TUDOR(チューダー)日本上陸 メインとなるコレクションの概要を解説

FEATUREその他
2018.10.30

BLACK BAY

チューダーの伝統を強調するクラシカルなスポーツライン

チューダーの中にあって、防水性を高めたコレクションがブラックベイである。ペラゴスに比べて防水性を抑えることで、普段使いに向くキャラクターを持つ。また、リベットブレスレットや、アンティーク風のストラップなど、好事家好みのディテールを備える。

Ref.M79830RB

ブラックベイ GMT
[Ref.M79830RB]
2018年の新作。1950年代風のデザインに、自社製のGMT付き自動巻きを搭載する。内容を考えれば、価格は驚異的だ。Cal.MT5652。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径41mm)。200m防水。C.O.S.C.クロノメーター。38万円。
Ref.M79030N

ブラックベイ フィフティーエイト
[Ref.M79030N]
ブラックベイに加わった小径版。ベゼル上の印字が銀から金に変更され、いっそうクラシカルな印象が強まった。自動巻き(Cal.MT5402)。27 石。2
万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径39mm)。200m防水。C.O.S.C.クロノメーター。32万円。
Ref.M79350

ブラックベイ クロノ
[Ref.M79350]
ブライトリングとの共同開発ムーブメントを載せたモデル。なおヘアスプリングはシリコン製である。自動巻き(Cal.MT5813)。41 石。2 万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS( 直径41mm)。200m防水。C.O.S.C.クロノメーター。49万5000円。

 ウイルスドルフが腕時計に対する理想主義者であったことを考えれば、そのいささか大げさな物言いも理解できよう。翌年、チューダーは実用性を強調した広告キャンペーンを打った。それらは、石炭採掘者が発掘作業中に252時間装着、石切り職人が3カ月間装着、空気ドリルの振動下で30時間使用、建造物の鉄骨にリベットを打つ職人が1カ月間着用、バイクのレーサーが1000マイルの走行に着用といったものだった。一連のキャンペーンで、チューダーはどの環境でも壊れず、高精度で、そして巻き上げ効率に優れることを強調したのである。

 ロレックスとチューダーの大きな違いは、端的に言うとムーブメントだった。ロレックスは基本的にエグラー社(後のロレックス・ビエンヌ)が設計・製造した自社製ムーブメントを載せていたが、価格を抑えるべく、チューダーはスイス製の汎用エボーシュを用いた。ロレックスの傑出した自動巻き、例えば1570系や3000系には及ばなかったものの、大量生産された汎用エボーシュは、チューダーに安定した精度と耐久性、そして高いメンテナンス性をもたらした。

 そういった同社の個性を最も体現したのが、スポーツウォッチのコレクションだろう。1954年、チューダーはオイスター プリンスデイトにダイバーズウォッチの「サブマリーナー」を追加。58年には防水性を200mに向上させたが、それでも価格はロレックス「サブマリーナー」の約半分だった。69年には、ETAの傑作である2451系をベースにした自動巻き、キャリバー2483を載せたサブマリーナーをリリース。実用時計としてのチューダーは、この時点で完成を見たといってよいだろう。以降もチューダーは、堅牢で良心的な実用時計として人気を博したが、ロレックスの躍進に伴い、そのマーケットはヨーロッパや北米以外の地域にも波及していった。

ブラックベイの魅力的なディテール。
(左)ブラックベイ GMTの文字盤と針。実用時計にもかかわらず、針と文字盤のクリアランスを詰めている。また黒文字盤は、ポリッシュ仕上げではなく、あえてわずかに荒らした仕上げを採用する。
(中)ブラックベイ クロノのケースと弓管。クリアランスはぎりぎりまで詰められている。
(右)ブレスレットは、クラシカルなリベット留め。しかし、バックルには強固なセーフティーキャッチが備わる。ブラックベイが、21世紀の実用時計である証しだ。

 変化が訪れたのは2009年のこと。CEOに就任したフィリップ・パヴェレリは、実用時計という性格はそのままに、まったく新しい個性を与えようと考えたのである。10年、チューダーは復古調のデザインを持つ「ヘリテージコレクション」を追加。中でも、アンティークに触発されたデザインを持つ「ヘリテージクロノ」は大きな反響を呼んだ。12年には、同じく往年のサブマリーナーに範を取った「ヘリテージ ブラックベイ」をリリース。また500m防水を持つダイバーズウォッチ「ペラゴス」も追加した。

 同社の変化は、広告からも見て取れよう。09年以前、同社は1980年代を思わせる広告キャンペーンを行っていた。しかし以降は、「性能のためのデザイン、エレガンスのための技術」を謳い、過去からの決別を示したのである。

 この時点で、チューダーが使っていたのは、グレードの高いETA製エボーシュだった。加えて3針が使用するETA2824-2は、より高い精度を与えるため、エタクロンではなく、精密なトリオビス緩急針を備えていた。しかし、急激に増えるオーダーをETAは賄えなかったし、チューダー自身もエボーシュには必ずしも満足していなかった。

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チューダーマニュファクチュールの矜持

1960年代後半以降、一部の例外を除いて、チューダーはETA製のエボーシュを採用してきた。ロレックス製ほどではないが、頑強で高精度なETA製のエボーシュが、チューダーの名声を支えてきたことは紛れもない事実だ。しかし、2015年、チューダーはそれに代わるまったく新しい自動巻き、MT5621を発表した。これは約70時間というパワーリザーブを持つほか、フリースプラングテンプと、磁気帯びしないシリコン製のヒゲゼンマイを持つ、第一級の基幹ムーブメントだ。自動巻きは標準的なリバーサーだが、理論上は十分な巻き上げ効率を持つ。また、両持ちのテンプ受けが示す通り、ムーブメントの骨格は極めて強固だ。後にチューダーは、MT5621からパワーリザーブ表示を外したMT5612と、カレンダー表示を外したMT5602などをリリースした。直径33.8mm、厚さ6.5mm、28石(Cal.MT5621)。直径31.8mm、26石(MT5612)。直径31.8mm、25石(MT5602)。

Cal.MT5601
Cal.MT5601
「ブラックベイ ブロンズ」が採用するのが、MT5601である。直径は33.8mm。ムーブメント自体は他の5600系に同じだが、地板を拡大した。理由はおそらく、大きな文字盤を支えるためだろう。
Cal.MT5602
Cal.MT5602
MT5600系のベースと言えるのが、MT5602である。現在ブラックベイ、ブラックベイ ダークに搭載。シリコンヘアスプリングとフリースプラングテンプの採用により、耐磁性と耐衝撃性が向上している。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。C.O.S.C.クロノメーター。