ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)2025の受賞モデルを一挙紹介。 「金の針賞」はブレゲ!

FEATUREその他
2025.12.23

2025年11月13日、「ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)」の授賞式が開催された。第25回という節目を迎えた今回も、各部門に注目作の数々がノミネートされる中、今年を象徴するような19本のタイムピースが選出された。当記事では、その部門ごとの受賞モデルを一挙に紹介する。

新居賢人:文
Text by Kento Nii
[2025年12月XX日公開記事]


GPHG 2025の受賞作品を一挙紹介

 スイス・ジュネーブにて、第25回ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)の授賞式が開催された。 “時計界のアカデミー賞”とも称されるこの式典では、最高位となる「金の針賞」を含む、全20部門の受賞作品と人物が発表された。本記事では、時計に絞って受賞した作品を、まとめて掲載する。


最高位 金の針賞(AIGUILLE D’OR Grand Prix)

ブレゲ クラシック スースクリプション

ブレゲ「クラシック スースクリプション 2025」Ref.2025BH/28/9W6
手巻き(Cal.VS00)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約96時間。18Kブレゲゴールドケース(直径40mm、厚さ10.8mm)。3気圧防水。757万9000円(税込み)。

 金の針賞を獲得したのは、ブレゲの「クラシック スースクリプション 2025」だ。ブランドのマイルストーンとなった“スースクリプションウォッチ(予約販売時計)”へオマージュし、腕時計のフォーマットへと再解釈した1本である。今年、創業250周年を迎えたブレゲの、アニバーサリーモデル第一弾として発表された。

 グラン フー エナメルを使用したダイアルは、着想源となった18世紀末の懐中時計のシングルハンドを踏襲。ブレゲ数字のインデックスと、テンパーブルーの針が配されている点も見どころだ。また、シグネチャーであるシークレットサインはダイアル中央下にひっそりと記された。

 ケースバックには、特別な「ケ・ド・ロルロージュ」ギヨシェ模様が手彫りで施されたほか、ブレゲ自身がムーブメントの構想について記した言葉が刻印され、偉大な創業者をたたえている。


レディースウォッチ賞

ジェラルド ジェンタ ジェンティッシマ ウルサン ファイアー オパール

ジェラルド・ジェンタ「ジェンティッシマ ウルサン ファイアー オパール」Ref.DBBE01A1
自動巻き(Cal.GG005)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KYGケース(直径36.5mm、厚さ9.64mm)。30m防水。要価格問い合わせ。

 ジェラルド・ジェンタが発表した「ジェンティッシマ」コレクションの最新作が、レディースウォッチ賞を受賞。フランス語でウニを意味する「ウルサン」にインスパイアされたジュエリーウォッチであり、その名の通り、ケース側面にはウニのとげを模したビーズ状の装飾がひとつひとつネジ留めされている。

 この独創的で視覚に訴えかける装飾には、鮮やかなオレンジと赤の遊色が目を引くメキシコ産ファイアオパールが使用されており、ファセットカットのクリスタルで覆われた、オレンジカーネリアンダイアルとの色彩の調和を見せている。


レディース コンプリケーション ウォッチ賞

ショパール インペリアーレ フォーシーズンズ

ショパール「インペリアーレ フォーシーズンズ」 Ref.385394-1001
自動巻き(Cal.96.24-L)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KWGケース(直径36mm、厚さ12.1mm)。50m防水。世界限定25本。1501万5000円(税込み)。

 365日で1回転するディスク機構を搭載し、四季のサイクルを情緒的に表現した、ハイジュエリーコンプリケーション。

 ダイアルの構成は上下に大きく分かれており、上部には18Kホワイトゴールドを使った蓮の花のシルエットが大胆に配置されている。一方、大きく開けた下部には、グラデーションカラーに彩色されたマザー・オブ・パールのマルケトリ(象嵌細工)がのぞき、1年をかけて季節ごとの色彩の移り変わりを演出する。

 ちなみに本作には、四季それぞれの色調に合わせた4種のアリゲーターストラップが付属しており、時計の表情に合わせた付け替えが可能となっている。


タイムオンリー部門賞

ダニエル・ロート エクストラ プラット ローズゴールド

ダニエル・ロート「エクストラ プラット ローズゴールド」Ref.DBBD01A1
手巻き(Cal.DR002)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KRGケース(縦38.6×横35.5mm、厚さ7.7mm)。30m防水。4万9000スイスフラン(税込み)。

