キングセイコー「VANAC」のダイアルに投影された自然現象。 色解説と、おすすめコーディネートも伝授!

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2025.12.18

キングセイコー復活から約3年。今年発表された「VANAC」は、デザインはもちろんのことカラーリングも特徴的だ。デザインコンセプトは「TOKYO HORIZON」。東京の地平線に現れる空模様をダイアルに投影している。今回は定番3モデルのダイアル色を、空で起こる自然現象に当てはめながら色と共に解説していく。さらに、各モデルにお勧めの休日コーディネートを伝授する。

キングセイコー VANAC

伊藤むつよ:文・写真
Photographs & Text by Mutsuyo Ito
[2025年12月18日公開記事]


「VANAC」定番の3モデルのダイアル色を解説

キングセイコー VANAC

 今回発表された定番モデルのダイアル色は3パターンある。パープル、ネイビー、シルバーだ。針や日付窓枠、12時位置インデックスはモデルにより色が変えられており、パープルダイアルとシルバーダイアルにはゴールドが、ネイビーダイアルにはシルバーが使用されている。まずは、それぞれのコンセプトである「夕暮れ時」「真夜中」「日の出」に当てはまる自然現象を、色と共にひもといていこう。

SDKV001「夕暮れ時」とブルーアワー

SDKV001

 SDKV001のダイアルは目の覚めるようなパープルだ。針、日付窓枠、12時位置インデックスにはイエローゴールド色が使用されている。ダイアルに使用されているパープルの補色であるイエローゴールド(イエロー)がアクセントとなり、互いを鮮やかに引き立てあっている(補色とは、色相環[色を環上に並べた図]上で正反対の位置にある色の組み合わせのこと。つまり、パープルの補色はイエローである)。

SDKV001

 このモデルは「夕暮れ時」をコンセプトにしており、日没直後の地平線を表現している。一見するとパープルのグラデーションかと思いきや、ダイアルの角度によっては深いブルーが見え隠れする(ブルーが見えやすい角度は下記の画像を参照)。

SDKV001

 このダイアル色が空に出現する時間帯を「マジックアワー」という。マジックアワーとは太陽が地平線に非常に低い位置にある時、つまり日の出と日の入り前後に訪れる、自然光が作り出す特別な時間帯のことだ。このマジックアワーには、主にゴールデンアワーとブルーアワーというふたつの異なる光のフェーズがある。

画像提供:ラッコ(Xアカウント @watchcherryblo)

 ゴールデンアワーが暖色系(オレンジ、イエロー、レッド)の光なのに対して、ブルーアワーは寒色系(パープル、ブルー)とオレンジの光となり、出現する時間帯が若干異なる。SDKV001のダイアル色はまさに「ブルーアワー」の空色と言えるだろう。パープル〜ブルーに加えてオレンジが地平線に見えるのも特徴だ。針等にアクセントとして使われているイエローゴールド色が、日が暮れてビル群に灯るライトがリンクして見えるのは筆者だけではないだろう。

画像提供:ラッコ(Xアカウント @watchcherryblo)

SDKV003「真夜中」と夜天光

SDKV003

 SDKV003のダイアルは重厚感を感じるネイビーだ。針、日付窓枠、12時位置インデックスにはシルバー色が使用されている。全体の色はグレー(シルバー)、ネイビー、ホワイト、ブラックと、本体のステンレススティールの色とかけ離れた色を使用していないため、全体的に静寂さや落ち着きを感じる。

SDKV003

 このモデルは「真夜中」をコンセプトにしており、都会の夜空を表現している。真夜中という言葉を聞くと、真っ暗闇に月と星が光輝くイメージではないだろうか。しかし、都会でその光景はなかなか見る事ができないだろう。むしろ、天体がほぼ見えないにも関わらず、夜空全体がかすかに光を帯びているように見える事の方が多いかもしれない。

 この時に現れる光を総称して、夜天光という。この夜天光の出現と、人間の視覚の特性により、夜空にグレーやネイビーを感じる事がある。東京の真夜中を表現したダイアルには、この現象がしっくりくる。

