発表から約30年を経たL.U.Cは、優れた自社製ムーブメントを載せるだけでなく、今や時計としてのパッケージも大きく —多くの時計好きは賛同してくれるだろう— 洗練された。とりわけ、文字盤メーカーであるメタレムの買収により、文字盤表現が多彩になったことは見逃せない。そんな同社が、ニッチかつ稀少な限定版で創造性とショパールらしい作り込みを発露するのは当然だろう。その表れが、同社共同社長のカール-フリードリッヒ・ショイフレが言う「日本に影響を受けた」限定モデルだ。
Photograph by Yu Mitamura
広田雅将(本誌):取材・文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2026年1月号掲載記事]
「日本モチーフのモデルは仕上げが完璧でないと通用しないのです」

ショパール共同社長。1958年、ドイツ生まれ。15歳でスイスに移住し、HECローザンヌ校に入学。卒業後、ショパールに入社。88年、現在に続く「ミッレ ミリア」コレクションをスタート。96年にはスイスのジュラ山脈に位置するフルリエに工房を設立し、自社製ムーブメントである「L.U.C」の製造も開始。2015年に新たなウォッチブランド「クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー」を設立した。
「昨年は中国限定のモデルを作りましたが、個人的には、日本に触発された限定モデルを作りたかった。私は日本が好きだし、訪れるツーリストも多いですからね。でも、できるまで計画を温めていたため、時間がかかった。生産本数は限定8本、あるいは25本。少ないのは、コレクター向けにしたかったからです」
面白いのは、日本とスイスの技法を融合させただけでなく、モチーフに丁寧に向かい合った点だ。例えば鍛造文字盤のモデルは、フルリエの職人が日本で学んだ技術で作られている。一点ものの「L.U.C フル ストライク スピリット オブ ザ・ウォリアー」も、全面に精密な彫金を施しただけでなく、狛犬や揚羽蝶などの伝統的なモチーフが違和感なくあしらわれている。この隙のなさは、いかにも今のショパールだ。
「見せかけだけでテーマを再現するメーカーはあるでしょう。ですが、私たちは物作りの段階から深掘りをしていくのです。それに日本がテーマなら、仕上げが完璧でないと通用しない(笑)。このモデルも彫金が可能なところにはすべて施しましたよ」

ショパール マニュファクチュールの設立25周年記念モデルとして発表されたジャンピングアワーに、日本をモチーフとした模様を加えた三部作のひとつ。筆の動きをプラチナで表現したのは、かつてない試みだ。全方位に抜けのない、今のショパールらしい渾身のモデル。手巻き(Cal.L.U.C 98.06-L)。42石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約8日間。18Kエシカルホワイトゴールドケース(直径40.00mm、厚さ10.30mm)。50m。世界限定8本。935万円(税込み)。
個人的に目を引いたのは「L.U.C クアトロ スピリット」に加わった、3種類の限定版である「円相」「サムライ ラスト スタンド」「瞑想する達磨」だ。これらはグラン フー エナメルの上に、さらにPtやゴールドで筆のタッチを再現している。
「筆のタッチを残すため、ベースにジャンピングアワーを選びました。しかし、エナメルに筆のタッチを再現するのは難しいですね。細密画は多いですが。そしてこのモデルは、ロゴもエナメルです。厚みと影を出すためですね」。ショイフレはさらっと言うが、荒々しい筆の動きをPtやゴールドで再現した例は他に見たことがない。対して彼はこう答えた。「技術は新しいことをしないと意味がないですからね」。
レギュラーモデルはもちろん、極めて少量生産の限定モデルにも抜かりのないショパール。細部に引きずられず、パッケージをまとめる手腕は今や非凡と言っていい。
「そうですね、私たちは30年近く、L.U.Cコレクションを手がけてきましたからね」