 時・分表示のみの腕時計が選ばれるタイムオンリー部門では、ダニエル・ロートの「エクストラ プラット ローズゴールド」が選出された。時計師ダニエル・ロートが1990年に発表した、ウルトラスリムウォッチを忠実に復刻したモデルである。

 厚さ7.7mmにまで抑えられた18Kローズゴールド製ケースは、“ダブルエリプス”と呼ばれるアイコニックなフォルムを採用し、縦のピンストライプのギヨシェが施されたツートン仕様のダイアルが組み合わされている。

 ムーブメントは、ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンが監修・開発した手巻きムーブメントCal.DR002を搭載。トランスパレントバックから、その流麗な装飾がなされたムーブメントを観察することができる。


メンズウォッチ賞

ウルバン ヤーゲンセン UJ-2

ウルバン・ヤーゲンセン「UJ-2」Ref.UJ-2-003
手巻き。1万8000振動/時。パワーリザーブ約52時間。18KRGケース(直径39mm、厚さ10.9mm)。30m防水。11万3500スイスフラン。

 ウルバン・ヤーゲンセンの「UJ-2」が、メンズウォッチ賞を受賞。ムーブメントにダイレクトダブルホイール脱進機を搭載しており、スイスレバー脱進機に比べ、高いエネルギー効率と長期的な安定性を実現しているという。なお、テンプはフリースプラング式。毎時1万8000振動というロービートは、往年の懐中時計を彷彿とさせる。

 ダイアルは、2時位置のみを「0」としたローマンインデックスと、ゴールド製の“ウルバン・ヤーゲンセン”針が配されており、複雑な内部機構に反してミニマルな印象だ。メインダイアルにはグラン・ドルジュ、オフセンターのスモールセコンドにはクル・ド・パリのギヨシェが施され、表情に視覚的なメリハリが生まれている。


メンズ コンプリケーション ウォッチ賞

ボヴェ リサイタル 30

ボヴェ「リサイタル 30」Ref.R30-0001
自動巻き(Cal.R30-70-001)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約62時間。Tiケース(直径42mm、厚さ12.90mm)。7万3508スイスフラン。

 前作「リサイタル 28 Prowess 1」で世界初の快挙となった、サマータイム対応のワールドタイム機構にスポットを当て、より純粋なトラベルウォッチへと昇華させたタイムピースが本作だ。

 ダイアル上には引き続きローラーシステムが大胆に配置されており、26本のローラーによって24都市のタイムゾーンを表示する。これらのローラーは、トッププッシャーを操作することで90度ずつ回転し、UTC(協定世界時)、AST(米国夏時間)、EAS(欧米夏時間)、EWT(欧州冬時間)という4つの期間に対応させることができる。加えて、インド(ニューデリー)に見られる独特な30分単位の時差までも網羅しており、その徹底ぶりには驚かされる。


アイコニック ウォッチ賞

オーデマ ピゲ ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」Ref.26674SG.OO.1320SG.01
自動巻き(Cal.7138)。41石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。18Kサンドゴールドケース(直径41mm、厚さ9.5mm)。50m防水。要価格問い合わせ。

 オーデマ ピゲが得意とする永久カレンダーを搭載した「ロイヤル オーク」の150周年記念モデルが、最も“アイコニック”なタイムピースとして選出された。

 搭載するCal.7138では、従来の永久カレンダーで一般的であったケースサイドのコレクターが廃止されており、代わりにリュウズを3段引きから2段引きに戻した際に機能する、新たな操作ポジションが追加されている。これにより、カレンダーのあらゆる調整をリュウズのみで行えるようになった。

 他にも、誤操作防止のため日付送りにはリュウズの複数回転を要するほか、調整禁止時間帯には操作自体ができなくなるロック機構が設けられるなど、徹底したユーザーフレンドリーな設計がなされている。


トゥールビヨン賞

ブルガリ オクト フィニッシモ ウルトラ トゥールビヨン

ブルガリ「オクト フィニッシモ ウルトラ トゥールビヨン」Ref.104313
手巻き(Cal.BVF 900)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。Tiケース(直径40mm、厚さ1.85mm)。要価格問い合わせ。

 薄型時計の記録を塗り替え続けるブルガリの「オクト フィニッシモ ウルトラ トゥールビヨン」が、トゥールビヨン部門を制した。ケース厚はわずか1.85mmという薄さを誇り、当然ながらトゥールビヨン搭載機としては史上最薄となる。コレクションのアイコンである八角形のシルエットは、従来の“ウルトラ”と同様にモノクロームな外観に統一されている。また、ベゼルやケースにはチタンを、ムーブメントのメインプレートには超硬素材であるタングステンカーバイドを採用することで、実用的な剛性が確保された。

