ロンジンが2026年新作として投入した、「コンクエスト ヘリテージ セントラル パワーリザーブ」のライトブルーモデルを深掘り。歴史的な機構とモダンなカラーダイアルを組み合わせた本作は、復刻の名手たるロンジンの矜持を感じさせる快作だ。
Text by Tsubasa Nojima
[2025年9月XX日公開記事]
1959年の傑作を現代によみがえらせた、「コンクエスト ヘリテージ セントラル パワーリザーブ」
「コンクエスト」は、1954年に誕生した、ロンジンを代表するコレクションだ。同時に、ロンジンにとって初のコレクション名を冠した腕時計であり、そのため多彩なバリエーションが展開され、着実な進化が遂げられてきた。例えば初期には手巻きムーブメントを搭載していた一方で、1955年にはラチェット式の自動巻きムーブメントCal.19ASを搭載したモデルが登場。さらにリバーサー式のCal.290系を搭載したモデルがリリースされたり、あるいは貴金属を使ったラグジュアリーなモデルが登場したりと、その拡充はブランドの代表と言うにふさわしい。このさまざまにあるコンクエストのうち、その歴史を現代へとつなぐコレクションが、「コンクエスト ヘリテージ」だ。
コンクエスト誕生70周年となる2024年、「コンクエスト ヘリテージ セントラル パワーリザーブ」がラインナップに加えられる。コンクエスト ヘリテージがCal.19ASを搭載した初期モデルをモチーフとしているのに対し、本作が着想を得たのはCal.290系を搭載し、ふたつの回転ディスクを採用した1959年のモデルだ。オリジナルの特徴であるセントラル パワーリザーブを再現した本作は、ロンジンの復刻モデルに懸ける情熱を示すものとして、多くの時計愛好家から注目を集めた。そして2026年、そのラインナップにライトブルーモデルが加わった。

2024に登場した「コンクエスト ヘリテージ セントラル パワーリザーブ」に、新たにライトブルーダイアルが追加された。独創的な機構を備えつつ、よりモダンな印象を獲得している。自動巻き(Cal.L896.5)。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径38.00mm、厚さ12.30mm)。5気圧防水。63万4700円(税込み)。
2枚のディスクが生み出す、独創的なパワーリザーブ表示
コンクエスト ヘリテージ セントラル パワーリザーブを特徴付けているのが、ダイアル中央のパワーリザーブインジケーターだ。一般的なパワーリザーブインジケーターは、固定された目盛りの上を針などのポインターが移動し、主ゼンマイの残量を示す構成を持つ。しかし本作では、大きく異なる表示方法を採用しているのだ。
そのパワーリザーブインジケーターは、2枚の回転ディスクによって構成されている。内側のディスクにはバトン型のポインターが記され、その外側には「0」から「64」までの目盛りを記したディスクが配置されている。ポインターだけではなく、目盛りそのものも回転することで、主ゼンマイの残量を表示するのだ。
主ゼンマイがほどけ切った状態では、ポインターは0を指している。ここからリュウズ、または自動巻きローターの回転によって主ゼンマイを巻き上げると、まず外側のディスクが回転していく。主ゼンマイがフルに巻き上げられると、内側と外側のディスクが一緒に回転するため、ポインターは64を指した状態を保つ。主ゼンマイがほどけていけば、パワーリザーブの残量に応じて表示も減少していくという仕組みだ。この表示方法について、機能的な優位性はほとんどないだろう。しかし、機構を新たに開発してまでもオリジナルの仕組みを忠実に再現した点において、本作にはロンジンが持つ過去の歴史をリスペクトする姿勢が顕著に表れているのである。
もちろん、実用性を重視する同社らしく、基本的なスペックにも抜かりはない。搭載する自動巻きムーブメントCal.L896.5のパワーリザーブは約72時間を備え、さらに耐磁性に優れたシリコン製ヒゲゼンマイも採用している。防水性は、日常生活で十分な5気圧を備えている。オリジナルの特徴を受け継ぎつつも、デイリーユースにふさわしい現代的な実用性が与えられているのだ。

