トム フォードのフレグランス「オンブレ レザー」で香りの衣替え/男の香り指南

2026.11.07

季節の移り変わりに応じて行う衣替え、近年では暦通りの季節と実際の気候が異なるがゆえに、そのタイミングがつかみにくいかもしれない。しかし、「香りの衣替え」ならひと足先に済ませられる。本格的な秋へと向かう時期、お勧めするのはレザーノート。革由来の奥深いこの香りを楽しめるアイテムとしてトム フォードのフレグランス3種を、敏腕編集者であり、エッセイストでもある麻生綾氏が指南する。

麻生綾:文
Text by Aya Aso
千太:写真
Photograph by Senta
[クロノス日本版 2026年11月号掲載記事]


香りも衣替え

TOM FORD BEAUTY

TOM FORD BEAUTY
オンブレとは陰影のこと。レザーをさまざまな側面から解釈した、トム フォードらしい極限まで感性が研ぎ澄まされたフレグランスコレクション。(右から)香調はフローラル レザー。そこにあるのは荒野を駆け抜ける風のような疾走感。トム フォード オンブレ レザー オード パルファム スプレィ、50ml、2万1560円(税込み)。香調はアンバー レザー。夜明けの荒野に静かに広がりゆく輝きと熱のイメージ。同 オード オンブレ レザー オード トワレ スプレィ、50ml、1万8700円(税込み)。香調はウッディ レザー。無限に広がる北米西部の地平線を前に、自由へと旅立つ清々しい後ろ姿。同 オンブレ レザー リザーブ パルファム、50ml、2万6950円(税込み)。

 最近の日本はいつまでも夏のようなものが居座る。よく言われていることだが、春と秋がすっ飛ばされがちで、まるで四季が二季になってしまったかのようだ。10月になってもときたま半袖で過ごせそうな日が訪れるが、まずはひと足先に香りの衣替えを済ませるのはいかがだろうか。

 革の香り、レザーノートというカテゴリーがある。名前の響きから受ける印象はゴツそうだが、これが奥深く官能的。もっとも、時計をこよなく愛するクロノス読者の皆さまなら、ストラップからほんのり立ち上る芳香としてすでにおなじみかもしれないけれど。春夏の爽やかなシトラスノートから、体温を感じるレザーノートへ。まさに愛機のストラップを夏用のラバーから上質な革へと付け替えるようなイメージである。

 レザーノートは肌との親和性が高い。よく考えればレザーは動物の「肌」なのだから、道理である。時間の経過とともに自身の体温と溶け合い、その人だけの香りとなって匂い立つ──。その昔はずばりアニマリックな、いかにも「革です」といったフレグランスもあったが、現在はアクセントとして差し込まれるケースが多い印象だ。実際、筆者もレザーノートは大好物で、例えばフレデリック マルの「ローズ & キュイール(薔薇と革)」は寒い時期の定番として長く愛用。よくある薔薇の香りとはひと味もふた味も違う、コクのある、どこかエロティックな香り立ちがたまらないのだ。

 そんなレザーノートの魅力を存分に味わえるのが、トム フォードのフレグランス3種。以前から人気だった「オンブレ レザー」のオード パルファムとオード トワレに、この秋、新たにリザーブ パルファムが加わった。面白いのは、単なる賦香率(香料の濃度)の違いに終わらず、それぞれに革としての個性があること。王道のオード パルファムは、華やかさと同時に目の覚めるような鮮烈なスパイシー感も併せ持つ、いわば黒の革ジャン。アンバーとバニラが溶け合ったオード トワレは柔らかくなめされた茶系の革のイメージ。そして針葉樹ライクなサイプレスの洗礼を受けたリザーブパルファムは、上質でモードな冷たい革を思わせる。

 現在の日本の気候では、暦通りに本物の革ジャンを羽織ることは難しいが、香りであれば即、今日からでもまとえる。Tシャツ1枚の軽快な装いであっても、そこに見えない極上のレザーをひと吹きするだけで、気持ちも印象も一気に秋めく。まずはフレグランスで季節の変化を楽しんでほしい。



Contact info:トム フォード ビューティ Tel.0570-003-770


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