2026年10月2〜4日まで、栃木県芳賀郡茂木町に位置するモビリティリゾートもてぎにて、MotoGP™ 日本グランプリが開催された。25年にわたってMotoGP™のオフィシャルタイムキーパーを務めてきたティソの案内で、時計専門誌『クロノス日本版』およびwebChronos編集部の鶴岡智恵子が、本レースを初観戦&取材。レースはもちろん、そのピットや本部で知ったのは、ひとりの選手を送り出すまでの熱い「チームワーク」だ。

MotoGP™日本グランプリの取材にあたって、ティソが貸してくれた「ティソ T-レース クォーツ クロノグラフ」。ケース直径は38mmと、大ぶりかと思いきや、ラグを持たず、また、ケース厚が抑えられているため、手首回り14.7cmの女性である筆者にとっても非常に着け心地がよかった。クォーツ。SSケース(直径38mm、厚さ11.46mm)。10気圧防水。9万4200円(税込み)。
Photographs & Text by Chieko Tsuruoka(Chronos-Japan)
[2026年10月27日公開記事]
初MotoGP™でティソ・スプリントを観戦!
時計愛好家の中には、モーターレース好きが少なくないだろう。実際、時計はスポーツの計時技術と深い関係性があり、また、マシンやボディの性能、あるいは意匠を追求する姿勢は、高品質な自動車やバイク、時計に欠かせないものであると言える。
モーターレースのうち、二輪において、世界最高峰と位置付けられるのがMotoGP™(ロードレース世界選手権)である。国際モーターサイクリズム連盟(FIM)が主催する本レースは1949年にスタートし、現在はMotoGP、Moto2、Moto3の3つのクラスでの戦いが行われている。
MotoGP™は1年間の中で、世界各国・地域を転戦する。2026年10月2〜4日には、栃木県芳賀郡茂木町に位置するモビリティリゾートもてぎでMotoGP™日本グランプリ(以下日本GP)が開催された。なお、今シーズンのMotoGP™は特別な大会となっている。なぜならこれまでの「1000ccマシン」というエンジンの規定が、来年からは「850cc」に変更となるためだ。つまり、今シーズンは1000ccマシンによる最後の戦いとなる。また、2023年より、従来は予選が中心であった土曜日のレースにMotoGP™クラスによる「ティソ・スプリント」という短距離レースが開催され、日曜日の決勝レースとともに、いっそうの盛り上がりを見せている。さらに今シーズンは最高峰クラスにフル参戦する唯一の日本人ライダーである小椋藍選手が出場するとあって、注目度は極めて高いと言える。事実、日本GPの来場者数は、3日間の合計で過去最多となる12万1997人が来場した。この入場者数は、2019年に最多となった9万6425人を、大きく更新するものである。

そんな日本GPを、2001年より本レースのオフィシャルタイムキーパーを務めているティソの案内の下、時計専門誌『クロノス日本版』およびwebChronos編集者の鶴岡智恵子が初観戦! MotoGP™のツアーに参加することがかない、ピットやコントロールセンターを取材できた。取材で見えてきたのは、熱いレースを、そして選手を裏側から支える、熱いチームワークである。


MotoGP™のツアーで見たチームワーク
筆者はふたつのMotoGP™のツアーに参加した。ひとつがピットの内部ツアーだ。
ピットはガレージとも呼ばれる、サーキットに設けられている競技車両を準備するためのスペースである。スタート地点の付近に各チームのピットが立ち並んでおり、レースが近付くまでは観客席側のガレージが閉じられ、内部は見えないようになっている。
今回案内してもらったのは、Aprilia Racing(アプリリア・レーシング)のピットだ。まだガレージが閉じられている状態のピットでは、何が行われていたのか? まずは競技車両の整備だ。レース前の車両に不備がないか、複数の整備士がチェックを行う。取材時、車両はフェアリングやフロントウイング、タンクカバーが外された状態に。この状態で配線やボディワークに問題がないか確認したり、ブレーキのエア抜きが行われたり、新しいタイヤへと装着されたりする。前述の通り、MotoGP™のエンジンは1000ccマシンと規定されている。そのため選手の技量のほか、マシンの性能が勝敗を大きく左右するとあって、各チームはマシンに技術を結集させている。共通のレギュレーションはあれど、サーキット上で最高のパフォーマンスを発揮させるために作り上げられたマシンは、レース直前までしっかりと整備されているのだ。ちなみにピット内には2台の車両が用意されている。レース中、タイヤトラブル等、何らかの理由でマシンを乗り換えなくてはならなくなった場合のスペアが必要であるためだ。
また、ピットでは「分析」が行われていることも印象的であった。各チームの専任スタッフがピット内でもサーキットやライバルの分析を直前まで行い、選手をサポートする体制が整えられている。
このようにピット内ではマシンの内部や分析レポートが表示されたPCの画面を見ることができ、いわばチームの肝をのぞいてしまえるので、写真撮影はNGであった。しかし、レース直前までレースを、そして選手をサポートする体制が万全に備えられていると、ツアーを通して知った。
なお、ピット内では選手も休憩したり、スタンバイしたりする。そのためピットの出入り口付近にはファンが“出待ち”しており、選手が快く写真撮影やサインに応じている姿も見られた。







