カレンダー表示進化論

FEATURE本誌記事
2017.04.06

MIH「年次カレンダー」
ETA7750に年次カレンダーモジュールを追加。クロノグラフ機構も2時位置のワンプッシュ式に改良されている。3つが並ぶカレンダー表示の左端の赤いドットが昼夜表示で、赤い表示が上にあれば昼、下側にあれば夜。自動巻き(ETA7750ベース)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。チタン(直径42mm)。100m防水。6000スイスフラン(税込み)。問www.mih-watch.ch

ふたつの図版が、ダイアル側に追加された年次カレンダーモジュール。ふたつの遊星歯車を含む、わずか9個のパーツで日・月・曜日表示を持つ年次カレンダーと昼夜表示を実現した。各表示ディスク自体を歯車とするなど、パーツ数を減らす工夫が凝らされる。


ケースの裏蓋側の小窓には、ディスク式になったクロノグラフの30分積算計を搭載する。

 ユリス・ナルダンによる遊星歯車を用いた「連続型」永久カレンダーもまた、その後のカレンダー機構に多大な影響を与えた。逆戻しが可能なだけでなく、組み立て時に微調整が必要なレバー式と違い、歯車は調整不要で組み立ても容易にし、位置変更の自由度も高くするからだ。このメカニズムの設計者は、ルードヴィヒ・エスクリン博士。彼は同じ遊星歯車を用いた年次カレンダーも、MIH(ラ・ショー・ド・フォン国際時計博物館)のオリジナルウォッチのために設計している。2月末日以外の月の大小を自動判別する複雑機構。博士はこれを、わずか9つのパーツだけで実現したのだ。しかも昼夜表示も同時搭載してもいる。

 日・月・曜日の窓表示と、昼夜表示とを一直線に並べたデザインは、メカニズムと同様にシンプルを極める。カレンダー機構が、コンテンポラリーに表現された好例であり、傑作と言っていいだろう。