2025年4月にリリースされた、オシアナスの新作「マンタ OSW-S40-5AJF」を着用レビューする。Slim & Eleganceを追求するオシアナス マンタに加わった小径サイズの本作。このモデルの存在を知った当初はその価格設定に驚かされ、レディースウォッチ市場でどんなポジションとなっていくのだろうかなどと思った。しかしレビューを終える頃には、本作が女性のためのデイリーウォッチとして好適であるとともに、レディース向け高級時計市場の拡充を象徴するモデルのひとつであることに思い至った。

Photographs & Text by Chieko Tsuruoka(Chronos-Japan)
[2025年5月9日公開記事]
オシアナス「マンタ OSW-S40-5AJF」ってどんなモデル?
2025年は、オシアナスが誕生してから20周年となる。この節目を祝して誕生したモデルのひとつが、今回着用レビューする「マンタ OSW-S40-5AJF」だ。

タフソーラー。フル充電時約17カ月(パワーセービング時)。Tiケース(直径29.7mm、厚さ8.7mm)。10気圧防水。16万5000円(税込み)。
オシアナスは20年の歴史の中でバリエーションを拡充しており、そのうち「マンタ」は2007年6月に誕生した。世界最薄クロノグラフ「OCW-500」を初代モデルとし、以降、Slim &Eleganceを追求してきたシリーズである。薄くあることのみならず、凝った意匠や、従来のソーラーウォッチとは一線を画すカラーの表現によって、オシアナスの中でも高級感あふれる外装を特徴としている。
このマンタシリーズのうち、3針モデルである「OCW-S400」をベースに、小径薄型化してレディースモデルとして打ち出したのが本作だ。また、オシアナス初となるペールベージュを蒸着であしらったベゼル・文字盤に、オシアナスのレディースモデルとしては初となるサファイアクリスタル製のリングをベゼルにあしらったことも、大きな特徴である。
なお、本作にはカラー違いとして、オシアナス初のライトブルーモデル「マンタ OSW-S40-2AJF」や、直径41.3mmの「マンタ OCW-S4000SG」も登場している。
オシアナスでは「ペアウォッチ」として押し出されているように、パートナー同士でおそろいを購入するのも楽しいだろう。
20周年を迎えていっそう裾野を広げるオシアナスの、その最新作の実力を見ていきたい。
税込み16万5000円の販売価格は高いのか?
本作はペールベージュを蒸着処理によって文字盤にまとわせた腕時計だ。ブルーがシンボルカラーであるオシアナスにとっても、そして腕時計としても珍しい色合いが目を引くことはもちろん、驚かされるのはその質感だ。
ソーラー発電式であるため、他のソーラーウォッチ同様にこの文字盤は真鍮などのメタルではなく、光を通せるポリカーボネート製。カシオ独自のソーラー発電システム・タフソーラーによって、オシアナスにはインダイアル部分のみの受光だけで腕時計を動かすのに十分なエネルギーを得るモデルも存在するが、本作はシンプルな3針表示であることから、文字盤全体で光を透過させていることが分かる(ただしインダイアルソーラーであっても、そのほかの文字盤部分もポリカーボネートで製造されているモデルも多い)。しかしながら筋目が与えられ、ヘッドの角度を変えると光の筋が走る本作の文字盤は、まるで真鍮製のような質感を備えているのだ。ちなみにこのモデルのサイズ違いを同僚の細田雄人がインプレッションしているのだが、細田もこの文字盤の出来栄えに驚いていた。

サファイアクリスタル製のベゼルリングも、蒸着によってペールベージュカラーが与えられている。セラミックスとはまた違ったツヤのあるサファイアクリスタルのベゼルは審美性を高めるのみならず、傷や変色に強いというのがうれしい。不注意で腕時計を何かにぶつけてしまって、ベゼルに傷が付いてしまうという経験が自分には多く(そういった衝撃から時計を守るための機能がベゼルだけれども)、ツールウォッチならまだしも、こういったビジネスウォッチでは見た目に良くない傷をあらかじめ防げるというのが心強いと感じた。
正直、3針というベーシックな機能、しかもレディースのソーラー電波ウォッチに16万5000円(税込み)という販売価格は、かなり強気だと思った。コンペティターの同ジャンルを見ても、10万円前後のモデルがほとんど。そのため、このモデルを知った時は高いといった印象を覚えたが、いざ実機を手にして使ってみると、その価格に見合った高級機であることが分かった。
文字盤の質感の良さはもちろん、サファイアクリスタル製ベゼルがキラキラしていて、手元から存在感を放ち、とても満足度が高いのだ。ちなみにサファイアクリスタルは硬質で加工が難しく、風防以外に使われることは一般的ではなく、一部の高級時計に限られている。本作や「OCW-S7000」など、このサファイアクリスタルをベゼルに使って、しかも時には蒸着によってさまざまな色合いを実現したり、複雑な形状を持たせたりしつつも10~20万円台で押さえているオシアナスは、コストパフォーマンスにとても優れていると言える。ちなみにサファイアクリスタルは国内メーカーから供給されており、そのメーカーとオシアナスブランドが協力して、この価格帯での見事なベゼルを実現しているという。