ライトブルーが複雑なダイアルに軽やかさを与える
今回の新作で最も注目したいのが、ダイアルだ。これまでコンクエスト ヘリテージ セントラル パワーリザーブには、オパーリン アイボリー、アンスラサイト、ブラックといったカラーバリエーションが用意されてきた。いずれも1950年代の時計を思わせるクラシカルなデザインとの相性が良く、とりわけオパーリン アイボリーのダイアルは、艶を抑えた柔らかな色調によって復刻モデルらしい雰囲気を強調するものであった。
今回発表されたライトブルーダイアルは、上品なオパーリン仕上げと相まって、よりモダンな表情が与えられている。既存のラインナップが持つ重厚さが、ダイアルカラーを変えるだけで一気に軽やかさへと転じているのだ。スーツスタイルでのアクセントとしてはもちろん、カジュアルなシーンにも適した汎用性を獲得している。
ベルトのバリエーションは、柔らかな雰囲気をまとったグレーのレザーストラップと、ステンレススティール製ブレスレットの2種類が用意されており、レザーストラップでリラックスしたスタイルを楽しむことも、ブレスレットでモダンに装うことも可能だ。ブレスレットにはマイクロアジャスト機構が搭載され、工具を使うことなく簡単に手首回りを調整することができる。

ステンレススティールブレスレット仕様もラインナップする。H型とスクエア型のリンクで構成されたブレスレットには、マイクロアジャスト機構が搭載されている。レザーストラップ仕様との価格差が抑えられていることも魅力だ。自動巻き(Cal.L896.5)。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径38.00mm、厚さ12.30mm)。5気圧防水。65万8900円(税込み)。
コンクエスト ヘリテージ セントラル パワーリザーブのダイアルは、一般的な3針時計に比べて情報量が多い。中央には時分秒針に加えてパワーリザーブインジケーター用のディスクがあり、台形の窓に囲まれた日付表示やミニッツマーカーの内側に施された二重のサークルなど、機能的・装飾的な意匠の数々が採用されている。そうありながらも煩雑さを感じさせないのは、シンメトリーなレイアウトや、ダイアルに合わせたカレンダーディスクの色など、まとまりを感じさせる工夫が取り入れられているためだろう。情報量の多いダイアルはどうしても重い印象を与えがちだが、これらの工夫がその印象を排除し、ライトブルーの軽やかさを生かしている。
さらに注目したいのが、オパーリン仕上げとダイアルの立体感との関係だ。本作のダイアルは、複数のディスクや外周部に向けた湾曲、多面的なアプライドインデックスや立体的な日付窓を組み合わせることで、見る角度によって表情を変える奥行きが生まれている。淡い色調とオパーリン仕上げが過度な主張を抑え、特徴的なパワーリザーブインジケーターやアプライドインデックス、針といった各要素を際立たせている点も見逃せない。
小径化のトレンドを抑えた直径38mmのケース
ケースは、既存のモデルと同じ直径38mmのステンレススティール製だ。数年前までの3針時計の多くが40mm前後であったことを考えると、やや小ぶりなサイズ感と言えるだろう。さらにそのコンパクトさを強調しているのが、短めのラグだ。ケースの縦の長さは45.6mmに抑えられ、細腕であってもラグが手首からはみ出しにくい。また、要素の多いダイアルでは、小径化によって視認性が損なわれてしまうことがあるが、38mmであればその点も心配ない。着用感と視認性を両立させたサイズと言えるだろう。
基本的なケースデザインは、コンクエスト ヘリテージコレクションに共通している。オリジナルのプラスティック風防を想起させる形状のサファイアクリスタルや、クラシカルなラウンド型のケースは、いつの時代にも通用するタイムレスなデザインだ。ポリッシュとヘアラインの磨き分けや、輪郭をはっきりとさせるエッジなど、その仕上げは現行機にふさわしいものである。
ねじ込み式のケースバックはシースルー仕様となっており、内部のムーブメントを観賞することが可能だ。ローターのストライプ装飾やブリッジのペルラージュ、鼓動するテンプを楽しむことができる。

歴史的な機構を「色」で現代につなぐ
2024年に発表されたコンクエスト ヘリテージ セントラル パワーリザーブは、1959年のモデルが備えていたユニークなパワーリザーブ機構を現代によみがえらせた点において、高い注目を集めた。2026年新作として加わったライトブルーダイアルは、平たく言えばカラーバリエーションに過ぎない。しかし、それでも一切の退屈さを感じさせないのは、カラーの選択によって、オリジナルに範を取ったクラシカルなデザインをモダンに昇華させているためだろう。
復刻の名手と言われるロンジン。同社の手掛けるヘリテージモデルの魅力は、過去の時計をそのまま複製せず、オリジナルの尊重すべき部分を残しながら、ケースサイズやムーブメント、素材、そして色といった要素には現代的な解釈を加える点にある。そうして過去の意匠を現代へとつなぎ、新たな歴史を紡いできたのだ。歴史的な機構と現代的な色彩を同居させた本作は、その姿勢を物語る好例である。



