CODE 11.59 by AUDEMARS PIGUET 完全解析 (前編)

FEATURE本誌記事
2019.06.12

型破りを貫くオーデマ ピゲの時計作り

 適度な曲率を加えたシンプルなラウンドケースの中に、さまざまなフォルムやディテールを融合させた、まったく新しいオーデマ ピゲ。「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」と名付けられたコレクションは、新しい世代のユーザー層を開拓するというミッションを担う性格上、見慣れない造形に戸惑う熱心なオーデマ ピゲ信者も多いかもしれない。しかし、ディテールの中に隠された“暗コード号”をひとつひとつ解き明かしてゆけば、紛れもなくオーデマ ピゲの血脈に連なる、正統なる後継機だと気付くはずだ。

奥山栄一、三田村優:写真 Photographs by Eiichi Okuyama, Yu Mitamura
鈴木裕之:取材・文 Text by Hiroyuki Suzuki

 2019年のSIHHで、初めてその姿を現したまったく新しいコレクション「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」(以下コード11.59)。12年10月から基礎開発が始まっていたという次世代基幹ムーブメントの搭載も視野に入れつつ、具体的なデザインコンセプトが開始されたのは16年頃だったという。構想だけで何年もの期間を要した開発プロジェクトを強力に推し進めたのは、現在のオーデマ ピゲを率いるCEOのフランソワ-アンリ・ベナミアス。12年5月に同社の暫定CEOに就任したベナミアスは、すぐさま社内サプライチェーンのスタッフやエンジニア、デザイナー、時計師たちから成るトップクラス約40名のチームを会議室に〝監禁〞。途中休憩など一切なしの緊迫した雰囲気の中で、徹底したブレインストーミングを行ったという。そうした状況下から生み出されたアイデアの中には、03年の初出時から度重なる熟成改良が加えられてきたキャリバー3120に代わる新基幹ムーブメントの開発、マスプロダクトムーブメントとしては同社初の試みとなる一体型クロノグラフの開発、そしてロイヤル オークとは異なる個性を持った、まったく新しいスタイリングの創造といった項目が挙げられていた。コード11.59とはまさしく、現在の成功のさらに先を見据えたプロジェクトの集大成なのである。挑戦(Challenge)、継承(Own)、追求心(Dare)、進化(Evolve)をつなげたネーミングは、新しい世代がSNSなどで頻繁に用いる独特な〝符丁〞(=コード)のメタファーであり、一方の11.59とは、あと1分で新しい日を迎える23時59分を表している。そこに課せられたミッションは、新規顧客層への訴求と開拓。しかし発表直後となる2月初旬から開始された、各国直営店へのファーストデリバリー分はほとんど完売。コード11.59を手にした顧客の半数以上が、これまでオーデマ ピゲのプロダクトに触れてこなかった新規ユーザーだと言うから、同社の戦略はひとまず大成功を収めたと言っていいだろう。これは日本市場に限った話ではなく、全世界的に同じ傾向が見られるのだという。

コード11.59のデザインワークを担ったのは、2015年からクリエイティブディレクターとして“復職”したクロード・エマネゲー。開発当時にヒストリアンを務めていたマイケル・フリードマンらと共同でミュージアムピースからDNAを抽出し、デザインに落とし込んでいった。