 驚くべきは、2時位置に時分表示を同軸配置している点だ。歯車を重ねる同軸配置は薄型化に向かない仕様であるが、本作ではあえてこれを採用し、より一般的な時計らしい顔立ちを見せている。


メカニカル エクセプション賞

グルーベル・フォルセイ ナノ フドロワイヤント

グルーベル・フォルセイ「ナノ フドロワイヤント」
手巻き。2万1600振動/時。パワーリザーブ約24時間。18KWGケース(直径37.9mm、厚さ14.34mm)。3気圧防水。世界限定22本。要価格問い合わせ。

 革新的なメカニズムに授与されるメカニカル エクセプション賞は、グルーベル・フォルセイの「ナノ フドロワイヤント」が受賞した。

 同社の10番目の基礎発明となる本作では、ナノジュール単位でのエネルギー管理を行うメカニズムが実用化されており、従来のフドロワイヤントに比べ、約1800分の1にまでエネルギー消費を抑制することに成功している。

 また、この画期的なメカニズムの搭載に合わせて、エネルギーの伝達構造が根本から見直された結果、ブランド史上最小となる、直径37.9mmというコンパクトなケースをも実現している。


クロノグラフ賞

アンジェラス クロノグラフ テレメーター

アンジェラス「クロノグラフ テレメーター」Ref.0CHC.QI01A.V010Q
手巻き(Cal.A5000)。23石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。18KYGケース(直径37mm、厚さ9.25mm)。30m防水。世界限定15本。要価格問い合わせ。

 アンジェラスからは、1940年代後半にハンガリー空軍に納入された軍用時計をデザインソースとした「クロノグラフ テレメーター」が選出された。

 ダイアルは伝統的なバイコンパックスのレイアウトを採用し、光と音の速度差で距離を計測するテレメータースケールが配されている。また、ケースもクラシカルな37mm径に収められたことで、“ハンガリアン・エアフォース”の愛称で親しまれたオリジナルを彷彿とさせる佇まいを備えた。

 一方で、クロノグラフプッシャーはリュウズ一体型のモノプッシャー式へと刷新されており、操作感の向上とともに、すっきりと洗練されたケースラインに仕上がっている。


スポーツウォッチ賞

ショパール アルパイン イーグル 41 SL ケイデンス 8HF

ショパール「アルパイン イーグル 41 SL ケイデンス 8HF」Ref.298600-3028
自動巻き(Cal.Chopard 01.14-C)。28石。5万7600振動/時。パワーリザーブ約60時間。Tiケース(直径41mm、厚さ9.75mm)。100m防水。世界限定250本。391万6000円(税込み)。

 スポーツウォッチ部門を制したのは、ショパールの「アルパイン イーグル 41 SL ケイデンス 8HF」だ。同コレクションの高振動モデルの第3弾として登場した本作は、“SL(Super Light)”の名が示す通り、コレクション史上最軽量を実現している。

 この軽快さは、エレクトロプラズマ技術を用いて表面を酸化させた、セラマイズドグレード5チタンの採用によるものだ。これにより、チタン特有の軽量性とストイックな美観を保ちながら、セラミックスに匹敵する耐傷性を獲得している。

 ムーブメントは、単結晶シリコン使用の脱進機を搭載し、毎時5万7600振動のハイビートを実現した、COSC認定のCal.Chopard 01.14-Cを搭載する。


ジュエリーウォッチ賞

ディオール ラ デ ドゥ ディオール ビュイソン クチュール

ディオール「ラ デ ドゥ ディオール ビュイソン クチュール」Ref.CD04317X1606
クォーツ。18KPGケース(直径38mm、厚さ9mm)。3気圧防水。ユニークピース。要価格問い合わせ。

 創設者クリスチャン・ディオールが抱いた、“花と庭園への永遠の情熱”を再解釈したユニークピース。

 18Kピンクゴールド製のダイアルには宝石が隙間なく敷き詰められ、ルビー、ピンクサファイア、ダイヤモンドが大小さまざまな花を描き出している。さらに、そこにツァボライトが鮮やかな緑のアクセントを添えることで、生命力あふれる自然の情景が表現された。

 ベゼルやリュウズにも惜しみなくジェムセッティングが施されているほか、類まれな意匠は普段見えないケースバックにまで及んでいる。メゾンのサヴォワールフェールが、細部に至るまで遺憾なく発揮された、至高の輝きを放つ1本である。


