控えめな外観に、実は驚くほどの技巧と魅力が秘められている。オリエントスター「M34 F7 セミスケルトン」は、まさにそんな腕時計だ。ダイアルの開口部から覗くテンプや、深みのあるマザー・オブ・パール、そしてディテールに凝った仕上げが、実機を手にした瞬間から持ち主を魅了する。ルーペを片手に眺めたくなるような精緻な意匠の数々。その奥深い世界を『ウォッチタイム』アメリカ版に寄稿するマーティン・グリーンが解説する。
質感と設計で魅せる上位モデル
オリエントスター「M34 F7 セミスケルトン」は、写真でも十分魅力的に見えるが、実物に触れるとその奥深さに驚かされる腕時計だ。テンプが覗く開口部や、ゴールドカラーのローマ数字XIIが印象的だが、それ以上に、実機の質感や仕上げの精巧さが際立っている。

自動巻き(Cal.F7F44)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径40mm、厚さ13mm)。10気圧防水。14万3000円(税込み)。
このモデルはオリエントスターの中でも上位に位置し、その立ち位置は構造からもはっきりと伝わってくる。ステンレススティール製のケースは直径40mmで、存在感がありながらも大きすぎず、着け心地も良好。ベゼルは細く、ファセット加工が施されたラグの間にすっきりと収まっている。ケース厚は13mmで、程よい重みがあり、手首によく馴染む。リュウズは控えめなサイズで動作の邪魔にならず、しっかりとした溝により操作もしやすい。

自動巻き(Cal.F7F44)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径40mm、厚さ13mm)。10気圧防水。14万3000円(税込み)。
実用性も兼ね備えたディテール
このモデルは10気圧防水を備えているが、リュウズはねじ込み式ではない。これにより、リュウズをねじ込まずに手巻きや時刻合わせができるのは日常使いでの大きな利点だ。
裏蓋はねじ込み式で、サファイアクリスタル越しに自社製ムーブメントCal.F7F44を鑑賞できる。コート・ド・ジュネーブといった装飾、面取りされたブリッジなど、眺めていて飽きない仕上がりだ。自動巻きに加えて手巻きを行うことも可能で、時刻合わせ時には秒針が停止。パワーリザーブは約50時間と実用性も申し分ない。
こうした基本スペックに加えて、ダイアルとブレスレットの作り込みが、この腕時計を特別な1本に仕上げている。
視覚と触覚に訴えるマザー・オブ・パール
ダイアルには独特の光沢がある。これは、カラー加工を施したマザー・オブ・パールを使用しているためだ。パワーリザーブ表示やスモールセコンドには円形、もしくは半円状の立体的な装飾リングが配置され、繊細な立体感を演出している。これらの細部は、ルーペを使ってじっくり観察したくなるほどの仕上がりだ。
時分針は中央で折れ曲がっておらず、フラットな面を持たせることで、どの角度からも光を反射させて視認性が確保されている。抑え気味な光の反射が特徴的なインデックス、見返しリング、そして装飾リングの上部にはストライプ状の仕上げが施されているのだ。
ブレスレットにも宿る設計美
ブレスレットだって見どころ満載だ。一見するとオーソドックスなH型リンクのようだが、実際にはさらに凝った構造になっている。中央のコマがわずかに盛り上がり、そのその斜めの面にはポリッシュ仕上げが施されたものだ。その一方、真上から見えるコマにはヘアライン仕上げが採用されており、より立体的でメリハリのある印象を受けるはずだ。
このため、見た目にも立体感があり、着け心地も非常に滑らかだ。フォールディングクラスプの形状も快適性に一役買っている。マイクロアジャスト機構があればなお良いが、バネ棒を使って細かく調整できる点も好印象だ。
日常使いに映える、上質なオールラウンダー
こうしたディテールの積み重ねにより、「M34 F7 セミスケルトン」は非常に完成度の高いオールラウンドウォッチに仕上がっている。ケースやムーブメントの堅牢さ、着け心地の良さ、そして何より、マザー・オブ・パールのダイアルとゴールドのXIIが醸し出すさりげないラグジュアリー感。そこに、ダイアルの開口部から見えるテンプが動きを添え、毎日眺めたくなる魅力がある。日常使いにも、特別な場にも似合う1本だ。