チタン製のケースとブレスレットを備えているのも、この価格への満足度を押し上げる。軽量でケース・ブレスレットともに薄いため、とても着け心地がよい。ちなみにオシアナスは何度かインプレッションしており、そのすべてにおいて着用感の良好さが強く印象に残った。薄いながらも複雑な形状を取ったり、サテンとポリッシュで仕上げ分けしたりすることで、文字盤のみならず外装全体で高級感を腕時計にもたらしている。
さらに、バックルには微調整機能が付加されており、工具なしで3.8mmまでブレスレットの内寸を縮めたり伸ばしたりすることができる。この機能の利便性は言わずもがな、厚さはこの機能のない従来のモデルと大きく変わっておらず(実測したわけではないが)、オシアナスの開発陣の、そして本作のすごみを改めて実感できる点であった。

このように実機を見れば、16万5000円(税込み)という価格は決して高くなく、むしろコストパフォーマンが良いのだが、コンペティターが国産ソーラー電波ウォッチから、海外ブランドを含むクォーツ式時計や機械式時計になってくるので、市場でのポジショニングは難しそうだとも感じた。とはいえソーラー電波ウォッチにもこの価格が出てきたということは、レディース高級時計市場が広がり、その分多様化するユーザーのニーズに応える1本なのだと推測することができる。
ソーラー電波ウォッチの利便性は働く女性に最適

オシアナスを着用レビューすると、ついつい外装の出来栄えや優れた装着感にばかり話が終始してしまうが、優れた機能性も持ち味のひとつだ。
オシアナスは電波時計であるため、標準電波を受信すれば、常に正確な時刻を表示してくれる。クォーツ式腕時計でもそう頻繁に手動修正をすることはないが、1日1回、電波受信で勝手に時刻修正してくれる機能というのが思いの外便利で、忙しい毎日を助けてくれた。ちなみに手動で標準電波を受信する際は、ケース4時位置のプッシュボタンを長押しする。
個人的にオシアナスやG-SHOCKでとても便利だと感じているモバイルリンク機能が本作には備わっていない。モバイルリンク機能はBluetoothによってスマートフォンと腕時計をリンクさせて、スマートフォン上で各種設定を行えるというものだ。本作は国内で使用する分にはそもそも操作する機会が少ないので、モバイルリンクの必要性も低いのだろう。
女性のための高級ソーラー電波ウォッチというポジショニング
オシアナス誕生20周年にあたる今年リリースされた「マンタ OSW-S40-5AJF」を着用レビューした。
何度かオシアナスを着用レビューしてきたが、レディース向けモデルは初。小さくなっても、作り込まれた外装や利便性といったオシアナスの美点は健在である一方で、女性の手首にさりげなく華を添える上品さも持った本作は、16万5000円(税込み)というレディース用のソーラー電波ウォッチとしては高め設定の価格も納得の出来栄えであった。
文中で述べたように、オシアナスやG-SHOCKといったカシオウォッチの、おもなコンペティターである国産時計ブランドと比較して、レディース時計市場でのポジショニングが難しいのではないかとも思った。しかし、かつて機械式時計よりもカジュアルな位置付けであったソーラー電波ウォッチに、高級機が多数そろうようになった昨今。女性の時計ユーザーを対象とした市場の拡充に伴い、レディースモデルでもこのジャンルでの多様化が進んだ結果として、オシアナスがいち早く「レディース用高級ソーラー電波ウォッチ」を打ち出したと考えれば、本作はその先駆けであり、女性向け時計市場の拡大の象徴でもあると言える。今後、OSW-S40を筆頭に、ますますのこのジャンルの充実を願いたいところだ。