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バーゼルワールド探訪記 グランドセイコーVFAの復活(1/1)

Photographs by Eiichi Okuyama

 2018年のバーゼルワールド、初日で一番衝撃を受けたのはグランドセイコーだった。何しろ、メカニカルに伝説のVFAが復活したのだから、衝撃どころの騒ぎではない。“Very Fine Adjusted”と銘打たれたグランドセイコーVFAは、1969年の発売当時、世界で最も高精度な機械式腕時計だった。ベースムーブメントは既存の61系または45系。しかし、天文台クロノメーター級の調整を施すことで、市販機のレベルをはるかに超える超高精度を誇った。

 VFAが出る、というニュースは以前に聞いていた。しかし、バーゼルの会場で実際に見た時計は想像以上だった。ベースとなったのは、グランドセイコーの超高精度機9S85。それをフルチューンし、34日間テストをしてVFAに仕立て直したという。セイコーが公表する日差は-1秒から+3秒。ただし、これは表向きの数値(例によって、かなり控えめだ)であって、実際はもっと出るはずだ。

 このVFAで面白いと感じたのは、調整で精度を追い込むというVFAのセオリーに忠実だったことだ。筆者が見聞きした限りで言うと、ベーブムーブメントはまったく同じ。しかし、何度も選別をかけたムーブメントを、さらに調整したという。セイコーの関係者に尋ねたところ、「姿勢差誤差も6姿勢以上で調整している」とのこと。6姿勢以上で調整する市販機は、筆者の知る限りグランドセイコーのVFAを除いて存在しない。価格は途方もないが、VFAであればやむを得ないだろう。何しろVFAとは、日産GT-Rのような存在なのだから。もっとも調整に手間がかかるらしく、限定20本とのこと。製造ラインを無視して作るのだから、この数もやむを得ない。

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 VFAほどではないが、9S85の精度を追い込んだ「スペシャル」も魅力的な時計だった。そもそも9S85はかなりの精度が出るので、追い込めばさらに高精度になるだろう。スペシャルは限定150本とのこと。

 ちなみに、この2本は同じ形のケースを持っており、VFAはプラチナ950、スペシャルは18Kイエローゴールド製である。ケースの造形はかなり複雑で、これまた既存のグランドセイコーよりもう一段上だ。とりわけ、ラグの裏側の処理は、今までのグランドセイコーになかったレベルだ。

 もっとも、筆者ならばSSケースのモデルを買うかもしれない。文字盤は、エンボス加工を施したラッカー文字盤。枯れたような色合いにしてあるため、腕上で目立たないし、ダイヤモンドカットを施したインデックスや針と大変マッチする。ケースサイズも39.5mmと、実用時計としては妥当だ。厚さも、グランドセイコーとしては抑えた13mm。自動巻きのメカニカルとしては、かなり頑張ったのではないだろうか。もっともこれも限定1500本だから、すぐになくなるだろう。

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 それともうひとつ、グランドセイコーに加わった女性用のメカニカルにも言及しておきたい。現在、女性用の自社製自動巻きを作れるメーカーは、ロレックス、オメガ、ブランパンおよびハリー・ウィンストン、ジャガー・ルクルト程度しかない。そこにセイコーは、最新の設計を持つ9S25で参入したのである。実際の設計はまだ見ていないが、凝った緩急針の形状を見る限り、精度は追い込みやすいだろう。また約50時間というパワーリザーブは、サイズの小さな女性用と考えれば十分以上である。今年はごく少数しか生産しないが、来年以降、大々的に量産する予定とのこと。

 セイコーにはプロスペックスに加わった復刻ダイバーなど、見るべきモデルがほかにも多くある。しかし、一番驚いたのは超高精度機VFAだった。まさか自分が生きている間に、VFAが復活するとは思ってもみなかった。正直、この仕事を続けていてよかった。(広田雅将)


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