Artistic Crafts Watch 賞

ヴティライネン 28GML SOUYOU

ヴティライネン「28GML SOUYOU(蒼陽)」Ref.28GML
手巻き(Cal.28GML)。1万8000振動/時。パワーリザーブ約65時間。Ptケース(直径39mm、厚さ11.2mm)。30m防水。ユニークピース。要価格問い合わせ。

 漆芸家、北村辰夫とのコラボレーションによって生まれた「28GML SOUYOU(蒼陽)」。モデル名の“SOUYOU”とは、青と緑で海を表現したダイアル外周の“蒼(SOU)”と、金と赤の陰影で太陽を象徴した中央の“陽(YOU)”を組み合わせた造語である。

 制作に1000時間以上を費やしたというダイアルでは、漆、金粉、切金、切貝といった天然素材を贅沢に用い、光と影が織りなすエネルギッシュかつ壮大な景色が、わずか数センチの空間に描き出されている。

 また、アイコニックなダイレクトインパルス脱進機と操作性に優れるGMT機能を兼ね備えるCal.28GMLを搭載しており、工芸的な側面だけでなく、機能面にも抜かりがないタイムピースと言える。


小さな針賞 “Petite Aiguille” Watch

M A D エディションズ M A D 2

M.A.D.エディションズ「M.A.D.2」Ref.M.A.D.2 Green
自動巻き(Cal.G101)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約64時間。SSケース(直径42mm、厚さ12.3mm)。3気圧防水。3135スイスフラン。

 販売価格が1万スイスフランを下回る時計を対象とするこの賞は、MB&Fが展開するM.A.D.エディションズの「M.A.D.2」が獲得した。1990年代のクラブカルチャーをオマージュした本作は、DJミキシングコンソールのターンテーブルに見立てた時分表示を備えるなど、独創的なデザインとギミックが詰め込まれている。

 中でも、グリーンダイアルと裏蓋の両側からのぞくローターはユニークだ。外周に打たれたスーパールミノバのドットが暗闇で輝き、レコードプレーヤーのストロボバンドを思わせる仕掛けとなっている。ムーブメントは、前作「M.A.D.1」と同様に、ジャンピングアワーモジュールを付加したラ・ジュー・ペレCal.G101を搭載する。


チャレンジ ウォッチ賞

デニソン ナチュラルストーン タイガーアイ

デニソン「ナチュラルストーン タイガーアイ」
クォーツ。SSケース(縦37mm×横33.5mm、厚さ6.05mm)。3気圧防水。660スイスフラン。

 価格3500スイスフラン以下の時計を対象とするチャレンジ ウォッチ賞には、かつてケースメーカーとして名を馳せたデニソンの復刻コレクション「ALD」より、「ナチュラルストーン タイガーアイ」が選出された。

 名前の通り、天然のタイガーアイをダイアルに使用し、ロゴと時分針のみを配したミニマルなドレスモデルである。アイコニックなクッション型ケースは、巨匠エマニュエル・ギエの手によってレトロなテレビ型のシルエットへと再解釈されており、クォーツムーブメントを採用することで、縦37mm、横33.5mm、厚さ6.05mmというスリムなプロポーションを実現している。


メカニカルクロック賞

レペ1839 アルバトロス

レペ1839「アルバトロス」Ref.63.6001/200
手巻き。1万8000振動/時。ステンレススティール(長さ600mm、高さ600mm、幅350mm)。パワーリザーブ約192時間。12万8640スイスフラン。

 L'EPÉE 1839(レペ 1839)は、高級クロックを手掛けるブランドだ。もっとも通常イメージされるようなクロックではなく、レーシングカーや手榴弾などといった、ユニークなモチーフを意匠に取り入れた製品を展開している。

 そんなレペ 1839の「アルバトロス」が、メカニカルクロック賞を獲得。デザイナーであるエリック・マイヤーがデザインしたこのモデルは、ジュール・ヴェルヌの小説『征服者ロビュール』に出てくる飛行船のアルバトロス号、そしてヴェルヌが抱いていた、飛行船やロケット、熱気球への幅広い関心から着想を得て制作された。

 見た目のインパクトもさることながら、毎時と毎30分を知らせるチャイミング機構と、16組のプロペラから構成されるオートマタ機構を搭載していることにも驚かされる。時刻とチャイミングのための機構・オートマタ機構はそれぞれ独立しており、クロックの内部にはふたつのムーブメントとふたつの巻き上げシステムが搭載される。


