
フルリニューアルから約3年を経てようやく時代が追いついたオーヴァーシーズに秘められた濃密なディテール
2016年にフルリニューアルを受けて第3世代へと進化した「オーヴァーシーズ」。スポーティエレガンスのフラッグシップは、新機軸のインターチェンジャブルストラップや、アニメーション効果を生み出すダイアルなどで、瞬く間にヒットモデルとなった。しかし盛り込まれた濃密なディテールは、勢いに任せた一過性のものなどではなく、逆に長い時間をかけて理解を深める質のものだった。発表から約3年を経て、腕上で深みを増してゆくディテールの妙に、コニサーたちはほくそ笑んでいるに違いない。
メゾンが創業222周年を迎えた1977年。当時新進気鋭のヨルグ・イゼックにデザインを託した「222」は、現代で言うスポーティエレガンス的なキャラクター作りにヴァシュロン・コンスタンタンが初めて挑んだ作品だった。スティール製を含めたモノブロックケースにねじ込み式のベゼルを組み合わせた2ピース構造で、約6㎜という薄型のフォルムに120mの防水性を与えてみせた。しかしその本質的な性格は、現代のフィフティーシックスに通じるような、デイリーラグジュアリーの嚆矢と呼ぶべき存在であり、222がスポーツウォッチに相応しいタフネスを備えるのは、バックケースを独立させた3ピース構造にシフトした、96年初出の「オーヴァーシーズ」からとなる。しかしこのオーヴァーシーズでさえ、スペック至上主義とも言うべきゴリゴリのスポーツウォッチとは一線を画していた。同社が求めたのは、トラベルウォッチとして必要十分なタフネスであり、あくまでラグジュアリーウォッチとしての枠に踏みとどまろうとする自制心を感じさせた。こうした性格は、第3世代に進化した現行コレクションにも強く受け継がれており、ラウンドフォルムを強調するような、優美なディテールがより強調されている。今や目に馴染んだ6葉のベゼル下に設けたラウンドプレートを、あえてミドルケースからはみ出させるという手法は、設計段階ではエラーと受け取られたほど〝型破り〞なデザインであり、発表から約3年を経た現在になってようやくフォロワーが現れ始めるほど、時代の先を行く設計だったのだ。練り込まれた造形美に、ようやく我々の感覚が追いついたと言うべきだろうか?
Contact info: ヴァシュロン・コンスタンタン TEL:0120-63-1755
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