そしてもうひとつのMotoGP™ツアーが、コントロールセンター内で行われている計時技術の見学であった。
MotoGP™では250馬力を超える、1000ccのV型4気筒エンジンが各マシンに積まれている。その最高速度は時速360km超なのだとか。この超高速な世界で、正しくレースの勝敗を決するためにも、さまざまなマンパワーと最新技術が注ぎ込まれていた。
ゴール地点にはフォトフィニッシュ・カメラが配置されており、選手の順位を計測している。選手は必ずしもバラバラにゴール地点につくわけではなく、接戦となることが珍しくない。カメラでは指定の位置に、先に車両の先端が入った方を先着としているが、その差はコンマの世界。取材時、0.003秒の差で決着がついた瞬間の写真を見て、モータースポーツという競技の厳しさを目の当たりにした。

また、広大なサーキットはコントロールセンターはもちろん、各観客席から死角になる場所も多く、超スピードと相まって、どの選手がどの地点を走っているのか? トラックリミット(車両がコースアウトすること。コース脇のゼブラゾーンはコース内となるものの、その外側のエリアにタイヤが出てしまうと違反となる)をしてはいないか? といった確認を、ひと目で行うことは困難だ。そのためコースの随所にカメラが設置され、コントロールセンターでは常時そのカメラを確認しているほか、車両にGPSを搭載させ、各選手の現在地点をモニターで観測している。このGPS観測はラップタイムや速度計測、ドライビングの解析、データロギングのほか、ライブ中継やレース観戦においても欠かせないものとなっている。



今回参加したこのふたつのツアーで実感したのは、レースに携わる人員の“多さ”だ。日本GPをはじめ、MotoGP™のように大規模なレースであれば当然のことではあるものの、各チームのスタッフ、MotoGP™本部の人員……。非常に多くの人々がひとりの選手、ひとつのレースを支えるために、レース前から──これはレース当日のみならず、MotoGP™シーズンの開幕前から──尽力している姿を目の当たりにした。サーキット上で、選手は孤独にスピードの世界と戦っているのかと思っていた。もちろん、そういった戦いはあるものの、選手、チーム、そしてレースそのものがチームによって支えられた、チームワークによる戦いであると知った。そんなチームワーク、そして選手を含む、人々の熱意や裏側の努力を知ることで、MotoGP™に対して、いっそう胸熱くなる思いを筆者は感じたのであった。
ティソ「T-レース」をまとってティソ・スプリントを観戦!
ツアーを通してMotoGP™の裏側を知った後、実際にティソ・スプリントを観戦した。
ティソ・スプリントは決勝レースの半分と、短距離の戦いになるため、スタート直後から各マシンが猛スピードでサーキットを走り抜ける。なお、上位9位までには、決勝のおよそ半分のポイントが与えられる。
この日に行われたティソ・スプリントの結果は1位がマルク・マルケス選手、2位がディオゴ・モレイラ選手、3位がホルヘ・マルティン選手で、小椋選手は5位であった。以前、ティソのアンバサダーを務めるエネア・バスティアニーニ選手が当初3番手でゴールしたのだが、彼は最終ラップでトラックリミットを越えてしまったとのことでペナルティが科せられ、ポジションひとつ分が降格に。ちなみに2番手でマルティン選手がゴールしたものの、マルティン選手もトラックリミットアウトによってペナルティとなり、降格された。
レースの裏側を見たからこそ、勝敗のみならずレースの細部まで楽しめた初観戦。ちなみに手元にはお借りした「ティソ T-レース クォーツ クロノグラフ」。長い歴史の中で、さまざまな人々が「最高」を追い求めて尽力するのはモーターレースも時計も変わらない。日本GPにティソウォッチを着けたことで、そんな親和性にも思い至りながら、あっという間の1日は終わった。




