House of Brandsの傘下でその名を復活させた時計ブランド、ギャレ。ジュネーブ・ウォッチ・デイズ開催2日目にあたる2026年9月3日、4つのコレクションをリリースした。ブライトリングの姉妹ブランドとして時計市場に打って出たギャレの強みとは? 新コレクションの紹介とともに、ひもといていく。

自動巻き(Cal.Gallet 23)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SSケース(直径41mm)。58万9600円(税込み)。
Text by Chieko Tsuruoka(Chronos-Japan)
[2026年9月13日公開記事]
ジュネーブ・ウォッチ・デイズで4つのコレクションを発表
2026年9月2〜8日まで、スイス・ジュネーブで開催されたジュネーブ・ウォッチ・デイズ(以下GWD)。このイベントの2日目、ギャレが新作コレクションを発表した。
2025年、ブライトリングが買収し、House of Brands傘下のブランドとして復活を遂げたギャレ。1826年にラ・ショー・ド・フォンで計時機器メーカーとして創設され、世界で初めて有人動力飛行に成功したライト兄弟をはじめ、航空、モータースポーツ、セーリング、探検などといった分野で活躍する人々の計時を支えたブランドだ。この歴史を踏襲し、復活後も“Wanderlust(ドイツ語のwandern「探検する」とlust「憧れ」を組み合わせた用語)”をブランドコンセプトに、冒険心や探究心を駆り立てるツール感あふれるデザインのモデルを発表した。
今回発表されたギャレの新しいコレクションは「フライング オフィサー」「マルチクロン パイロット」「マルチクロン スポーツ」「ギャレ クラシックス」を4つの柱に、時計のヘッドの種類は11種に及ぶ。さらに多彩なストラップのバリエーションが設けられており、選択肢は非常に豊富だ。
なお、ギャレはブライトリングの姉妹ブランドというポジションで展開されるため、すでにブライトリングの一部ブティックおよび正規販売店で国内入荷が始まっている。

“長距離を旅するためのコレクション”として位置付けられる「フライング オフィサー」。3針モデルとクロノグラフモデルがラインナップされている。自動巻き(Cal.Gallet 17)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径40mm)。42万3500円(税込み)。

「探検や変化する環境に対応する」ことを目的に、1969年に誕生したパイロットウォッチの「マルチクロン パイロット クロノグラフ」。なお、モータースポーツにインスパイアされた「マルチクロン スポーツ クロノグラフ」も同時リリースされた。自動巻き(Cal.Gallet 23)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SSケース(直径42mm)。62万2600円(税込み)。

「上質な旅」をコンセプトに、ハイエンドに位置付けられるのが「ギャレ クラシックス」だ。3型リリースされ、いずれも往年の名作を彷彿させる、ヴィンテージスタイルが魅力的である。手巻き(Cal.B09)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径38mm)。91万8500円(税込み)。
“ミドルレンジ”における救世主
そんなギャレの大きな特徴は、フライング オフィサーが39万500円〜、マルチクロンが58万9600円〜(いずれも税込み)と、時計市場ではミドルレンジにカテゴライズされることだ。外国為替や世界的なインフレの影響で、現在、とりわけ日本では、高級腕時計の価格は総じて上がっており、かつてミドルレンジに位置していたブランドも、100万円超の販売価格となることが珍しくなくなってきた。この傾向に伴いミドルレンジがエアポケットとなり、50万円程度で購入できる腕時計を挙げるのが難しくなってきた。そんな中、ギャレはこのエアポケットをカバーする貴重な存在となる。消費者にとって朗報であるとともに、ギャレ自身にとっても、近年はブルーオーシャンになりつつあるポジションにうまく付けられたと言える。
とはいえ競合はいる。ロンジンを筆頭に、オリスやエドックス、セイコー プロスペックスなどは価格帯のみならず、「ツール感のある腕時計」という製品の傾向も似ている部分が多く、差別化や付加価値の創出はなかなかに困難もある。しかしギャレには、大きな強みがある。前述の通り、ブライトリングの姉妹ブランドであるという点だ。House of Brandsはギャレの製造およびアフターサービスについて、ブライトリングの生産システムの下に行うと公表している。確かにGWDで見たギャレの実機の数々は、外装クォリティが非常に高いと感じた。ツールウォッチらしく過度な装飾は持たないものの、近年のトレンドに即したポリッシュ、ヘアラインに仕上げ分けられたケースやブレスレットは表面に歪みがなく、また、エッジは落とされて肌あたりが良い。文字盤の質も高く、低〜中価格帯のモデルだとありがちな「いかにも切りっぱなしです」といったデイト表示の小窓の面取りは丁寧に処理され、蓄光塗料やプリントされたインデックスににじみは見受けられなかった。高級腕時計を製造してきたブライトリングと製造基盤を共有するというのも納得の出来映えである。

発色の良いブルーラッカー文字盤に白字にプリントされたインデックスがツールウォッチらしく判読性の高い1本。ベゼルの操作感も良好だ。自動巻き(Cal.Gallet 17)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径40mm)。42万3500円(税込み)。


針の塗りにもムラはなく、バリなども見られなかった。ブライトリングクラスの時計ブランドであれば当然なのだが、新しく知ったブランドでこういった高い品質を感じられるというのは購買の理由につながる大きなきっかけとなるだろう。自動巻き(Cal.Gallet 23)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SSケース(直径41mm)。62万2600円(税込み)。
こういった外装クォリティの高さは消費者に伝わりやすく、一方、フライング オフィサーとマルチクロンにはセリタの汎用ムーブメントを搭載することで価格を抑えての提供が可能となっており、ギャレは「ブライトリングが手掛ける高品質な腕時計を、手の届きやすい価格で入手できる」という稀有なポジショニングを実現しているのだ。また、品質管理やアフターサービスの面をブライトリングが担うというのも、消費者にとって得難い安心感となっているだろう。
なお、ギャレ クラシックスはブライトリングの「プレミエ」に搭載されている手巻きクロノグラフムーブメントCal.B09を採用しているため、販売価格は税込み91万8500円と、他のコレクションと比べて高く設定されている。もっともプレミエがSSモデルであっても税込み124万3000円であることを鑑みれば、前述したポジショニング通りの値付けであると言える。

ギャレ クラシックスはハイエンドの位置付けというだけあり、文字盤のインダイアルに段差が設けられたり、細かなサンレイ仕上げが施されたりする等、凝った造詣を有する。手巻き(Cal.B09)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径38mm)。91万8500円(税込み)。
ミドルレンジの価格帯であること、歴史を踏襲したツールウォッチの作り手であること、そしてブライトリングと生産システムを共有することを強みに、House of Brandsは消費者に対して、ギャレという新たな、そして魅力的な選択肢を提示したのである。

日本の時計愛好家にも勧めたい新生ギャレ
GWDで多彩な新コレクションをリリースし、復活のスタートを華々しく切ったギャレ。世界経済の影響にしろ、ブランド戦略にしろ、高価格帯の腕時計が増える中で、ミドルレンジで展開する姿勢は、その優れた外装クォリティと相まって好ましく映る。ブライトリングとは生産システムのみならず、販売網も共有するとのことなので、世界中の時計愛好家が実機に触れやすいという利点もあるだろう。日本でもすでに入荷が始まったと聞いている。まだ復活したばかりのギャレが、今後、時計市場でどのような評価がなされるのか、注視していきたい。




