日本時計輸入協会が主催するウオッチコーディネーター資格検定。販売従事者の専門性向上はもとより、時計愛好家にとっても新たな発見と深い理解をもたらす学びの機会として注目を集めている。資格取得者が語る、腕時計への理解が変わる瞬間とは。

Text by Takashi Tsuchida
Edited by Yousuke Ohashi (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2025年11月号掲載記事]
専門知識を身につけられる「ウオッチコーディネーター」検定

ゼニス ショップ 伊勢丹新宿店でクライアントアドバイザーを務める森田雄大さんは今年、CWC上級資格を取得した。「今までは腕時計の歴史やデザインといったところは詳しかったのですが、より専門的な機械や組み立て、そしてマネージャー職に必要な知識などが不足していました」と振り返る。受検を通じて、それらの知識が大幅に向上したと言う。
特に印象的だったのは、ムーブメントの学習だ。「上級では写真が細かく載っていて、50項目程度ありました。これをひとつずつ覚えていくのが大変だった半面、しっかりとマスターしたことで、お客様にもよりご納得いただける提案ができるようになりました」と語る。もちろんCWCで学ぶのは腕時計の技術だけではない。森田さんにとって特に有益だったのが、自分ひとりではたどり着けないような専門情報を体系的に学べたことだ。「時計業界全体でゼニスがどういうポジショニングなのかも、鮮明に分かりました」と、ブランドの位置付けを再認識できたことを挙げる。

およそ3カ月間の勉強期間中は、仕事終わりにテキストを読み、学んだ内容を顧客に説明するつもりでノートに書き込んだ。「ただ読むだけでは記憶は定着しないですから」と語る森田さんにとって、そのノートは今も大切な宝物だ。実技研修では、実際に自分の手を動かしてムーブメントを分解。「技術者の大変さを知ることができました」と振り返り、この経験から技術者への敬意を深めたと言う。
そして何より、ブランドへの愛着が一層高まったという森田さん。「現在に至る経緯を知ると、目の前の腕時計が愛おしく見えますよね」。このようにCWCは販売員のスキルアップはもちろん、時計愛好家にとっても、腕時計の世界をより深く楽しむための知識の入り口となる資格なのである。




