国内であれば視太陽時と日本標準時との差は±15分程度となるため、この差が方位の差として影響することになる。ただ、24時間針と太陽の方向は目視で合わせることとなり誤差も生じるので、運用上は問題なさそうだ。なお、ソーラーコンパスとしての活躍頻度が低かったとしても、この運用であれば24時間針は日本時間に合わせられることとなり、24時間針が無駄になることはない。
BR-03 GMT コンパスの視認性の評価
本作は方位計としての視認性は高い。ホワイトとレッドのツートンの針は、両端ともに文字盤縁のスケールまで届いており、方位の読み取りがしやすい。一方、時計としての視認性はやや低い。時針は明確で読み取りやすく、分針は分スケールまでしっかりと届いていて、しっかりと視認すれば正確に読み取ることができる。しかし、分針が細いデザインのため他の針に紛れてしまうことや、文字盤上の十字のデザインと重なって見失うことが多かった。また、秒針はダークなブルーで、文字盤とのコントラストが低い。インプレッション中、時間の読み取りに迷ってしまうことが多く、使いこなすには習熟が必要と感じた。
ベル&ロス BR-03 GMT コンパスの総評
本作は、ベル&ロスらしい、計器から着想を得たストイックなスタイリングをベースとして、品質の高いポリッシュ仕上げとヘアライン仕上げが施されている。これらがコントラストとなり、上質なツールの持つ質感を楽しむことができて満足感がある。特にケースサイドの仕上げの使い分けは、デザイン全体に説得力を付与しているように思う。ビビッドでインパクトのある色遣いの文字盤はツールウォッチ然としていて、魅力を感じるユーザーも多いことだろう。
縦横42mmのスクエアシェイプのケースは、マッシブさが感じられるスタイリングでありながら薄い仕立てで、パッケージングの良さによって着用感が良い。このサイズ感で、これだけの着用感を提供できている点は評価に値する。
機能面では、24時間針の単独修正と日付のクイックチェンジの両立を行っていて利便性が高い。方位計としての視認性に優れる一方で、本作の時計として機能に期待するならば、測時に慣れが必要なモデルとなっている。この点に注意して、店頭でチェックすべきだろう。