Audacity賞

Fam Al Hut MARK 1 Möbius

Fam Al Hut「MARK 1 Möbius」Ref.MARK 1
手巻き。2万1600振動/時。SS(横24.3mm、縦42.2mm、厚さ12.9mm)。パワーリザーブ約50時間。2万6620スイスフラン。

 中国のマイクロブランドであるFam Al Hut。デザイナーのXinyan DaiとLukas Youngによって運営されており、小ぶりな機械式ムーブメントによって、創意工夫にあふれるデザインを実現している。

 今回、「大胆な」という意味を持つAudacity賞を獲得したのは、そんなFam Al Hutの強みを生かした「MARK 1 Möbius」だ。そのケースサイズは、直径24.3mm、厚さ12.9mm。全長もわずか42.2mmでありながらも、2軸トゥールビヨンを搭載しており、この2軸はそれぞれ150秒と60秒で一回転する仕組みとなっている。6時位置の時・分で対になったレトログラード表示も面白い。なお、パワーリザーブ約50時間と、実用的な性能も備えた。

 ソリッドなダイアルはなく、ムーブメントがそのまま鑑賞できるようになっているので、小ぶりなカプセル型ケースの本作をまとえば、手元でいつでも機械式時計のロマンを感じられるだろう。


Horological Revelation賞

アントン スハノフ St Petersburg Easter Egg Tourbillon Clock

アントン スハノフ「St. Petersburg Easter Egg Tourbillon Clock」Ref.C.14-1
手巻き。1万8000振動/時。ステンレススティール、シルバー、チタンケース(直径100mm、高さ128mm)。パワーリザーブ約182時間。5万9000スイスフラン。

 ロシアのサンクトペテルブルクを拠点とする独立時計師、アントン スハノフ作の「St. Petersburg Easter Egg Tourbillon Clock」がHorological Revelation(ホロロジカル・レベレーション)賞を受賞。この賞は、設立から10年未満のブランドのモデルが対象となる特別賞だ。

 エッグ・クロックの通称を持つ本作は、ロシアを代表する宝飾工芸である、イースターエッグから着想を得られ、制作された。宝飾のイースターエッグは、通常、楕円型のオブジェを支える脚や土台を持つが、本作にはそういった“支え”が見当たらない。鏡面仕上げのステンレススティールをベースに、手彫りのギヨシェパターンと半透明のエナメル装飾が施されたシルバー製のケース、そしてフライングトゥールビヨンと時刻表示を覆う、ドーム型サファイアクリスタルという、3つのパートで構成されている。

 サファイアクリスタルを囲むシルバー部分には、24時間表示のスケールが刻まれている。このベゼルにあたるパーツは、世界24のタイムゾーンすべての時刻設定を担うワールドタイム機能を持つと同時に、24秒で一回転するトゥールビヨンの秒スケールとしても機能している。一見するとシンプルなオブジェ、しかしその中には卓越した複雑機構が搭載されている点は、まさに“Revelation”と評する逸品であろう。


クロノメトリー賞

ゼニス G F J

ゼニス「G.F.J.」Ref.40.1865.0135/51.C200
手巻き(Cal.135)。1万8000振動/時。パワーリザーブ約72時間。Ptケース(直径39.15mm、厚さ10.5mm)。5気圧防水。695万2000円(税込み)。

 時計の精度を競うクロノメトリー賞を受賞したのは、創業160周年を迎えたゼニスの「G.F.J.」だ。創業者の名を冠した本作は、ヌーシャテル天文台コンクールで5年連続1位を含む計235もの賞を獲得した傑作ムーブメント、「Cal.135」を復刻した記念碑的なタイムピースである。

 搭載するムーブメントは、オリジナルのサイズや外観、構造を忠実に再現しつつ、歯車の歯形や使用する素材などが細部に至るまで最適化されたことで、パワーリザーブがかつての約40時間から約72時間まで大幅に延長されている。

 さらにストップセコンド機能の追加に加え、日差±2秒以内という厳格な精度調整が行われるなど、現代の実用機として申し分のない性能が与えられている。


ブレゲの「クラシック スースクリプション 2025」がGPHG2025の「金の針賞」を獲得!

NEWS

ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)受賞モデル一覧。「金の針賞」は IWC、ショパールが2 部門で受賞!

NEWS

ジュネーブウォッチグランプリ(GPHG 2024)のノミネート作品が決定

NEWS