グルーベル・フォルセイのウォッチメイキングが結実した“実用複雑時計”「QPバランシエール」

2026.02.12

パーペチュアルカレンダーは複雑であるがゆえに慎重さを要求してきた。グルーベル・フォルセイは、その常識を根底から覆す。ウォッチメイキングの圧倒的な力が結実した“実用複雑時計”がここにある。

Photographs by Takeshi Hoshi (estrellas)
Edited & Text by Takahiro Ohno (Office Peropaw)
[クロノス日本版 2026年3月号掲載記事]


QPを再定義する“セーフティー”という美学

QPバランシエール

QPバランシエール
メゾン7番目の“基本発明”となる特許取得の「メカニカルコンピュータ」を2015年のQPイクエーションで導入し、その思想を継承しつつ、均時差表示を省略。30°傾斜テンプと高速回転ツインバレルを組み合わせて仕立て直した新作だ。ダイアル上部には秒表示、24時間表示、パワーリザーブ表示をバランスよく配置。その右に設けられたファンクションセレクターは、リュウズ同軸のプッシャー操作により、HM(時刻合わせ)とQP(永久カレンダー調整)を切り替える。うるう年表示は最下部、西暦表示はシースルーバック側に置いた。手巻き。78石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KWGケース(直径45.1mm、厚さ14.75mm)。3気圧防水。限定22本。要価格問い合わせ。

 パーペチュアルカレンダー(QP)は長らく、扱い手に知識と慎重さを要求する複雑機構だった。深夜の調整禁止、隠しプッシャー、煩雑な操作手順ーーそれらは高度な暦機構を成立させるための“前提条件”として受け入れられてきた。しかしグルーベル・フォルセイが問い直したのは、その複雑さそのものではない。「危うさ」は本当に不可避なのか。その疑問こそが、本作の出発点である。

 中核を成すのは2015年に同社が導入した「メカニカルコンピュータ」の進化形である。25個の部品から成るこの機構は、グレゴリオ暦の構造を“理解”し、日付、曜日、月、うるう年を含む12の表示を常に完全同期させる。これにより調整は単一のリュウズで完結し、前後いずれの方向にも安全に操作できる。操作マニュアルを必要としないQPという思想が、ここで現実のものとなった。

 特筆すべきは、その際にセーフティーを設計思想の中心に据えた点だ。日付変更が危険となる時間帯はレッドゾーンとして可視化され、機構は自動的にロック。何カ月か止まった状態でも日付だけ合わせれば全てが連動し、すぐに使い始められる。このカレンダーは2100年まで正確に機能し、同社のアトリエで再調整すれば、次の1世紀も精度が保証される。

 造形面では、多層構造のゴールドダイアル上に主要な暦表示を一直線に配し、視認性と均衡を確保。30度傾斜の高慣性テンプと高速回転ツインバレルが、約72時間の安定したパワーリザーブを支える。

「QPバランシエール」は複雑さを誇示するための時計ではない。不安を排し、信頼を積み上げることで、パーペチュアルカレンダーを再び“使うための時計”へと引き戻した。その姿勢こそが、QPを再定義する“セーフティーという美学”なのだ。



Contact info:グルーベル・フォルセイ ブティック 銀座 Tel.03-3538-5401


グルーベル・フォルセイ 宇宙視座の円形劇場

FEATURES

グルーベル・フォルセイ CEO、ミシェル・ニデッグにインタビュー「年産本数を増やすよりも質を高めたい」

FEATURES

グルーベル・フォルセイ 唯一無二の空間で手にする、特別な芸術作品

FEATURES