Photographs by Yu Mitamura
鈴木幸也(本誌):取材・文
Text by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
「ひとつひとつ鑑賞するには時間がまったく足りない」。パテック フィリップ・ミュージアムを訪れたことがある
時計愛好家であれば、誰もが一度は閉館間際に噛みしめる、後ろ髪を引かれるような感情である。
それほど、スイス・ジュネーブの中心、プランパレ広場すぐ近くに位置するパテック フィリップ・ミュージアムは、
質の上でも数の上でも、“時”と“時計”の歴史を知る上で、今や欠かすことができない存在である。
そこに所蔵されたパテック フィリップ由来のコレクションを全収録した貴重なカタログが、
いよいよ日本で発売されることになった。その詳細をお届けする。
パテック フィリップ・ミュージアムは2001年、当時のパテック フィリップ社長のフィリップ・スターン氏の時計への比類なき情熱とリーダーシップによって実現した、スイスを中心とするヨーロッパの時計史を物語る稀少なタイムピースとともに、1839年創業のパテック フィリップがこれまで製作してきた歴史上の著名人が愛用した名品や、現代の時計デザインの原点となる傑作品が、数フロアにわたって展示されている世界を代表する〝時の殿堂〟である。 時計好きは言うまでもなく、今やジュネーブの観光名所のひとつとして、時計の知識の多寡を問わず、多くの来館者を集客する知名度を持つに至った。 とはいうものの、日本に住む多くの時計愛好家にとって、ジュネーブはそうやすやすと訪れるほど身近な都市ではないことも事実だ。「チャンスがあれば一度は行ってみたい……」。こうした想いで日々を過ごす方々が大勢だろう。 そうした〝夢見る時計愛好家〟に朗報をお届けする。同ミュージアムが所蔵する同社創業から1980年代までの歴史的なコレクションを、搭載ムーブメントを交じえて収録した初のミュージアムカタログの英語版が、いよいよ日本で発売されることになったのだ。そもそも数年前にフランス語版がスイスで発売されて以降、日本のみならず世界の時計およびパテック フィリップ愛好家から熱烈なラブコールが送られていた同書。その熱い想いに応えるべく、フィリップ・スターン名誉会長が決断した粋な計らいである。 |
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後年、間違いなく貴重な記録書となるパテック フィリップ・ミュージアム完全カタログ。その英語版が、いよいよ日本で発売される。懐中時計中心の第Ⅰ巻と、懐中時計と腕時計を掲載する第Ⅱ巻の合計928ページに1005点の時計を収録。ご希望の方は、下記までお申し込みください。 【お申し込み先】 パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター ☎03-3255-8109/E-mail: info@ppjapan.com もしくは全国の正規販売店まで(http://www.patek.com/jp/ で検索できます)。 |
2冊組みで合計928ページ。クロックからポケットウォッチ、そしてリストウォッチへと、スイスの時計史とともに歩んできたパテック フィリップの足跡が網羅されたこのカタログがあれば、日本にいながら、いつでもパテック フィリップの時計史に想いを馳せ、今欲しいあの現行品のオリジナルモデルも、ページを繰るだけで瞬時に鑑賞できる、まるでタイムマシンのような〝記憶装置〟だ。
スイスへの渡航費の数分の1で、一生楽しめる術を得られると思えば、決して高い〝投資〟ではないだろう。
The Message from Mr. Philippe Stern
このたび、パテック フィリップ・ミュージアムが所蔵するパテック フィリップのタイムピース・コレクションを全収録した初のカタログを出版させていただけることは私どもにとってこの上ない喜びです。
長年の収集活動の集大成となるこのカタログでは、1839年の創業時から1980年代までのおよそ150年にわたって製作され続けてきたパテック フィリップの比類ないタイムピース・コレクションの全貌を現物サイズの画像と文章で紹介しています。
40年以上の歳月をかけてタイムピースを収集し、コレクションを形成することができたとき、私はこのコレクションが美術館で収蔵されるに値すると美術館の開設を決意しました。そして、2001年にパテック フィリップ・ミュージアムを開館したのです。
当館は、ジュネーブやスイス国内および外国からの来館者の皆様に、パテック フィリップのタイムピースを通してわが街ジュネーブの偉大なる時計製作史について発見──もしくは再発見していただくことを目的とするとともに、時計製作の伝統技術を受け継ぎ、次世代への継承に貢献してきた昨今の時計製作者たちへオマージュを捧げています。
当館のコレクションは、すべての時計工芸のコレクターと愛好家、特にパテック フィリップの真価を認めてくださる皆様の興味を引くことと思います。当カタログを手にされる皆様が、コレクションの精緻な美しさと、そこに宿る物語を堪能していただけますことを心より願っております。
パテック フィリップS.A.
名誉会長
フィリップ・スターン