SDKV005「日の出」と鏡面反射

SDKV003

 SDKV005のダイアルはほのかにパール感を感じるシルバーだ。針、日付窓枠、12時位置インデックスにはイエローゴールド色が使用されている。シルバー×ゴールドという定番の組み合わせによって安定感を感じるモデルだ。

SDKV003

 このモデルは「日の出」をコンセプトにしており、朝日に照らされる都市の輝きを表現している。早朝のビル群では、太陽がガラス張りの高層ビルや金属製の外壁のような滑らかな表面の物に当たり、光の大部分が一方向に反射することがある。これを鏡面反射という。この現象が起こると、目に届いた光がシルバー色に見えることがある。このダイアル色の表現はこの現象に当てはまるのではないだろうか。


VANAC着用、おすすめの休日コーディネート

 キングセイコーの中でも「VANAC」は休日カジュアルに合わせやすいモデルと言えるだろう。そこで、各モデルのおすすめコーディネートをご紹介する。

SDKV001×レトロチックな雰囲気

SDKV001

 定番3モデルの中で最も個性的と言えるのがこのモデルだ。パッと目を引くパープル色は、服に合わせづらいと思う方も多いかもしれない。無難にモノトーンやデニムでコーディネートするのもいいが、あえて色を多用したレトロチックな組み合わせにしても相性が良い。この色の組み合わせは、一見なんの法則もない様に見えるが、ダイアルの類似色で配色している。

SDKV001

 類似色とは、色相環上で隣接する、色相が近い色同士の組み合わせだ。シャツのネイビーはダイアル色のパープル〜ブルー、パンツのカーキベージュは針等のイエロー(ゴールド)の類似色である。時計の顔といえるダイアルと、コーディネートの中で広い面積を占める服の色をこのような法則でまとめることで、喧嘩しそうな組み合わせに一体感を持たせることができる。アクセントとなっているレッド柄は、ダイアルと同じ色特性つまり、色のコントラスト大・彩度(=鮮やかさ)高めにすることで、バランスをとった。

SDKV003×マリンスタイル風

SDKV003

 日本人が一番落ち着く配色と言っても過言ではないのが、このモデルではないだろうか。グレー(シルバー)×ネイビー×ホワイトの組み合わせはビジネスシーンで最も目にする組み合わせだ。そこでその色の組み合わせのまま、休日スタイルに落とし込んでみた。ボーダー柄を使ってマリンスタイル風に仕上げると、少しお堅く見えそうな配色の時計も軽やかにつけこなすことができる。

SDKV005×脱ビジネス感!爽やかテイスト

SDKV005

 定番3モデルの中で一番ビジネス感が出やすいのがこのモデルだ。そこで、敢えてミントグリーン×ホワイトのような明るい色の組み合わせをお勧めしたい。明るい色同士の組み合わせにすることで、時計のダイアル色が持つかしこまったイメージが、爽やかなイメージへと変化する。特に爽やかさを演出したくなる暑い時期は、ホワイトのパンツを1本持っておくとコーディネートの幅が広がるのでお勧めだ。


「TOKYO HORIZON」を腕にのせて

 忙しない毎日の中で、ふと空を眺めることがどのくらいあるだろうか……。天気の確認で見上げるくらいの方がほとんどかもしれない。そんな忙しい毎日を送るあなたの腕に「VANAC」が投影した「TOKYO HORIZON」を載せて、日々に彩りを添えてみるのもいいかもしれない。


筆者プロフィール

伊藤むつよ
時計メーカーの色彩監修やイメージコンサル、催事会場でのパーソナルカラー診断や接客講師など、販売現場の「品・場・人」にまつわるコンサルティング業務を行う。時計修理技能士2級・J-color認定講師・カラーセラピスト等多数の資格を保有。株式会社parakeITO代表取締役。HP:https://www.mutsuyo-ito-parakeito.com/


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