子役を脱して、本格俳優の道を歩み始めた鈴木福。1歳からテレビ出演を重ね、ドラマ、映画、CMなど幅広いジャンルで活躍を続けている。幼少期に父親からプレゼントされた時計をきっかけに、すっかり大人になった現在は、自身の時計の好みも確立されつつあるようだ。今回はそんな鈴木福が愛用するモデルに着目した。

Text by Yukaco Numamoto
土田貴史:編集
Edited by Takashi Tsuchida
[2025年10月26日掲載記事]
芸歴と年齢がほぼ同じ! 1歳から芸能界で活躍する鈴木福
鈴木福が芸能界デビューを飾ったのは、わずか1歳の時。NHK教育番組への出演が、長きにわたるキャリアの第一歩となった。翌年には滝沢秀明主演のドラマ「君がくれた夏〜がんばれば、幸せになれるよ〜」で滝沢の息子役を演じ、子役としてドラマの世界へと足を踏み入れる。
そして2011年、芦田愛菜と共演した「マルモのおきて」で、双子の姉弟の弟役を演じたことが大きな転機となった。当時まだ6歳だった鈴木は、同作の主題歌「マル・マル・モリ・モリ!」で歌手デビューも果たし、その年のNHK紅白歌合戦に出場。7歳199日という白組最年少出場記録を樹立している。
子役時代の華やかな活躍が印象的な鈴木だが、その後のキャリアも輝かしい。「beポンキッキーズ」や「森田一義アワー 笑っていいとも!」をはじめとする人気バラエティ番組に出演、年齢を重ねながらも着実に活動の幅を広げていった。中学卒業後には「真相報道 バンキシャ!」にコメンテーターとして招かれるなど、演技以外の分野でもその才能を発揮している。
父親からプレゼントされたBaby-Gをブログで紹介!
そんな鈴木福が、時計への関心を初めて公にしたのは2015年のこと。オフィシャルブログ「笑う門には福ブログ」に「僕の大切なモノ」というタイトルで投稿した記事の中で、父親からプレゼントされたBaby-Gを紹介したのだ。8月31日に投稿されたこのブログには、“寝る時もつけてます”と綴られており、その微笑ましい姿が目に浮かぶ。
さらに注目すべきは、記事の最後に添えられた「時計って格好いいな〜、そのうち時計の仕組みとかもお勉強したいと思います」という一文。当時11歳の少年の心に、時計への憧れが芽生えていたのだ。

クォーツ。樹脂ケース(直径43.4mm、厚さ15.8mm)。10気圧防水。1万6500円(税込み)。2013年7月発売。現在は生産終了。(問)カシオ計算機お客様相談室 Tel.0120-088925
「BA-110-1AJF」は、G-SHOCKの人気モデル「GA-110」のデザインを踏襲しながら小型化、薄型化を実現したモデルだ。文字盤やインデックスのパーツを複雑に組み合わせたグラフィカルな意匠は、当時11歳だった鈴木の腕にもしっかり馴染んでいる。仮面ライダーをはじめとする特撮アクション作品への愛を公言している鈴木にとって、特撮ヒーローが身に着けるアイテムを彷彿とさせる際立ったデザインが刺さったのではないだろうか。
そして時は流れて中学入学時。2017年4月11日のブログには「学校に時計を持っていけるのが嬉しい」という言葉が記されている。腕時計の着用が許可されることを、これほど素直に喜ぶ少年の姿から、幼い頃からの時計への思いの深さが伝わってくる。
最近ではグランドセイコー「SBGX261」を愛用中か?
時計への憧れを言葉にしていた少年は、やがて青年へと成長した。そして今、そのSNSには高級時計を着用する姿が見られるようになっている。鈴木が選んだのは、グランドセイコーの「SBGX261」と思われる。これは彼が出演した日本テレビ系列のバラエティ番組「メシドラ~兼近&真之介のグルメドライブ~」で実際に着用していたモデルだ。
この番組は、EXITの兼近大樹と満島真之介が、おいしいものを求めて台本なし・仕込みなしでドライブを繰り広げる内容。鈴木がゲスト出演した回では、同じく子役として活躍した濱田龍臣と共に和光市を巡った。番組の公式インスタグラムに投稿された画像において、鈴木の右腕にはグランドセイコー「SBGX261」が確認できる。

クォーツ(Cal.9F62)。年差±10秒。SSケース(直径37mm、厚さ10.0mm)。日常生活用強化防水(10気圧防水)。30万8000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー) Tel.0120-302-617
ケース径37mmというサイズは、現代の時計としては控えめな部類に入る。しかしそれゆえにカジュアルなスタイルからスーツまで、シーンを選ばない汎用性の高さを備えたモデルだ。本作はグランドセイコーのヘリテージコレクションに属し、装飾性を抑えた端正なデザインが特徴となっている。
幼少期から芸能界で活動し、さまざまな現場を経験してきた鈴木にとって、あらゆる場面に対応できる頼れる一本なのだろう。実用性と品格を兼ね備えた、まさに大人の一歩を象徴するモデルと言える。
ドイツ時計の渋さが光るジンもコレクションに追加!
鈴木福のもうひとつの顔、それは熱烈な広島東洋カープファンである。小学生の頃から野球を始め、中学では野球部に所属していたという鈴木は、カープへの愛を隠さない。むしろカープをきっかけに広島という街の魅力を知り、広島への思いを深めていったという。
そして広島への熱い思いを綴った自身の公式インスタグラム投稿では、鈴木の手元にジン「EZM3.F」が写っている。

自動巻き(Cal.SW200-1)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径41mm、厚さ11.7mm)。20気圧防水。55万円(税込み)。(問)株式会社ホッタ Tel.03-5148-2174
この「EZM3.F」は、元来ダイバーズウォッチとして設計された「EZM3」を、パイロットウォッチへと進化させたモデルだ。防水性能を20気圧に抑える代わりに、ケース厚を11.7mmという実用的なサイズに収め、カウントダウンタイマー付きの両方向回転ベゼルを搭載している。
ドイツの時計ブランドジンが追求するのは、何よりも視認性と耐久性だ。本作も例外ではなく、8万A/mという驚異的な防磁性能、ドライテクノロジーによる除湿機構、そしてジン特殊オイルの採用により-45度から+80度という極限環境下でも精度を保つ設計となっている。
興味深いのは、9時位置に配置されたリュウズだ。通常は3時位置にあるリュウズを逆側に配したこの仕様は、操作性を高めるとともに、重火器などに引っかかるリスクを軽減するという、プロフェッショナルツールとしての配慮によるもの。そして鈴木福は左利きである。この特徴的な配置は、彼にとって理にかなった選択と言えるだろう。機能性を重視するドイツ時計の真髄が、鈴木の個性と見事に合致している。
直近では、映画「カラダ探し THE LAST NIGHT」といった話題作に出演している鈴木福。幼い頃、父親からプレゼントされたカシオの時計を、寝るときも外さないほど大切にしていた少年は、中学入学時に「学校に時計を持っていけるのが嬉しい」と素直に喜びを表現した。その彼が、今ではグランドセイコーやジンといった本格的な時計を着用するまでに成長している。時計の好みの変化は、そのまま鈴木福という俳優の成長を物語っているようだ。
名子役として日本中に知られた存在から、確かな演技力を持つ本格俳優へ。時計を愛する心とともに、表現者としての深みを増していく鈴木福の歩みを、これからも注目していきたい。
