カレンダー表示進化論

FEATURE本誌記事
2017.04.06

カレンダー表示進化論

時計において、すべての表示はムーブメントによって規制され、そのレイアウト位置も大きく制限を受けることになる。
カレンダー機構において、その制約を軽減し、より見やすく、美しくするための工夫のひとつが、インダイアル+針より省スペース化が図れる窓表示式である。
まずは日付表示で採用された窓表示は、やがて曜日や月表示にも用いられ、永久カレンダーや年次カレンダーといった複雑機構の外観をモダナイズしてきた。
デザインを制約するそのメカニズム自体も、遊星歯車を用いた「連続型」の発明によって、より使いやすく、またレイアウトの自由度も高めていった。

ロレックス「オイスター パーペチュアルデイデイトⅡ Ref.218206」
デイデイトは、ゴールドとプラチナのみの展開でプレステージ感が高い。円弧の小窓にフルスペルで示す曜日表示は見やすく、またダイアルの美観を損なわない。自動巻き(Cal.3156)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。Pt(直径41mm)。100m防水。546万円。問日本ロレックスTel.03-3216-5671

旧作のデイデイトが積むCal.3155のダイアル側。曜日ディスクと日付ディスクとが上下に重ねられている。曜日ディスクには7つの窓が開けられ、切り替わった際、下の日付数字をのぞかせる仕組み。右が曜日車を外した状態で、中央にはふたつのディスクを瞬時かつ同時に切り替えるメカニズムを集約。右側の星型車は、日付表示の早送り用。


見やすく、使いやすく、そして美しく

 古くからの時計ファンであれば、かつて1945年に誕生したロレックスの「デイトジャスト」が、「世界初の窓表示カレンダー」搭載機と言われていたことを覚えているかもしれない。しかし実際には、例えばドイツ・グラスヒュッテで1890年に製作された懐中時計が窓表示カレンダーを備えていたなど、比較的早い時代からカレンダーは、インダイアル+針に代わって、ディスクによる窓表示が試みられてきた。にもかかわらず、デイトジャストが〝元祖〟と呼ばれていたのは、日付表示搭載モデルのスタンダードを築いたからだ。

 その登場以前、腕時計においてカレンダー機構は、あまり関心が持たれていなかった。一部高級時計のみが備えるコレクターアイテムだったのだ。それをあえて実用機に搭載したデイトジャストは、大方の予想に反して空前の大ヒット。結果、デイトジャストが採用した3時位置の日付表示窓が、現代に至るスタンダードになったのである。

 窓表示の利点は、指針式と比べてダイアル上で省スペース化でき、レイアウトが整理しやすい点にある。そのメリットを生かしたのが、1956年に生まれたデイトジャストの発展型「デイデイト」だ。3時位置の日付表示窓に加え、12時位置に曜日表示窓を装備。しかも曜日は、フルスペルで表示される点において、デイデイトは異彩を放つ。その曜日表示窓は、インデックスの11時から1時の間に円弧上に開けられ、いかにもロレックスらしいダイアルのスタイルをいささかも破綻させてはいない。